ここまでの佐藤琢磨をレースを振り返る

 以前からやろうと思っていたネタですが、結構時間がかかりそうだったため連休に調べてみました。間違いや自分の感想も含まれているため、まとめ方など見る人によって違うこともあるでしょうけどご了承ください。あくまでメモみたいなものです。
 きっかけはニック・フライの琢磨に対する批判。琢磨はそこまでひどかったのか?チームは琢磨を批判するほどのマシンを用意し、ミスはなかったのか。
 もちろん私は第3者ですから、レースごとに琢磨に厳しいコメントをしたこともあります。しかし冷静に見れば、今期の琢磨のチャンスはごく限られたものだったと考えられます。




オーストラリア:予選一回目。琢磨より出走順が1つ前だったミハエルがアタックする前に雨。ミハエル18位。琢磨は雨の影響で受けクラッシュ。予選2回目は出走しなかった。
        エンジン交換し最後尾スタートだった琢磨は粘って14位。バトンは8番手から出走し11位。チームは昨年の好調でうつつを抜かし、今年の開発が遅れていたことを露呈。


マレーシア:琢磨は突然の発熱で病欠。バトンは予選合計タイムで9位、デビットソンは15位。決勝は両ドライバーともに2週目でエンジンブロー


バーレーン:予選合計で琢磨が13位、バトンが11位。出走順が早かったことや燃料を重く積んでいたことを考えればすばらしい出来。
      決勝ではバトンを2週目で抜き一時3位まで浮上。しかしブレーキトラブルでリタイア。バトンもクラッチトラブルでリタイヤ。バトンはこの数レースでの出来にチームへの苛立ちを見せた。


サン・マリノ:琢磨が予選6位、バトンが3位だった。決勝でもバトンが3位、琢磨が5位入賞を果たすも、例の燃料タンク事件が起こりレースから除外となる。
       BARが悪いとも言わないが、少なくともドライバーにはどうしようも出来ないところでレース結果がきまってしまった。


スペイン:ペナルティで出走できず


モナコ:ペナルティで出走できず


ヨーロッパ:このGPから予選は一回勝負に。琢磨は予選出走順1番手。2レース1エンジン制のため回転数を落として走ったBARは苦戦し、琢磨が予選16位、バトンは13位だった。
      決勝では琢磨がスタート直後の多重クラッシュに巻き込まれ13位。バトンは11位だった。この多重クラッシュは避けられないものだったと見られる。


カナダ:BARの得意なコース。バトン、琢磨ともに軽めの燃料で予選に臨み、バトンはポール、琢磨は6番手だった。
    決勝では琢磨はブレーキトラブルでリタイヤ。バトンは自身も認めるミスでスピンし、リタイヤとなった。


アメリカ:予選はバトン3位、琢磨8位。2人のタイムの差0.220だった。
     琢磨は8番手ではあったが燃料は重めと見られ、決勝での巻き返しが期待された。しかしミシュランユーザーは決勝レースでは走行せず。


フランス:上位チームがハードタイヤ+2ストップ作戦を選んだフランスGP。しかし琢磨はソフトで3ストップを選び予選では5位。他と同様の作戦をとったバトンは予選8位だった。
     3ストップを選んだため決勝ではレース中盤から下位に沈んでしまう。後方からの追い上げを狙う琢磨はラルフをパスするなど好調だったが、トゥルーリを抜く際にスピン。結局11位だったが中本氏曰く「スピンがなくても入賞は厳しかっただろう」とのこと。バトンは4位。作戦選択をミスした琢磨は参戦者の中で唯一ノーポイントとなった(この頃から焦りが見えてきたと)。


イギリス:琢磨の得意なコースであるシルバーストン。飛躍が期待されたが予選はバトン3位、金曜日マシントラブルで満足に走れなかった琢磨8位だった。
     決勝ではスタート前にキルスイッチを誤って押してしまうミスを犯し、1週遅れのスタート。バトンは5位フィニッシュだったが琢磨は2週遅れの16位だった。ちなみにキルスイッチに関してはレース後、レギュレーションではステアリングには必要のない物だったことが判明。とはいえ琢磨の責任はまのがれないが、チームにも若干の責任があるように思う(9:1か8:くらい?)。


ドイツ:琢磨にも、そしてファンにも明確に焦りが見え出してきたドイツ。出走順の早い琢磨は予選8位。バトンは2位だった。
    レースではまたも一週目に接触。結局12位フィニッシュとなった。バトンは3位。この頃にバリチェロBAR加入の噂が聞こえてきた。またいつもは琢磨をフォローしてくれるホンダ首脳からも、このレースでの接触には関しては厳しいコメントがなされている。


ハンガリー:金曜日はマシントラブルで走りこめなかった琢磨は予選10位、バトンは8位だった。
      決勝ではレース序盤に順位を上げることができ、8位フィニッシュ。今年初のポイント獲得となった。バトンは5位。


トルコ:初開催のトルコ。琢磨は非常に難しいコースに苦戦。予選ではオーバーランしてしまう。しかしバトンも同じようにミスしたため、琢磨のミスも仕方ないかと思われたが、琢磨はアタックラップ後にウェバーの予選を邪魔してしまい、ノータイムとなる。高低差が激しいため無線が聞こえなかったという原因もあるが、プロとしてやっていいミスではない。
    決勝では1ストップという難しい作戦を選んだにもかかわらず、9位でフィニッシュ。マシンが良かっただけに予選でのミスが悔やまれる。バトンは5位。なお、ハンガリーGPとトルコGPの間にBARがバリチェロ獲得を発表。


イタリア:高速サーキットのモンツァ。BARの得意なサーキットで予選でもバトン4位、琢磨5位となった。
     しかし決勝ではチームが問答無用の給油ミスを犯す。琢磨は2度もピットに入り、2度とも燃料をいれられてしまった。当然重いマシンではタイムも落ち、決勝は16位。バトンも給油ミスの煽りをうけ、8位止まりだった。


ベルギー:ストーブリーグも架橋に迫ってきたベルギー。来期残留のため結果の欲しい琢磨は予選11位、バトンは9位だった。
     決勝は琢磨の得意なウェットコンディションとなり序盤はバトンをパスするなど好調。しかし他車のクラッシュでセーフティカーが入った際にドライタイヤを選択し、またも作戦ミス。バトン、琢磨ともに再度ピットイン。その後も琢磨のマシンは好調だったが、1コーナーでミハエルのマシンに後ろから追突。これがなければ上位への進出の可能性もあったのだが。琢磨の後ろを走っていたバトンは3位で表彰台に。<まとめ>

特に何事もなく完走できたレース:3回
オーストラリア(予選ノータイム、決勝14位・バトンは予選8位、決勝11位→マシンの能力不足)
ヨーロッパ(予選16位、決勝12位・バトンは予選13位、決勝10位→マシンの能力不足)
ハンガリー(予選10位、決勝8位・バトンは予選8位、決勝5位)


琢磨のミスにより想定より結果がでなかったレース:4回
イギリス(キルスイッチを押し1週遅れのスタートに)
ドイツ(フィジケラと接触し緊急ピットイン)
トルコ(ウェバーの予選を邪魔したため予選ノータイム)←これは微妙なミス
ベルギー(ミハエルに追突しリタイヤ)


マシントラブルにより結果のでなかったレース:2回
バーレーン(ブレーキトラブルでリタイヤ)
カナダ(ブレーキトラブルでリタイヤ)

チームが足をひっぱり想定した以下の結果となったレース:2回
フランス(ピット戦略ミス)
イタリア(給油ミス)


サーキット以外の問題で走ることすら出来なかったレース:5回
マレーシア(病欠)
サン・マリノ(燃料タンク事件・実際には走ったがリザルト除外)
スペイン(燃料タンク事件・ペナルティ)
モナコ(燃料タンク事件・ペナルティ)
アメリカ(ミシュラン騒動・予選のみ出走)


 まとめ方は適当です。オーストラリアでも予選中に雨が降るという不運がありましたし、ベルギーでのミスもタイヤ選択の過ちがなければ琢磨はミスしなかった!という見方もあるでしょうけど、あくまで自分がわかりやすいようにまとめてみたものです。


 琢磨ばかりを攻め立てるチーム側ですが、純粋にチャンスがあったのは今のところ16レース中たったの7レースです。そのうち明らかな琢磨のミスは3回。トルコでのミスは確かにやっていいミスではありませんが、レースはパーフェクトだったし、チームの注意があったら防げた可能性のあるミスでした。
 また、今年のレギュレーションでは1つ前のレースが次の予選の出走順になりますので、走れなかったり、マシントラブルでリタイヤしたりすると次のレースが厳しくなってしまうということも今年の琢磨を評価する上で重要なポイントの一つとなるでしょう。
 以前も言いましたが、今期の序盤から中盤にかけて様々なミスやマシントラブル、政治絡みのペナルティなどを受けた琢磨はかなりの焦りを感じていたと思われます。それに追い討ちをかけるチーム首脳の発言は、リーダとして、いや同じチームメイトとしていかがなものでしょう。「F1ドライバーたるものプレッシャーに強くなければいけない」というのはわかりますが、サポート環境がしっかりしていなければ結果など出るわけがありません。
 今年の琢磨はリザルトだけを見ると散々なものですが、チーム体制の不備、不運、プレッシャーなど多くの逆風があったことは確かですし、そんな中で切れのある走りも何度か(トルコでのレースやベルギーでのレース序盤など)見せており、決して琢磨本人のポテンシャルは他のドライバーにも劣っていないと私は思います。マシントラブルとチームのミスさえなければ、もっと上にいけたことでしょう。


 しかし現状の2人を比べると、確かに安定感やキレではバトンに劣っているところがあると思います。ですからそれらだけで判断した場合、無条件で琢磨とバトンどちらを選ぶかといえば、バトンを選ぶのはまちがいはないでしょう。
 しかしバトンを残留するためには移籍金を払わなけければいけないわけです。その金額は15億円とも40億円とも言われており、大口スポンサー並みの値段です(実際ウィリアムズはバトンを獲得できなければ、内定していたスポンサーを数社失ってしまうという噂も)。
 それだけの価値がバトンにあるのか。バトン−15〜40億円(それに膨大な年俸もかかる)>佐藤琢磨とは正直思えないのですが。しかも琢磨がレギュラードライバーでなくなれば、日本のスポンサーが外れる可能性もあるのではないでしょうか。
 短期的に見ればいいドライバーの方の方が数十億円よりもより魅力的かもしれませんが、長期的に見ると予算が減るため開発も遅れ、支払う側(ホンダ?BAT?) の体力も奪われ、チームへ大きなダメージになってくると思います。そこまでBARは考慮して選んでいるのか。ホンダはオールホンダを諦めたのか。これが原因でホンダ撤退ということにならないのか。現地ホンダ首脳が昨年言った、「表彰台で君が代を聞きたい」というコメントはどうしたんでしょう。
 とにかく明確な長期ビジョンがなければ、たとえいいドライバーが乗ってもダメなものはダメなんですよね。スポーツとはそういうものです。そしていまのBARには、明確なビジョンがあまり見えてきません。お金もマシンも結局ホンダ頼みのチームになっている感じがします。もちろんそれにはホンダ側の責任も十分あるわけですが。