経営分析法で見る、各クラブの経営評価 その2
その1はこちらです。
2.他人資本にどれほど頼っているか
会社分析の計算式というのは山ほどあるのでキリがないのですが、もう1つだけやっておきましょう。
資料を見て気になったのが、『負債』の部分です。
その名の通り、『負債』とは金融機関などから借りてきた資本のことで、「他人資本」と呼ばれています。
当然、他人資本に頼った経営は安定性を欠き、会社の不安要素の1つとなります。
そこで『総資産』に対して、(『総資産』−『他人資本』=)『自己資本』(純資産)でどれだけまかなえているかを、計算してみます。
総資本対自己資本比率 = 純資産(『自己資本』) ÷ 『総資産』 × 100
予想通り、かなり酷い数値になりました。
総資本対自己資本比率
鹿島 84.8
浦和 13.5
大宮 20.1
千葉 40.2
柏 04.7
FC東京 80.7
東京V 06.2
川崎 62.2
横浜FM 01.1
新潟 35.1
清水 39.7
磐田 41.4
名古屋 71.1
G大阪 01.0
C大阪 67.9
神戸 -65.3
広島 53.7
大分 -64.0
札幌 -0.37
仙台 43.1
山形 79.1
水戸 -36.1
草津 -80.2
横浜FC 51.0
湘南 39.3
甲府 -12.9
京都 21.3
徳島 78.1
福岡 56.1
鳥栖 -105.3
一桁台のクラブは、深刻な状況といっていいでしょう。
マイナスのクラブは言うまでもなく。
しかし、二桁だから安全だと言うわけではありません。
「大きな黒字が出た」ということで、各紙から高く評価されているレッズですが、それほど経営状況がいいわけではありません。
というのも、総資本対自己資本比率は30%以上が健全といわれ、13.5%はあまりよろしくない数値です。
この数値だけ見れば、決してレッズの経営面も磐石とはいえません。
独立採算を取っているという点は評価されるべきだと思いますが、だからといって甘えが許されるわけではないでしょう。
経営が安定していることを条件に独立採算を採るべきであり、独立したのに負債が多いということになれば後ろ盾が少ない分、逆に不安は増すことになります。
というのも、レッズはやはり経営面ではビッククラブ。
そのビッククラブが「他人資本」に依存しているということは、小さなクラブに比べると、負債の額はその分大きくなるわけで…。
もう少し、健全な経営をしていると思ったので、この面では少し心配です。
まぁ、利益が出てるので少しずつ返せばいいと思うけど、今の状況のまま他方面へ投資するとリスクはかなり大きくなってしまいます。
その点でもっと心配なのが、クラブ規模の大きな横浜FMや神戸ですね。
もちろん小さなクラブの中でも、危ないクラブは多いですけど…。
3.スポーツチームの経営は難しい
最後に数字だけを基にすべてのクラブの状況を判断しようというのは、避けるべきではないでしょうか。
最初にいったようにデータも曖昧で、各クラブの裏事情もあるでしょうから、1度きりの数値だけではすべては分からないはずです。
また、例えば「これだけ利益を出してんだから、選手をもっと獲得しろ」と思うかもしれないけど、そうも簡単にはいかないでしょう。
投資というのは本来、利益が明確に計算できるからこそ行えるものです。
しかし、スポーツチームというのは特殊なもので、選手を獲得する前に、獲得することで産まれる利益を計算するというのは非常に難しいはずです。
チームが強くなれば客が増える、またはスター選手を獲得すれば露出度が増えるという意見もあるかもしれませんが、それが明確な投資の理由になるかといわれれば、そう単純なものでもないでしょう。
じゃあ、どうやれば利益が増えるのかと考えると、やはりこつこつとスポンサーを集めたり、観客動員を少しずつ増やしていくしかないんじゃないでしょうか。
そして、それを元に選手の補強などを行っていく。
…とはいえ、高額なスター選手を集めているチームを、闇雲に批判するつもりもありません。
なぜなら、スポーツチームというのは夢を売る会社だから。
そのためには、高いお金で選手を集めるチームがあっても、私はいいと思います。
後はクラブ規模との兼ね合いですね。
そして、そのクラブ規模が決まれば、自ずとチーム成績の目標も変わってくると思います。
このあたりは、イビチャ・オシム監督もよく言っていましたけどね。
何にせよ、スポーツチームの経営というものは、選手の投資に対して「こうすれば必ず利益がでる」とは言えない分、難しいものだと思っています。
一般企業の経営も当然難しいでしょうけど、スポーツチームの経営ってのは、やっぱり特殊なものではないでしょうか。
その中で、特に地道に頑張っているチームや、親会社離れをしようとしているチーム、ビッククラブにまで育ててきたチームなどには、これを期にもう一度拍手を。
一方で、まだまだ親会社に依存している会社などには、「もっと頑張れ」と発破を掛けてあげたいですね(笑)