開幕戦の守備の狙いと後半の課題

 長崎戦で攻撃から守備への切り替えのところでボールが奪えたのは、パウリーニョペチュニクといった新加入外国人選手の貢献が大きかったのではないかという話をしましたが、CB二人の貢献も大きかったのではないかと思います。
 前半の長崎は積極的にDFラインの裏を狙って来ていましたが、CB2人が我慢してラインを保ったことにより、切り替え直後のプレスに行けることができていた。
 昨年ならあれだけ裏を狙われるとずるずるとラインが下がってしまっていたでしょうけど、若いCB二人がなんとか踏ん張っていた印象でした。


 長崎戦前半の守備を思い返すと、切り替えのところで奪えなかった後は無理にプレスに行くでもなく極端に深く守るでもなく、ラインをある程度の位置で維持しながら、ボールが入ってきたら囲い込むといった守備をしていた印象です。
 関塚監督就任直後の深い守備ではなかったし、咋シーズン終盤に見られた選手の走力による前へのプレスといった感じでもなかったように思います。
 強いて言うのなら鈴木監督が5月以降に行ったボックス守備に近い印象ですが、あの時の方がラインは低めだった印象があり、前へのプレスにも行っていた印象です。


 もっともラインの高さに関しては、やはり山口智が深く守りたがる影響というのが大きかったように思いますが。
 長崎戦を見て、改めてその思いは強くなってきました。
 ただ、CBの前にパウリーニョがいてプレスバックなどでCBをサポートしてくれるからこそ、ラインを上げる余裕もできつつあるのかなとも思わなくもないですが。



 無理にプレスに行かずに最終ラインを上げるとなると、ミドルエリアでコンパクトに守れるようになり、中盤の圧力が増すことになります。
 これによって、前半は長崎の後方からのビルドアップを阻害することができていたのでしょう。
 コンパクトに守れていたからこそ、守備への切り替えのところでも選手の距離感が近まって、ボールを奪われた直後に囲い込めるという守備ができていたのだと思います。
 これは岡田監督が2度目に日本代表に就任した際にやろうとしていた守備で(結局あきらめた印象でしたが)、アギーレ監督も近い意図を感じました。
 さすが元JFAファミリーの監督・コーチ陣といったところなのでしょうか。



 しかし、プレスに行かず最終ラインを上げると、その分相手の後方の深い位置とジェフのDFライン裏にはスペースができやすくなる。
 だからこそ、ラインコントロールが重要になっていき、22日の山形戦でも大岩が「もっとラインコントロールをしなければいけない」と話していたのかもしれません。
 ラインをうまくコントロールして相手アタッカーとの駆け引きをしつつも、後方へのボールに対してはDFとの競争になる場面がどうしても出てくるため(深い位置までプレスに行かないのであればなおさら)、そこで勝てるかどうかというのも重要になってきます。



 その問題を突かれてしまったのが、長崎戦での後半だったと思います。
 もっともわかりやすく出てしまったのが55分のシーン。
 長崎CBが深い位置からロングボール一本で右サイドの岸田を走らせ、裏を取られてシュートまで持ち込まれてしまった場面でした。


 CB2人に関してはそれなりスピードがあると思いますし、CBの裏にはGKがいるので高木がカバーしてくれればいい。
 しかし、SBの裏は基本的にカバーする選手は存在しない上に、中村にはあまりスピードがない。
 中央にパウリーニョがいること、谷澤が守備面で貢献できていなかったことも大きかったと思いますが、中村がスピードの面で課題があるため、そこを狙われてしまった部分も大きいのではないでしょうか。



 後半からラインが下がって中途半端な守備になってしまったのも、全体の運動量の低下というのもあったでしょうが、中村が裏を取られたことによって、選手たちに"怖さ"が出てしまった部分もあったのかもしれません。
 スカパーで取り上げられていた高木監督のコメントからして、長崎も前半は開幕戦で相手の出方がわからないということもあって、自分たちのサッカーをするということで、中央でスルーパスを積極的に狙っていったのでしょう。
 しかし、45分間戦ったことによって、ジェフの守備の課題が左サイドであるという分析に至ったのではないでしょうか。


 右サイドに関しては思いの外、ペチュニクが守備で貢献してくれましたし、金井も後半一本完全に裏を取られたシーンがありましたが、守備で十分に貢献できそうな選手であることがわかりました。
 しかし、左サイドに関しては谷澤が守備でもフラフラしていたり戻りが遅かったりするし、中村もスピード不足ということで脆さが出てしまった。
 それらが後半に入って、多くのピンチを作られた要因となってしまったように思います。



 積極的にラインを上げつつも、無理にプレスをかけない守備というのは、欧州などでもよくみられると思います。
 サイドに関しては攻め込まれても角度はないわけだから、何とか並走していけば大きな問題にはならないという発想なのではないでしょうか。
 しかし、さすがにあれだけ何度も完全に裏を取られてしまうとなるとリスクは非常に大きく、左サイドの守備は開幕戦で見られた大きな不安ということになるのではないでしょうか。
 それでも中央で跳ね返せていればいい…ということになりますが、実際には中央でも前を取られていたことは多く、相手の決定力に救われた面は大きかったのではないでしょうか。
 前日にJ1の開幕戦も実施していましたけど、やはりレベルが高くなればフリーで蹴らせて中央で前を取られれば確実にやられるわけで、J2でも上位チームとの対戦になれば当然その確率は上がっていくとみていいでしょう。


 また、以前にも話した通り、日本のサッカーはJ2であっても後方からしっかりパスをつなげる技術があることが大きな特徴だとも思います。
 そこに対して無理にプレスに行かないということになると、先ほど取り上げたような後方から一本で裏を取られる可能性も出てくるかもしれません。
 長崎以上にDFラインからしっかりビルドアップで来ていた山形相手の試合だと、ジェフが押し込まれる時間が長くなってしまったことも偶然ではないように思いますし、どこまでそれで通用するか…というところも注目のポイントになってくるのかもしれません。



 結局のところどういった守備戦術にするにしてもメリット・デメリットはあるのでしょうし、選手構成なども考えて自分たちに合った組織を作っていくしかないのだと思います。
 中村に関しては高いDFラインのSBとしては不安があるということもあって、練習試合では金井の左SBを試したこともあったのでしょうか。
 しかし、一方で流れの中でのチャンスを作れないという問題も昨年から継続して見られている大きな課題であるため、プレースキッカーとして外したくない貴重な選手でもあると思います。


 前半実施したボールを失った直後を狙ったボール奪取と、無理をしないプレス+高い最終ラインによるブロック形成というのは、一つの理想形ともいえるのかもしれませんし、確かに可能性も感じました。
 しかし、後半には早くも相手に対応されて課題も出てきてしまいましたし、現実を見ながら今後大きく変えていかなければいけない部分も出てくるのかもしれません。
 最終的に良いバランスが見つかるかどうか。
 そして、安定した戦い方ができるかどうかということになりますね。