今季前半を振り返る サッカー編

 昨日の数字編に続いてサッカー編です。
 これまでのチームの変化と、木山監督のサッカーに関して触れていきます。
 テーマは"木山監督時代の水戸"ということになるのではないでしょうか。


 今期の木山監督のサッカーと言っても、本人に直接話を聞けたりしたわけでもないので、推測の部分も含まれていきます。
 逆に外から見なければわからない部分も意外とあったりもするかもしれませんし、そのあたりも含めてサッカーだと思いますので、文章的にはそこをしっかりと区別しつつも、両面で見ていきたいと思います。
 …なんか、そのあたりはいまさらな話ですけどね(笑)
 でも、twitterとか読んでると、そのあたりごちゃまぜになってたりすること多い印象がありますしね。
 客観的な話なのか、主観的なものなのか…とか。
 短い文章を書く難しさはわかりますし、言い切るべきところは言い切るべきだとは思いますけど、どういう意味での文章なのかというところは自分も気を付けなければいけないなぁと感じるところだったりします。 
■ディフェンス編
 ディフェンスに関しては、開幕直後から予想通りの守備システムなっているなぁという印象です。
 山口智を獲得した時から想像はできましたけど、基本的には水戸時代と同じように、ボランチとともに中央で跳ね返すのがベースではないかと思います。
 木山監督は水戸の頃にも大和田や中村といった長身CBを起用して、ボランチとともに連携して最後のブロックだけは絶対に崩されないように…というところを大切にしていた印象があります。


 それにプラスして、ジェフではDFラインの積極的なコントロールからのラインアップと、それに合わせた前からのプレスもより積極的にやっていこうという意図なのかなと思います。
 シーズン序盤はなかなかこのプレスの部分が、うまくいっていなかった印象もあり、ボールを奪いに行って展開されてしまうパターンなどもよくありましたが、徐々にプレスの掛け方も安定してきたのではないでしょうか。
 ただ、シーズン開幕前に守備に関しては「アグレッシブにボールを奪いに行く」と木山監督は話していましたけど、そこまで積極的に奪いに行っている印象はありません。
 シーズン序盤に奪いに行って展開され、ピンチを作られてしまう時期があったからこそ、無理に行かずにバランスを考えたプレスに代わっていったのかもしれませんね。
 


 それよりも課題は、やはり一度押し込まれた時の対応ではないかと思います。
 現在の守備は相手に高い位置までボールを持ち込まれると、ジェフのCBに対してMFラインの選手たちが接近してサポートする意識が強く、その結果MFラインが中央に集まりつつDFラインに吸収されることが多い印象です。
 その結果、失点数こそ少ないですが、中盤にスペースができてしまい、ボールを支配されてしまう。
 最悪、湘南戦のように中盤の高い位置で相手をフリーにさせてしまい、決定的なラストパスを出されるなんてこともあります。
 シーズン途中から4-4-2になって前線の守備において、相手ボランチへの守備があいまいな時間帯ができてしまっているところも問題なのかもしれませんが。


 中盤の選手たちが後ろのケアも考えながら前に出ていけるかどうか、あるいは後ろはもうDFラインに任せて吸収されないことを念頭に置くか、それとも守備時には4-5-1にしてFWの1人を前へのプレスだけでなく中盤のケアもやらせるようにするのか…。
 ボランチの選手に体格が良い選手が少なく、がつっと奪いきれずに下がってしまう問題も含めて、相手の遅攻に対する守備などに関してはまだまだ改善点があるように感じます。
 あとはセットプレーの守備なども気になるところですが。
■オフェンス編
 オフェンスに関しては開幕前、「自分達がボールを持って主導権を握るサッカー」を目指すと木山監督は話していました。
 実際のチーム作りもそれに沿っていた印象で、兵働と伊藤を両サイドハーフに起用してみたり、兵働を1.5列目に近いポジションで使っていたりしたのも、ボールを持ってパスワークから崩す攻撃が念頭にあったのではないかと思います。
 開幕前に「バルセロナ」という名前もあがりましたが、一時期4-5-1のようにも見えるシステムをやっていたのも、狙いとしてはそのあたりにあったのではないかと思うところがあります。


 しかし、現実にはそれはうまくいかなかったと。
 確かに相手のプレスが緩い試合ではボールをつなげることはできますけど、そこからのパスワークで相手を崩すというシーンは少なく…。
 兵働のスルーパスから崩せた場面は少なくもなかったですけど、それはカウンターからの攻撃だったり、相手の守備の緩さから生まれたものであって。
 素早くパスをつないで、選手たちが3人、4人とそこに絡み、相手のマークを自らの動きでずらしてゴール…といったような"能動的なパスワークからの崩し"というのは、なかなか見られなかったと思います。


 そのパスワークもうまくいかず、攻撃も手詰まりになって結果が出なかったのが、GW前4月頃のジェフだったんじゃないでしょうか。
 そこで、5月からは木山監督も攻撃のやり方を変えてきたのではないかと私は思います。
 2トップにして、前線には荒田や深井を、右ウイングには田中などスピードのある選手を置き、カウンターを狙うサッカーにしてきたと。
 ここで木山監督はパスで崩すことをメインとするサッカーから、カウンターを主眼に置いて戦うサッカーに切り替えてきたのではないかと推測します。


 もちろん相手が格下で攻め込んでこないチームに関しては、カウンターの試合展開にはなりませんが、そういったチームに関しては今期のJ2レベルではそもそも無理にパスで崩さなくとも、勝手に崩れてくれることが多いですからね。
 カウンター展開にならずとも、得点は奪える流れだったと。
 そうはならなかったのが、しっかり徹底して守ってきた岐阜と、一定の力のあるCBがいる上位チームとの試合ということになるわけですが。


 シーズン序盤は兵働というパスワークのキーマンを前線の高い位置におくことで、パスで崩すサッカーを狙っていたのではないかと思いますが、なかなか兵働が前を向けずに苦しみます。
 しかも、兵働を高い位置に起用することでその分前線のスピードもなくなり、結果的にパスで崩すサッカーもカウンターサッカーも出来なくなっていたと。
 そこで兵働を後方に下げて、『2トップを縦に走らせて点を取らせるカウンターサッカー』に、代わっていったということではないでしょうか。
 現在の攻撃のポイントは、兵働が左サイドから中に入っていって、相手のマークを避けて前を向く…あるいはその流れで左SBが前に出ていく…というのがパターン化されているところがあると思います。
 そうなってくると、左SBの攻撃力というのが重要になってくると思うのですが、武田にせよ渡邊にせよまだまだバリエーションという意味で課題が多いですね。
■今後の発展に関して
 今期のジェフがカウンターサッカーになっていったのは、木山監督の中で妥協的なものなのか、チームの成長過程としてなのか…まではわかりませんが、結果的に水戸時代のサッカーに非常に近い攻撃手法になったということになります。
 言わば、『落ち着くところに落ち着いた』ということになるのでしょう。
 決してカウンターサッカーと言っても、1人のドリブルだとか突破力に頼るものではなく、シンプルにパスをつないでいくカウンターサッカーと言うことになりますが、水戸時代の攻撃パターンもこれに近いものがあったと思います。


 守備に関しても初めから水戸時代の守備システムで戦ってきましたから、攻守に当時の水戸サッカーに近いものになっているのではないでしょうか。
 他チームを見ていてもそうですけど、やはり監督の色というのは出るものであって。
 岡田監督が日本代表監督に就任した際も、初めは攻撃的なパスサッカーを目指していた印象がありましたけど、最終的に自分のサッカーに戻して結果を残す形となりましたし。
 北京五輪代表の反町監督もそんな感じで、パスサッカーに関しては無理をしていたところがあった印象もあります。
 やはり監督個々の作れるサッカーというのは限られていると思いますし、だからこそ監督選定が重要なんだと思いますが。



 そんな中で木山監督も結局『自分の目指すサッカー』と言うよりも、『自分の出来るサッカー』に行きつく流れになったのかなと。
 それはむしろ自然な流れだと思います。
 無理に背伸びをして失敗するよりもいいと思いますしね。
 横浜時代に岡田監督が「帆を広げすぎた」と言ったのは、チーム力の話なのかと思っていましたけど、考えてみれば自分のことだった可能性もあるのかもしれません。


 ただ、気になるのはやはり得点力の部分ではないかなと。
 守備ではMFが引くサッカーで、攻撃ではカウンター主体と思われるサッカー。
 要するに、アクションサッカーと言うよりはリアクションサッカー的なものであり、比較的戦力の劣るチームが上位チームを倒すサッカーとなっているのかなと思います(水戸時代はそれで正解だったのではないかとも思われます)。
 それでも戦力的に劣るであろうJ1での戦いまでを考えれば、それも悪くないのかもしれません。


 しかし、J1昇格を目指すにおいて、自発的な動きで点が取れないというのは、やはり1つの大きな課題となってしまうのではないかと。
 具体的に言えば、中盤やサイドからパスを出して、『FWに前を向かせて点を取らせるサッカー』(よってそのメインスタイルではオーロイに合いづらい)になっていると思うのですが、そのFWに対して相手守備陣がスペースを与えるかどうかで、得点が奪えるかどうかが決まってしまう。
 だから、相手が前に出てくる状況でのカウンターや、相手の守備が緩くこちらが何をしない状況でもスペースが出来ているときには得点を奪える…。
 けれども、相手が先に点を取ってゴール前から動かなかった岐阜や、CBがマンマークでしっかりついてきた東京Vなどには、結果が出せず敗戦に終わったと。
 しっかりとした守備をする3バックに苦しんだ時期があったのも、1人がカバーする分ジェフのFWがフリーになりにくいというところがあったのではないかと思います。


 ようするに自発的に相手のDFラインを混乱させ、揺さぶり、CBを"外す"ような形がチームとしてができていないから、まともな守備をしてくる相手には点が取れない。
 そこが作れてこないことが、当初のパスサッカーから離れざるを得なかった理由でもあり、得点数が増えてこない原因でもあるのではないかと私は考えます。


 では、そこを改善していくつもりが監督やチームにあるのかどうか…というところなのですけど、ロボの獲得などを考えると自分たちで崩すという部分に関しては、そこまで力は入れていかないのかなぁとも思ったりもします。
 確かに相手を崩さなくとも、相手CBを上回る個の能力があって、それを活かせる環境が作れればそれでも点は奪えるとは思います。
 ただ、ロボも含めてそこまで強力な個人技を持った選手はジェフにはいないと思うし、そういった選手を獲得する予算の問題も出てきますからね。



 まぁ、これらの話は1か0かではもちろんないし、今後サッカーがまた変わってくる可能性もあるのでしょうけど、少なくとも前半戦を終えてサッカースタイルの大枠と課題などは見えてきたのではないかなぁと思います。
 完璧なチームなどないと思いますし、その課題と付き合いつつJ2を勝ち抜いていって、J1で戦えるチームを作るかが後半戦の最終目標になるのではないでしょうか。