金沢との上位争いは痛み分け
前半は金沢のペースで試合を進んでいた試合だったと思うのですが、後半はジェフの方が攻めてチャンスも多かったと思います。
そう考えると、痛み分けといったところでしょうか。
ジェフとしては勝てる試合だったのではないかとも思いますが、上位チームとの試合で最低限の勝点1はものにしたとも考えられるのではないかと思います。
■金沢の堅守が目立った前半
怪我のため中村が欠場となったジェフは、代わりに左SBで田代を起用。
また、前節スタメン出場した森本も、ベンチ外になりました。
ペチュニクを1トップに戻して右SHには水野が入り、出場停止明けの井出はベンチスタートとなりました。
中村がいない分、右SHに水野を起用してチャンスメイクを期待したということなのでしょう。
一方の金沢は左SBに阿渡が入り、峰岸がベンチに回りました。
開幕から左SBのレギュラーだったチャ・ヨンファンは負傷中なのか、ここ3試合ベンチにも入っていません。
前線では佐藤和弘がベンチスタートとなり、玉城がスタメン出場。
清原がFWに移り玉城が右SHでプレーする布陣だったでしょうか。
筑波大から今季加入した玉城は、これが初スタメン。
三菱養和では、高円宮杯で最高位となる3位の成績を残したメンバーの1人です。
この時の三菱養和には田中輝希、田鍋陵太といった錚々たる面々がいたわけですが、そのチームを指揮したのが現ジェフTDの斉藤和夫氏ということになります。
試合は予想通りジェフがボールを持って、金沢が守る展開。
金沢はジェフにボールを持たれても、落ち着いて対応していました。
そこから攻撃に移ると、鋭いパスワークを仕掛けてくる。
初めにチャンスを作ったのは6分の金沢。
右サイドでの清原からの突破からFKを得ると、山藤がFKを蹴り清原がニアで合わせるもゴールならず。
このシーン、単純なニア狙いではなく、前方にいたストーン役のペチュニクの前にあえて飛び込んでシュートを狙うという意表を突いたセットプレーだったと思います。
決して身長の高い選手が多いわけではないにも関わらずセットプレーからの得点がリーグトップとなっている金沢ですが、豊富なセットプレーのパターンからチャンスを作り出している印象があります。
26分、ジェフがハーフカウンター気味の攻撃。
ペチュニクがうまくつぶれて町田が拾い、水野へ縦パス。
水野が中央を走りこんで行って左足でシュートを放ちますが、ゴールにはいたらず。
28分、金沢のチャンス。
辻尾からの横パスを秋葉がワンタッチでつないで、前線の清原に縦パス。
清原が反転して右サイドから裏を抜け出した辻尾につなぎ、辻尾が鋭いセンタリングを出しますが中央であわず。
失点にはならなかったですが、清原とマッチアップした栗山としては簡単に反転させたくないシーンだったと思います。
続いて31分にも、金沢のビックチャンス。
左サイドで勇人が一度はボールをカットしたものの相手に粘ったものの、裏の清原にボールが出るとジェフの守備陣は完全に戻りが遅れてしまいます。
ファーで秋葉が完全にフリーになり清原からのボールをヘディングで合わせますが、余裕がありすぎたのかシュートをゴールに飛ばし切れず。
ジェフとしては命拾いをしたシーンでした。
その後もジェフはボールを持つものの、決定機はなかなか作れず。
金沢は少ない攻撃数の中でも、一発で決定機を狙う形で試合が進行していきます。
■後半はジェフが攻めるもゴールならず
47分、ジェフの攻撃。
左サイドからの展開で、勇人がボールを持つと縦へパス。
水野が裏に抜け出しかけますが、ゴールにはならず。
しかし、水野がうまく中央で一度下がった位置から、前に出て行ったプレーを見せボールを引き出していました。
後半序盤から、ジェフペースだったと思います。
金沢は後半から疲労もあったのか、守備での細かなポジション修正ができておらず、前半はなかったブロック内へのパスコースができていたと思います。
ジェフは後半立ち上りに町田、水野と中にいた選手にボールを入れられることができ、そこから良い流れができていったように思います。
63分、ジェフは水野に代えて井出を投入。
その直後、金沢の攻撃。
山藤が左サイドからセンタリグを上げると、玉城がフリーでヘディングシュートを放ちますが、距離があったためGK岡本がキャッチ。
66分、金沢が中盤でバックパスをミスすると町田がカット。
素早くペチュニクに縦パスをつなぐと、GK原田と接触。
PKかとも思われたシーンでしたが、逆にペチュニクにイエローカードが提示されました。
続く、69分にもジェフの攻撃。
右サイドからのCKをパウリーニョが蹴って、金井がヘディングで合わせるもバー直撃。
これも決定的なシーンでした。
73分、金沢は玉城に代えて辻を投入。
76分、ジェフは町田にかわって能登を起用。
今季加入した能登は、これがジェフで初出場となります。
このあたりから、ジェフにも疲れが見え始めてきた印象です。
町田が下りたことで、ジェフの攻撃の勢いが落ちてしまったようにも感じました。
金沢は、80分に大槻に代えて佐藤。
84分には水永に代えて、ジャーン・モーゼルを投入。
後半アディショナルタイム、ペチュニクに代えてオナイウを投入。
その直後、パウリーニョがボールを奪ったところからハーフカウンター。
前方の谷澤に出すと、そのまま谷澤がシュートを放ちますが、ゴール右隅を逸れます。
最後は金沢のCKをジェフが凌ぎ、0-0で試合終了となりました。
■ジェフによる金沢のブロック対策
後半の勢いを考えると、ジェフが勝ってもおかしくな試合だったように思います。
しかし、試合トータルで考えるとスカパーで解説だった城福氏も言っていたように、決定機といえるシーンの数はそこまで大差はなかったとも言えるのかもしれません。
ジェフとしては相手を押し込んでいい形まではボールを持ち込めたものの、最後の崩しや精度がもう1つだったということになるのでしょうか。
前半の金沢は、攻守に安定していたと思います。
守備でもしっかりとスライドして、前に仕掛けさせない状況を作る。
多少守備が遅れても、無理にボールを奪いにはいかず、後方の選手とコースを消す。
守備が遅れて相手に前を向かれる状況は守備をする選手にとっては怖いと思うのですが、パスの出し先がしっかりと封じられていると味方を信じて少しずつ距離を詰めていく。
前に奪いに行って逆に交わされれば、それこそやられてしまう可能性が高くなるので、それを避けるという方針なのではないかと思います。
チームとしての意思疎通がしっかりとしているからこそ、できる守備といえるのかもしれません。
攻撃においても、回数こそ少ないものの、パス1本1本に意味を感じましたね。
特にFWをめがけた、くさびのパスが非常に効果的でした。
楔のパスに対して、周りの選手が受ける体制もしっかりとできていたからFWの選択肢が増える。
守備ではボックスに相手を入れない組織を作り、攻撃では逆に楔のパスを攻撃のスイッチとしてチャンスを狙う。
特に前半のジェフは楔のパスが全く入れられませんでしたから、両チームの違いがはっきりと見えていました。
守備においてもジェフはボールに集中することが多い守り方ですから、対照的ともいえるのかもしれません。
しかし、後半から金沢は失速。
ボックスのコースを消すための細かなポジション修正ができなくなった印象で、ジェフのサイドチェンジへのスライドも遅くなっていった。
そこから縦パスが何本か入るようになり、ジェフの流れになっていったように思います。
金沢が一時期ほど成績が出せなくなったのは、この試合のように90分を通じて安定した戦いができなくなったことが原因なのではないでしょうか。
ジェフはボックス守備に対して、前半からパウリーニョを後方に下げて、大外の高い位置にSBを置いてポイントを作ることで、相手を広げようとしていたのではないかと思います。
金沢は4-4-2でFWも低い位置まで下がるので、カウンターでサイドの裏を使われることも少ないとみたのではないでしょうか。
しかし、前半はそこを使いすぎて中にボールを入れられなかった。
後半相手のボックス内にスペースができたことで、この効果がようやく表れていったのではないかと思います。
ただ、やはり楔のパスからの連携がうまくいっていないため、中を攻略する攻撃というところまではいかなかったようにも感じました。
後半立ち上がりに町田が楔のパスを受けるシーンがあったものの、そこに対するサポートがなかった。
金井が高い位置を取り、水野が相手CB、SBの間を取る動きも後半序盤はうまくいったものの、徐々に相手守備陣も対応してきてしまった。
そこに、2人、3人とからめれば厚みのある攻撃ができたのではないかと思うのですが、中にパスを通して周りが連動してといった点では金沢の方に一日の長があったように思います。
中での攻撃がうまくいかなくとも、中村がいれば外から一発でチャンスが作れたのかもしれません。
ただ、頼りの中村がいないからこそ水野をうまく絡ませる展開などを意識的に作れたようにも思いますし、そこは新たな可能性を感じた部分でもあります。
外の中村と中央からの攻撃を、うまく融合できるかどうか。
中村が早期に復帰できるのであれば、今後はそこがテーマとなってくるのでしょうか。
とはいえ、これまで内容がよくない試合が続いただけに、若干希望の光は見えた試合だったのかなとも思わなくもありません。
これで底を抜けたといえるかどうかは、今後の試合に懸ってくるのではないでしょうか。