佐藤琢磨のシートは残りレース次第


「状況は明白だ。ジェンソンが残留すれば、琢磨のシートはない。数学者じゃなくても理解できるだろう。なにしろチームには二つしかシートがないので、二人の最高のドライバーを雇わなければならない。また、レースシートがなくても、サードドライバーとして琢磨がチームに残留するかどうかは彼が決めることだから、そうなれば話し合う必要がある」
「そして、もし、ジェンソンが移籍したとしても、琢磨のシートの保証はない。率直に言って、これまで実に多くのドライバーと交渉をしてきているので、他の選択肢に困っているわけではないからだ」

 トルコGPに集中したかったので取り上げませんでしたが、 上のような記事が出ています。まぁ確かに特にここ数レースは琢磨のミスは目立っていますし、それは残念ですが認めざるを得ません。ここ数レースはね。
 しかし今期の前半戦で得点が取れず、調子に乗り切れなかったのは明らかにチーム側のテクニカルグループの責任。またスペインGPでの一件はFIAも問題がありますがチームの政治力にも大きな疑問が残ったし、琢磨が一番の被害者だったということも忘れてはいけません。
 スペインGP後やっと戦えるマシンが用意できるようになってきたわけですが、それでもポイント争いに参加できてきたのは8戦目のカナダGPあたりから。しかも悪いことに調子が上向きだった第9戦アメリカGPではミシュランのタイヤ問題が起こり、レースにすら参加できませんでした。
 先日も言いましたが今年のレギュレーションでは1つ前のリザルトが予選に影響してしまうため、一回調子を落とすとなかなか難しくなるわけです。しかもアメリカGP後もピット戦術の失敗、キルスイッチ事件、チームのタイヤ選択のミス…そして琢磨はいつのまにかプレッシャーを抱え、明らかに焦りが見えるようになってきてしまいました(キルスイッチを押してしまったイギリスGPを含めてもポイントのチャンスは5戦くらいしかない)。

 もちろん状況だけ見ると琢磨が来期のシート争いに関して厳しいことには変わりないですし、仕方のないことかもしれません。しかし最近のニック・フライのコメントは目に余るものがあります。
 琢磨を批判し、評価を落とせば来期のシート交換もしやすいでしょうし、今年結果が出なかったことへのスケープゴーストにもしやすい。
 しかしドライバーも一チームメイトだということを忘れてはいけません。確かにドライバーのミスは目で見てはっきりとわかる分評価はしやすいですが、チーム側も競争できるマシンを用意できたのはここ数レースだけであり、マシンが良くても戦術面で失敗した場面もあり、レースすら出来ないことが3度もあったことも忘れてはいけません。その上このようなプレッシャーをかけて、残り5レースだけで結果をだせというのは無謀な指示としかいいようがありません。
 ニック・フライ自身も今年の前半に「チームはデビット・リチャーズを解雇し、求心力のないフライに変えたからBARは不調に陥ったのだ。チームはニックを解雇すべきだろう」とマスコミに散々叩かれたはずなのにチームは未だかばい続け、この立場にいるわけです。それなのにこうも簡単にドライバーは批判し、プレッシャーをかける。フライではなくBAR側の判断なのかもしれませんが、このようなことを続けるのならこのチームに未来はないでしょう。
 ホンダはニック・フライを解雇するためにジル・ド・フェランを呼んだともいわれていますが、ニック・フライがこのようなコメントを発しているのに問題にされていないということは、未だにフライをキープするということなのでしょうか。しかし中本さんやハシケンさんは、ここ数レースもミスがあったにせよ琢磨を評価しているのですが。
 しつこいようですがホンダが琢磨を来期も走らせたいのならチームを買収する方法が最も手っ取り早いことですし、今回の混乱を考えてもマネジメントにも積極的に関わらなければいけない時期に来ていると思うのですが。BARは今だ若いチームで、どこかもろさを感じてしまいます。