2015シーズンを振り返る その2

 その1から少し間が空いてしまいましたが、今回からやっと2015年シーズンの振り返りに入ります。
 その2では2015シーズンの前半を。
 その3では後半を取り上げて、その4でまとめに入りたいと思います。
■ハイプレスでの快進撃も1ヶ月で不安が
 2015年開幕前に、ジェフは大幅な選手入れ替えを決行。
 山口智山口慶、兵働、竹内、大塚、ケンペスなどが退団し、パウリーニョペチュニク、金井、水野、北爪などを補強。


 開幕前は戦力的に不安な部分も感じましたが、獲得した選手1人1人が見事に活躍。
 J2暮らしが長引いて予算が徐々に縮小し、以前ほどの補強が出来なくなっていた近年のジェフの中では、大成功のオフだったと言えるのではないでしょうか。
 テクニカルな選手たちを放出しフィジカルが強くサイズのある選手たちを中心に集めたことで、関塚監督の好みに合った構成となりピンポイントの補強が出来た点も大きかったのではないでしょうか。
 このオフによって、全体的な若返りにも成功したように思います。



 開幕当初のジェフは、ハイプレスを実施。
 ボールを奪われた直後から森本を中心とした激しいプレスをかけいき、前からプレスを"はめこんで"いってボール奪取能力の高いパウリーニョが奪う。
 相手がプレスを避けようとロングボールを蹴れば、空中戦に強いキムと大岩のCBで跳ね返す。


 そして、高い位置で奪ってハーフカウンターで、一気にゴール前まで攻め込む。
 あるいは相手を押し込んだ状況のまま左サイドに大きく展開して、守備が整う前に中村がアーリークロスを蹴り込む。
 森本やペチュニクなどサイズのある選手がプレスに行って、そのまま前線で待ち受けるところに精度の高い中村からのクロスが来るわけで、相手にとっては脅威だったと思います。


 ペチュニクパウリーニョ、金井、大岩などサイズのある選手が増えたことによって、セットプレーもさらに強力な武器になった印象です。
 セットプレーの強さは攻守において、シーズンを通してチームの強みになっていきました。
 長身選手の多かった関塚監督時代の川崎もセットプレーが1つの強みとなっていたところがあり、ガツガツとフィジカルで潰していくスタイルも含めて、あの頃を思い起こすチームになりつつあったと思います。



 開幕当初のジェフには、確実に強さを感じたし新しいスタイルが成功しつつあったと思います。
 しかし、4月11日に行われた大宮戦では、前半こそハイプレスで相手を押し込んでいましたが、後半に入ってガクッと失速。
 全体の運動量が落ちプレスが効かなくなって、苦しい試合展開となってしまいました。
 2-0で勝利したものの、今後に不安の残る試合だったと当ブログでも書いています


 プレスと一口に言っても、さまざまな狙いや考え方があるでしょう。
 単純に前線の数人だけで組織的に追い込み、相手のビルドアップを阻害する狙い。
 バルセロナのように守備への切り替え直後にプレスをかける形や、攻守の切り替えから奪ってハーフカウンターを狙うドルトムントのゲーゲンプレスなども話題になりました。



 開幕時のジェフの場合、ともかく前から激しくプレスをかけて行って「絶対に奪いに行く」というような姿勢だったと思います。
 極端な前傾姿勢にも見え、まさに"ハイプレス"といった印象で、選手たちへの負担は非常に大きかった。
 プレスを掻い潜られた後のことのリスク管理なども、あまり考えていないような守り方だったように思います。
 だから、バルセロナなどは切り替え直後数秒は奪いに行って、その後は無理をしない守備体形を作る形を取ったのでしょうが、ジェフには後者がなかった印象でした。


 今年のジェフはコンディショニングも、開幕時に合わせていたのではないでしょうか。
 明らかに相手チームの選手たちよりも、ジェフの選手たちは動けていた。
 しかし、開幕から1か月過ぎたところからそのピークも過ぎ去り、ハイプレスで消耗した選手全体の動きも落ちて行って、90分間持たない状況になっていきました。



 そして、そのプレスの穴を掻い潜られてしまったのが、大宮戦の翌戦となる愛媛戦と、その次の磐田戦。
 主にボール奪取役のパウリーニョをサイドに釣り出されて、裏のスペースを取られるようになってしまった。
 愛媛戦で今季初黒星となり、磐田戦でも負けて2連敗。
 ここまでが今季序盤のジェフの流れと言えるでしょう。
■ハイプレス以降、攻守に新方針を打ち出せず
 0-1で愛媛戦で敗れた関塚監督は、「攻撃のバリエーションを増やしていかないといけない」と課題を述べています
 ハイプレスに陰りが出て、ハーフカウンターが機能しなくなったこともあってのことだと思います。
 しかし、ここから長らく"攻撃のバリエーション作り"に苦しむことになります。


 まず、磐田戦後の熊本戦で、トップ下町田を起用。
 それまで途中出場もなかった町田が、この試合でいきなりスタメン起用されます。
 町田は相手の間を取り、ボールを引き出して、素早くパスをつなぐことができる。
 1人でパスワークを構築することができる選手だと思います。


 しかし、ラストパスやシュートにおける課題は大きく、パスワークは改善しても得点力改善には直接つながらなかった。
 町田は4月下旬から7月下旬までスタメン出場し続けますが、7月26日の熊本戦以降はピタッと出場機会がなくなります。
 得点力の課題もあって、厳しい評価が下されたということでしょう。
 一方でサイズの小さい町田の起用は開幕当初のフィジカルサッカーとは方向性が異なるもので、町田にパスワークを頼った分よりチームの方向性が曖昧になっていった印象もありました。



 5月17日の金沢戦では、金井の右SHを実施。
 第2節水戸戦で早くも移籍後初ゴールを決めていた金井を一列前に起用して、攻撃センスを活かそうという狙いだったのでしょう。
 しかし、このパターンも明確な形は作れず1試合のみで終了。


 この頃からジェフはハイプレスの惰性期間も終わって、確実にチームが低迷していきました。
 実際、金沢戦から5試合勝ち星なし。
 4月26日の磐田戦から勇人が欠場したためその影響が大きいという声もありましたが、6月21日に勇人が復帰した後も成績が改善したわけではありませんでした。
 選手1人1人の問題ではなく、チーム全体としての問題が大きい状況だったと思います。



 7月8日の金沢戦から7月22日の水戸戦までの4試合では、中村が負傷欠場。
 中村のアーリークロスという武器を失ったジェフは、両SBを極端に押し上げ5トップのようなスタイルを実施。
 特に右SBの金井がサイドの高い位置で、後方からのロングボールのターゲットになる展開を作っていきました。


 金井は空中戦にも強くプレッシャーの少ないサイド際で受けることで、しっかりと空中戦のターゲットになっていました。
 しかし、5トップ気味になったことによって、ボールを受ける選手がいなくなり苦戦。
 落ち着きのない試合展開となり、攻撃の改善とはいきませんでした。



 その他、前線や2列目の入れ替えなどを行うも、大きな改善にはつながる。
 守備においても、この頃は中途半端になっていた印象でした。
 開幕時ほどプレスをはめきれていないのに、パウリーニョなどが前に奪いに行くためその裏を取られることも多かった。


 結局ハイプレス以降は長い間、攻守において明確な方針を打ち立てることができなかった。
 ハイプレスを継続することも新たな別の何かを作り出すこともできずに、シーズンを折り返すことになります。