「試合後、阿部はロッカールームの外で1人涙をこぼした」

 一部のマスコミやジャーナリストは、「日本の選手を育てるためにも、Jリーグのサポーターはもっと選手にプレッシャーをかけるべきだ」とW杯後に騒いでいましたね。
 確かにもっともらしい言い分のようにも聞こえます。普段から厳しい環境にいれば、選手はもっと育つはずだと言いたいんでしょう。


 でも、本当に選手達が成長するかどうかはわかりません。
 「プレッシャーをかければ、選手が育つ」という根拠が、果たしてどこにあるんでしょう。
 「ホームではなるべくプレッシャーをかけず、伸び伸びやってもらう。そうすれば勝てる(確率が高まる)。試合に勝って“勝ちを知る”ことで選手は伸びるんだ」という考えだって、別におかしくはないでしょう?
 これによって『選手が育つ』かどうかの根拠はありません。でも、根拠がないのはどっちも一緒。
 けれど、どっちがチームの勝利に近いんでしょうね。





試合後、阿部はロッカールームの外で1人涙をこぼした。「何でもないですよ。内容より結果?それに尽きます」。そっけない返答も、表情には久々に笑顔が戻った。23日の磐田戦は10人を相手に1-3で敗れて連敗。ピッチ上で号泣した羽生を阿部と坂本はその夜、焼き肉に誘い、チームの今後を話し合った。
「(阿部には)1人で抱え込んでいる部分も感じた」と坂本は言う。責任感の強い阿部の安どの涙だった。
 これほどまでの重圧を、阿部がなぜ受けなくてはいけなかったのでしょう。
 別に阿部だけではない、羽生や巻だって精神的に厳しい状況に追い込まれてしまいました。



 自チームへのブーイングというのは、タイミングが非常に難しい。
 少なくとも、簡単にやっていいことではないと思います。
 マスコミの言う「日本代表を強くするため、選手を育てるためのブーイングが必要」ならば、ブーイングは相手チームに向けてすればいい。
 或いは、1人でも多くの観客を動員することや、ユニフォーム着用率を上げることなどで、アウェイのチームに対しての威圧感を与えることの方が、よっぽどマスコミの言っている「厳しい環境作り」に繋がるんじゃないでしょうか。


 自チームへブーイングをすれば、今回のように選手を追い込んでしまうことにも繋がりかねないし(サポーターだけが選手を追い込んだだけではないとは思うけど、それが一因ではあると思う)、それによって対戦チームには逆にゆとりが出来るんじゃないんですかね。
 そんなことでは、「本当の意味でのホーム作り」には繋がらないと私は思うんですけど。