米倉恒貴は阿部勇樹になれるのか

 あまり特定の選手同士を比較するというのも良くないのでしょうけど、それほど阿部を評価していて米倉に期待しているという意味を込めて。
 阿部はジェフの歴史においても、能力的には最高の選手ではないでしょうか。
 精神的にというか、功労者としては巻なのかなとも思うのですが。
 何度も言っているように2007年末に選手の退団が相次いだにもかかわらず、その時巻だけは残ってくれたということはその後のクラブにおいてもとても大きなことだったはずですし。



 阿部に関しては攻守において能力が高いという点が、チームを引っ張る存在として非常に大事な部分だったと思います。
 守備おいては粘り強くマンマークでつくことができ、フィジカルも強くてスピードもあって、空中戦においてもそれなりの高さがある。
 オシム監督はマンマークディフェンスが基本でしたが、相手チームの攻撃のキーマンには必ず阿部をつけていました。


 攻撃においても消極的というイメージばかりが先行していた印象はありますけど、地味でも正確なビルドアップで大きく貢献していました。
 時折見せる攻撃参加は迫力があり、若い頃にはプレースキッカーとして、ジェフ後期にはセットプレー時のファーストターゲットとして活躍していました。
 特にCKではファーに巻など長身選手を置いて、ニアに鋭く阿部が走りこんで決めるという形が、オシム監督時代の1つの得点パターンになっていました。
 05年、06年にはリーグ戦で二桁ゴールを挙げています。


 圧巻だったのは、2006年第27節の鹿島戦。
 オシム監督退団もあってチームの成績が下降気味になっていた試合で、前節浦和戦では結城とストヤノフが退場。
 厳しい状況だったわけですが、2バック気味のボランチ(ストッパー)に入って相手の攻撃を止め、攻撃ではそこから積極的に飛び出していき、攻守にわたってピッチを制圧。
 3ゴールの得点をあげて、4-0の勝利をもたらしました。
 まさに獅子奮迅の活躍と言えた試合だと思います。



 今年の米倉の活躍を見て、ぜひあの頃の阿部レベルの選手になってほしいと、思えるようになってきました。
 タイプは違いますけど、米倉もフィジカルもあってスピードもあって技術のある選手。
 持てる能力をすべて発揮できれば攻守において貢献できる選手だと思いますし、そうなってくれば日本代表選出も現実味が帯びてくるのではないでしょうか。


 しかし、現状ではまだまだ粗が多い。
 疲労の影響もあるのかもしれませんけど、守備でも1試合に一度はサボっていることがありますし、攻撃でも90分間通してみると安定したパフォーマンスが出来ていないことが多い。
 ようするに米倉に必要なのは、継続性だとか集中力などの部分ではないかと思います。
 クロスの質やシュート力など一発の破壊力は見せてくれているからこそ、それ以外の時間帯でのプレーの質を高めていくことが、チームの引っ張っていく存在になるために必要な部分ではないかと。


 齋藤TDがスカウト時代に重要視していたのも、プレーの継続性だと雑誌で答えていたことがあります。
 守備ではプレスをかけ続け、攻撃でも動き続けてボールを触ることが、現在サッカーにおいては大事な部分だということだと思います。


 特に米倉が2列目でのプレーを再び望むのであれば、なおさらそこは必要になってくる能力なのではないでしょうか。
 現状だと飛び道具的な存在というか、周りに生かされる存在というイメージがまだ強く、自分で試合を制圧し、コントロールするまでには至っていな印象ですしね。
 福岡戦でも2点目のミドルシュートは素晴らしいものでしたけど、それ以外の攻撃回数や質、守備などに関しては物足りない部分もありましたし、もっと90分間のプレーを安定させていくことが課題ではないかと思います。
 まぁ、あくまでもゴールやシュートにこだわる外国人選手的な方向性で行きたいのであれば現状のままでもいいのかもしれませんけれども、米倉の総合力を考えるとそれではもったいない気もしますし、チームの中心選手として戦うためには課題を埋めていくことが大事ではないかと思います。



 もちろん今期の米倉の頑張りは言うまでもなく、負担が大きいからこそ疲れなども出ているのだとは思います。
 けれども、米倉のようなポテンシャルのある選手に対して、現状で周りが満足してハードルを下げてしまっては本人の成長を止めることにも繋がりかねないし、それはジェフという器が米倉には物足りない存在にもなるということにもなってしまうように思います。
 もちろんチーム全体がレベルアップして米倉だけを特出した存在にしないことがすごく大事だと思いますし(その点を考えても森本の加入は大きかったのかも)評価すべきところは評価すべきだとは思いますけど、手放しで褒めるようなスターシステムにはならないように、米倉には現状のスケール感をそのままに更なる上を目指していってほしいと今は思います。