サン・マリノGP 決勝リザルト

 アイルトン・セナの甥であるブルーノ・セナが、セナも通った道であるイギリスF3で活躍し始めた今年、あのイモラでミハエル・シューマッハーがセナの持つポールポジション記録を破ることになりました。もちろん偶然だし、戦術的な面も大きいポール獲得ではあったけれど、なんとなく運命を感じます。シューマッハーの気持ちのこもった予選は、見ていて面白かったですね。
 それと目立ちはしませんでしたが、佐藤琢磨の予選タイムも素晴らしかったですね。金曜午前のフリー走行では、井出も佐藤のタイムに肉薄したのですが、佐藤は元々徐々にセットアップを煮詰めてタイムを伸ばしていくドライバー。結局予選では差がついてしまいました。


 決勝でも、ミハエルは非常に集中していました。特にファーストスティントでは、まるで予選のような走り。勝ち続けていた頃、良く言われていた機械のようなドライビングを見せてくれました。このレースでミハエルのライバルとなるアロンソはマッサに封じこまれ、セカンドスティント以降の勝負をじっくりと待ちます。
 そして勝負が始まったセカンドスティント。アロンソは予想通り追い上げ、燃料の重いミハエルはタイムが上がりません。すぐさまアロンソは追いつきますが、そこからの粘りがすごかった。コースレイアウト上抜きにくいサーキットなため、タイム差がついても簡単には抜きにくい所ではありますが、非常にレベルの高い2人の戦いでした。まさに手に汗握る、心臓がどきどきする勝負でした。このレースを見た後では、例え違うスポーツでも簡単に「絶対に負けられない戦い」だとかそういったことはそういえないでしょう。このレースの意味をわかっていればですが…。
 しかし、その争いもセカンドスティントまでだと思っていました。共に2ストップ戦略を採った2人でしたが、燃料はアロンソの方が多く積んでおり、マシンのポテンシャルもルノーが上でしたから、ピットストップをアロンソが引っ張ればアロンソがミハエルの前に立つだろうと思われていたのです。
 けれどルノー陣営は予想外に、ミハエルより先にアロンソにピットに入れてしまいました。これを見てミハエルはその次の周にピットストップ。ミハエルのピットストップの方が若干アロンソよりもロスタイムが短く、ミハエルがアロンソの前に行くことになってしまいます。今までレース戦略を含めた総合力で買ってきたルノーにしては珍しいミスですが、逆に言えばミハエルの走りがルノー陣営を焦らせたのかもしれません。
 残りレースは残り20周くらい。テレビの前で見ていた私ですら、気が遠くなるほど長い時間でした。その間も二人のせめぎ合いは続きます。
 その戦いに決着がついたのが残り4周目。アロンソの小さなミスでしたが、これが大きなさとなりミハエルが久々の勝利を手にしました。
 しかしミスをしたからといって、このレースでのアロンソが駄目だったというわけではないでしょう。2人がレベルの高いドライビングを見せてくれたからこそ、地味だったかもしれませんが素晴らしいレースになったんだと思います。



 そんな素晴らしい戦いがあったレースではあまり触れたくはないのですが、2人が良かったからこそ他のチームについては駄目な場面が目立ちました。ホンダについてはもう何も言えませんね。昨年もピットのミス、戦略のミスで両ドライバーが苦しんでいたわけですが、まったく成長の跡が見えません。これでドライバーには文句を言うんだから(今年はまだ言っていないか…というか佐藤を捨ててまで2人を獲ったんだから言えないんでしょうか)、たまったもんじゃないですね。
 マクラーレンにももう少し頑張ってほしかった。エンジンパワーが必要なサーキットなだけに戦前から苦労するだろうとは思っていましたが…。井出もあそこでの接触はいただけませんね。
 でもとにかくこのレースでは、2人と2チームの頑張りに頭を下げたいと思います。


 ミハエルがトロフィーを掲げる際、アロンソが軽く拍手を送っていたのが印象的でしたね。