フクダ電子アリーナ10周年に寄せて

 2015年10月、フクダ電子アリーナは開場10周年を迎えます。
 それにあわせて、ジェフも様々な企画を準備しているようです。
 10周年記念サイトも期待の持てる内容になっていますし、記念ユニフォームも個人的には好きなデザインになっています。


 それにしても、あのフクアリ移転から早くも10年になるのですね。
 10年も経てばクラブも変わり、選手も入れ替わって、サポーターの客層が変化していくのも、当然のことなのかもしれません。
 ナビスコ杯二連覇、日本代表大量選出、奇跡の残留、そしてJ2降格…。
 ここ10年で、ジェフは大きな変化を遂げたクラブと言えるのではないでしょうか。




 「J2の地方クラブに行くとのんびりした雰囲気で暖かく迎えてくれるのに、いざ試合が始まると激しいサッカーをしてきて苦戦してしまう…」
 J2降格直後に、よくこのような話が出ていました。
 しかし、ジェフもそこからほんの数年前までは、同じ立場だったと思います。


 臨海時代(現ゼットエーオリプリスタジアム)のジェフは、アットホームでまるで我が子を見守るように、選手たちを応援する牧歌的な雰囲気のあるクラブだったと思います。
 チームに関しても若い選手たちが積極的に走り回って、ビッククラブが来るといつも以上に気合が入ったり。
 クラブとしても予算が厳しく大型補強は出来ないから、若い選手を育てながら、組織的なサッカーを目指すという考えがベースにあったように思います。



 それから10年が経って、ジェフはJ2の中で逆の立場に立っていると言えるのでしょう。
 積極的に補強を行い早期の結果を目指し戦っていき、他クラブからは警戒されるポジションとなった。
 ファンやサポの客層も「我が子を見守る」よりも、選手や監督に「憧れ」に近い想いを抱いている方が増えたのかもしれません。
 とある先輩サポの方は、フクアリ移転後にJRに主導権が移ってから"ブランド化"を目指している印象があるとおっしゃっていたことがありましたが、クラブとしてのチームの売り出し方も変わっていったところがあるように思います。


 今季も開幕時には期待が先行していた印象ですが、結果が残せない状況が続くと客足も低迷。
 どこか諦めに近い雰囲気すらも、感じる部分もありました。
 ただ、考えてみれば、それも仕方のないところがあるのかも知れません。


 近年ジェフを応援し始めた方たちにとっては、今季は序盤の活躍もあってかなり期待できるチームだったということなのでしょう。
 特にここ数年はあと少しのところで昇格を逃してきただけに、今年こそはという思いもあったのかもしれません。
 しかし、その後大きな壁にぶつかってしまい、期待値が高かったからこそショックは大きかったのではないでしょうか。


 また、ここ数年のクラブの在り方を考えると、コツコツとチームを築き上げることへの楽しみというも体感したことがない方が増えているのではないかと思います。
 実際クラブは育成面で長年失敗しているだけでなく、有望な若手選手も多くないのが現状で。
 応援する側にもどこかに焦りがあるのかもしれません。
 


 クラブとしてもスポンサーやサポーターからのプレッシャーやクラブの規模、ここ数年の成績などを考えれば、J1昇格を目指さなければいけない。
 けれども、ずば抜けた予算があるわけでもないし、かといって急に育成型クラブに移行できるはずもない。
 現在のジェフは多くのジレンマのある、非常に難しい状況に立たされているのではないかとも思います。
 だからこそ、どこかで我慢しなければいけないのではないかと思うのですが、内部情勢やプレッシャーなどもあって難しいということなのかもしれません。


 決してクラブの状況は悪化しているばかりではなく、良い部分も出ているとは思います。
 フクアリへの移転でユニフォーム着用率は目に見えて高まっていったし、ユナパも含めて選手の環境も向上。
 J2に降格してから観客同心数は減少傾向にあるものの、純粋なスタジアムの盛り上がりという意味でもプラスになった部分はあると思います。
 見方によっては、ここ10年でようやくプロらしい環境が整ったとも言えるのかもしれません。


 クラブとしての在り方も、昔と今でどちらが良いかとは一概には言えないでしょう。
 若手主体で虎視眈々と金星を狙うクラブも良さもあれば、良い選手を集めて純粋に勝利を目指すクラブがあっても良いはずだと思います。
 ジェフとしてはフクアリ・ユナパとハコが大きく整備されたわけで、この変化は必然でもあったとも言えるのかもしれません。



 ただ、厳しい言い方をすれば、まだジェフはフクアリに移転してから、クラブのビジョンといったものを明確に築ききれていない印象がある。
 フクアリ移転直後の成功は、それまでコツコツと取り組んできた、"育成のジェフ"が花開いたもの。
 阿部、勇人、羽生、巻、水本、水野など、ユース育ちや大卒、高卒の選手たちを育て上げて、成功を遂げた形でした。


 そのジェフ黄金期の選手たちがいなくなってからは、迷走を繰り返している状況で。
 もちろん黄金期の後に低迷するクラブというのは決して珍しくはなく仕方のないことでもあるわけですが、問題なのは次の方向性が見えてこないこと。
 クラブが変革期を迎える中で、「どういったクラブを目指すのか」定まらない時期があまりにも長すぎるということ。
 そして、その迷走期は今も続いているように思います。



 これはチームだけでなく集客や地域密着の観点においても感じるところで、確かにフクアリが出来てJRの支援もあって、フクアリ蘇我駅・千葉駅周辺などは華やかにはなった。
 ただ、そこに住む方たちがどれだけジェフに関心を抱いてくれているのかに関しては、まだ疑問があるように思います。
 表面的には華やかになったとしても、地域における普及活動などに関しては、やるべきことがたくさん残されているのではないでしょうか。


 チームにおいても、地域密着に関しても…。
 あるいはサポーターや経営面においても見た目だけではなく、よりしっかりとした軸を作っていかなければ。
 そして、芯のあるクラブを目指していかなければ。


 具体的に言えば、ジェフとは何か、ジェフの良さとは何なのか。
 その答えがいつまでも「フクアリやユナパなどの施設」というものでは、恥ずかしいところがあると思います。
 立派なハコができた…では、肝心の中身は?
 それに悩み続け、いまだに答えの出せていない10年だったのかもしれません。



 フクアリに相応しいクラブになれるように。
 フクアリへ恩返しをするためには、それを達成することが一番なのかもしれません。