宇都宮徹壱氏『そして、それ以上に気になるのが「レッドブル」』


そして、それ以上に気になるのが「レッドブル」。これはタイで開発された栄養ドリンクの名称だが、1984年にオーストリアの企業がタイ国外での販売権を獲得し、世界中に販路を広げることに成功。
その後、2005年からF1への投資を開始し、直後にサッカークラブの買収にも着手するようになる。現在はザルツブルクの他に、MLSメトロスターズも傘下に収め、新たに「レッドブルメトロスターズ」として活動している。
 気になったのは、「2005年からF1への投資を開始」という部分。
 これはF1ファンでもある私からすると、大きな違和感を感じざるを得ません。


 レッドブルは1995年からザウバーのスポンサードを大々的に行っており、長年レッドブルザウバーとしてF1を戦ってきました(スポンサーフィーは年間50億円以上とも言われていた)。
 その間に何度もザウバー買収の話しもあり、一時期はアロウズとのスポンサーを掛け持つほど、積極的にF1へ投資していました。
 また、その間にレッドブル・ジュニアチームも保持し、F3などで多くの若手ドライバー育成にも力を入れています。
 要するに、2005年にレッドブル・レーシングとしてF1に参戦するよりも、10年も前からF1に投資し続け、F1ファンにはある程度知られた存在だったわけです。



 しかし、一方で“本格的に”F1に投資し始めたのは、確かに2005年だったという見方も、出来るかもしれません。
 というのも、レッドブルは2005年にジャガー・レーシングを買収し(ジャガーは自らF1撤退を決定していた)「レッドブル・レーシング」としてF1に参戦すると共に、サッカー界では「ザルツブルク」も買収。
 翌、2006年にはミナルディF1チームを買収して、セカンドチーム「トロ・ロッソ」を設立。WRCではスコダと連携して「レッドブル・スコダ」として参戦。サッカー界でもMLSメトロスターズを買収して「ニューヨーク・レッドブルズ」と改名させる…。


 と、ここ2年で、一気にスポーツ界で名前を売ろうとしているわけです。
 これ以外でも、海外のスポーツニュースでは頻繁にレッドブルのロゴを見るようになりました。


 投資をする上で最も重要なのは、金額や相手などより何よりもタイミングだとも言われています。
 長い年月をかけて少しずつ投資するよりも、短期間で一気に投資する方が、金額は同じでも顧客に大きなインパクトを与えられるでしょう。
 それをレッドブルは、この2年間で見事にやってのけたと言えるのではないでしょうか。







 ですから、ブルズカップへの“投資”にしても、問題は「どことやるか」とか「やるかやらないのか」という問題よりも、「いつやるのか」と「いつ開催を発表するか」が、レッドブルサイドとしては重要だったのだと思います。
 宮本、三都主を獲得した直後の開催発表は、マーケティングの観点からすれば最高のタイミングだったでしょう。
(それに比べると、グルノーブルの手際の悪いこと…。) 



とはいえ、今回の宮本と三都主の移籍先について、現時点でとやかく言うべきではない、と私は考える。今はただ、念願かなって29歳にして初の欧州移籍を果たした彼らに、心からのエールを送るばかりである。
 これについては同意します。
 F1でも、レッドブルは派手なパフォーマンスのためだけに、参戦しているわけではありません。
 結果的にジャガーミナルディと2チームを買収したのですが、チームのスタッフはほぼ残留
 ドライバーにはデビッド・クルサードという地味なベテランを起用、空力の鬼才と言われているエイドリアン・ニューエイの獲得もあり、ここ2年で素晴らしいチームマネジメントをこなしてきました。


 ただし、その一方でF1でここまで戦ってこれたのも、レッドブルの(若手チームとしては)飛び抜けた政治力がものを言っているケースが多く、勢いがあるからこそ不安な部分も多いと思ってしまうのです。
 残念なことですが、「F1では政治力がないと勝てない」と言うのはもはや常識です。だから、F1では政治力を行使することはある程度仕方がないことなのですが、では、サッカーではどうなのか。
 サッカー界では、その飛び抜けた政治力がどう影響するのか。
 2人の挑戦に期待すると共に、若干の不安もあるのではないかと、思ってしまうのはその辺りに要因があるわけです。







 そういえばレッドブル、いつの間にか日本語のサイトが出来てますね…(笑)