試合は本番だけ


―2度の練習試合を組むつもりですか?
ジーコはちょっとムッとした様子で手を広げ、首をひねった。
「試合だって? 試合なんてやらないよ、やるのはトレーニングだけ。試合はドイツでやるものだろう、6月12日だ。間違えないように」

 W杯を前にナーバスになって言ってしまったのかのかもしれませんが、私はこれがジーコの本音なんじゃないかと思います。
 高校生相手にやる練習試合も、国際親善試合も、ジーコからすればただのトーレニング。真剣に試合をする舞台ではないということなんでしょう。


 そう考えれば、今までのことも納得が行きます。親善試合で変な采配をしても、親善試合前に主力組がダメダメで控え組の調子がよかったり、練習がだらだらしていたりしても、ジーコ監督的には「これでOK」だったんじゃないかと。
 高い金を払って“サッカーを見に行ったサポーター達”にとってはたまったものではないですが、“代表の顔を見に行ったファン”にとっては別に関係ないことですし、そういった意味でジーコは今の代表にマッチしていたのかもしれません。

 
 しかし欧米諸国やブラジルならジーコのこの考えでいいのしょうけど、日本の強化についてを考えるとそうはいきません。
 日本代表において、“本番”と呼べる試合はアジア杯、コンフェデ、W杯予選、W杯くらい。そのうち世界を体感できるのはコンフェデとW杯しかありませんが、コンフェデに本気で戦ってくれる世界の強豪が果たしてどれだけいたでしょうか。


 例えば日本時間の5月31日に行われるドイツ戦は、日本にとって大きな試合です。間違いなくドイツの大ホームとなるわけですから、格下の日本に負けていいわけがありません。世界の強豪と本気で戦えるわけです。
 しかしジーコはといえば、これが本番ではないと言っています。確かに選手時代に素晴らしい実績のあるジーコからすれば、ドイツなど強いチームではあるけどそれ以上ではないのかもしれません。しかし日本にとっては違う。本気で世界の国と戦えるのは、ここ4年間でコンフェデとこれから行われるW杯を除けば、最初で最後となるわけです。 



 例え親善試合がトレーニングだといわれても、トレーニングを本気でやれなければ、本番でも全てを出し切れるとは思えません。W杯も長い期間で行われますが、試合自体は一発勝負。グループリーグで敗れれば3試合しか出来ないわけです。
 そこに全ての力を出し切るためには、普段の試合から戦っていなければ出来ないと思うし、それになにより親善試合が強化に繋がってこない…。本気でやらなければ、問題点など見つかるわけがないですからね。
 通りで4年間、全く成長しなかったわけです。あとは残りの合宿で、選手達の修正能力に期待するしかないですね。