オシム監督「見る側のレベルをいかに上げるか」

 山本昌邦氏とイビチャ・オシム監督の対談がJFAの公式サイトにアップされています。
 山本氏も元指導者ということで、日本サッカーの方向性や育成部門に関してなど、興味深い内容となっています。


オシム「日本のサッカーで感じるのは、日本人選手が本来持っているクオリティが、十分活用されていないことです。他国のスタイルを真似て、イミテーションを作ろうとするのは時間のムダではないか。たとえ出来上がってもそれはイミテーションに過ぎないうえに、サッカーにも流行りすたりはありますから、時代遅れになっているかもしれない。」

山本「世界の頂点は高く、しかも凄く遠いところにあるから、僕らはずっと追いかけていられる。幸せなことだと思います」
オシム「でも初めにも言ったように、世界チャンピオンの真似は、時間のムダなんです」
山本「日本は今までずっとそれをやってきた。でもそれでは絶対に世界には追いつけない。ワールドカップを単位にすると常に4年遅れになってしまう。4年先をイメージしてチームを作らないと、手遅れということですよね。しかも日本のよさを出しながら」
オシム「すべてを予測はできませんが、予測しようとトライし続けることが大事です」
 日本のサッカーの中でも、特に若い日本人コーチ達はどうも育成レベルで型にはめようとしすぎる方が多いように感じますね。
 例えば、4-4-2のゾーンで綺麗なラインを守りながら戦いたいという発想。
 それが最先端でいいサッカーだと言うのだけれど、選手達が育った頃には変わってしまっているということもあります。
 ちょうど今の20歳前後の選手達は、若い頃のユース代表で4バックのゾーンを熱心にやってきたはずです。
 けれど、時代と共にサッカーは変わるわけで、それだけでは対応しきれない展開も出てくると思います。
 まぁ、あくまでも例えばの話しですけど。


 だからこそ、オシム監督は「ブレのない日本オリジナルのサッカーを作り出せ」と言っているのでしょう。
 4バックのゾーンは最先端かもしれないけれど、もし日本人にその戦術があっていないというのなら意味はないわけですし。
 無理して真似をしてイミテーション(ニセモノ)のサッカーを作り出したとしても、すぐに壊れてしまうだけだと言うことですね。



オシム「大切なのは、トレーニングのやり方云々ではなくて、日本のサッカーがどういう方向に進んでいるのかということです」
 これも同じ話しだと思います。
 オシム監督のトレーニング方法をそのまんま真似したって、意味がないわけですよね。
 イミテーションを作り出してしまうのと同じで、重要なのは方向性です。


 ジェフで言えばアマル監督のトレーニングがオシム監督のするものと若干違ったって、方向性があっていれば構わないはずです。




 問題はその方向性があっているかどうかですけど、方向性を見極めるうえでトレーニングだけを判断基準とするのはいかがなものでしょう。
 なにせ、アマル監督の就任当初からゲーム形式が多いということは、1年も前から選手達の口からも聞けたわけです。
 なぜ、今さらそれだけを持ってきて、方向性どうのと言い出すのか私には解りません。


オシム「メディアを言い負かそうというつもりはありません。メディアに勝てるとは思っていませんから。でも理解はして欲しい」
山本「サッカーという競技そのものをですか?」
オシム「そう。サポーターをはじめ、見る側のレベルをいかに上げるか。それがないと、裾野が広がっていかない。そして観客が理解を深めれば、サッカーそのものも良くなっていく。」
 見る側のレベルを上げること。
 非常に難しいことですけど、アジアカップでのマスコミの報じ方などを見ると、非常にレベルが低いと感じることが多々ありましたね。


 簡単ではないことです。
 レベルを上げるといっても、ボーっとサッカーを見ていればいいだけではないでしょう。サッカーとは、難しいスポーツですからね。
 ボールだけを目で追っていればいい、というものではないということです。




 これは、延いては日本のスポーツ文化を変えることと言っても過言ではないかもしれません。
 けれど、オシム監督はそれをやろうとしているのです。
 周りもそれをきちんと理解して、サポートしていかなければいけないのではないかと思います。