2014シーズンを振り返る オナイウ阿道編

 北九州に完全移籍となった大塚、町田へのレンタル移籍が決まった戸島に関しては以前お話したので、今回はオナイウについて取り上げたいと思います。
 オナイウは昨年、正智深谷高校からジェフに加入しました。


 ジェフでの高卒新人は2012年にU-18から昇格した井出、佐藤祥を除くと、2010年に加入した戸島以来の獲得ということになるはずですから、本当に久々の高卒ルーキーということになりました。
 大卒選手の獲得はあったとはいえ3年間も高卒新人がいなかったということですから、それだけベテラン選手補強の比重が高かったことも言えるのでしょう。
 今年は乾も入りましたしU-18からも浦田、中村が昇格しますので、オナイウも含めてようやく将来を期待できる選手が増えてきつつあるのかなとも思います。


 2014年のオナイウは開幕前に右足第5中足骨骨折の大怪我を負ってしまい、長期離脱を余儀なくされました。
 高卒ルーキーとしては、非常に辛いスタートとなってしまったのではないでしょうか。
 しかし、5月から練習に復帰すると、7月にはJ3J-22選抜に登録されます。
 J-22選抜からは、リーグ戦で2試合に出場しています。



 8月20日に行われた天皇杯3回戦柏戦に後半33分から途中出場し、ジェフでの公式戦デビューを果たします。
 そして、0-0で試合の進んだ延長後半3分に、いきなりゴールを決めます。
 その活躍が認められた形で、リーグ戦にも出場。
 8月31日の第29節水戸戦、9月06日の第30節京都戦ではスタメン出場も経験します。
 途中出場となった9月14日の第31節北九州戦では、リーグ戦初ゴールも記録しました。


 オナイウはナイジェリア人の父と日本人の母のハーフということで、非常にバネがあって跳躍力の高い選手だと思います。
 身体能力が非常に高く、単純なゴール前の強さや武器という意味では、森本以上の可能性を持っているのかもしれません。
 なかなか日本人選手では見られないレベルの身体能力だと思いますし、印象としては高卒選手と言うよりも若い外国人選手を獲得して育てるようなケースに近いのかなとも思います。
 ジェフではあまりないですが、他チームでは見られるケースですね。
 しかし、非常に明るく真面目な性格はやはり日本人選手といった印象で、今ではチームのいじられキャラになっているようです。



 天皇杯柏戦でのデビューから一気に出場機会の増えたオナイウですが、何度か試合に出場しスタメンも経験していくと、徐々に課題も浮き彫りになってきてしまいました。
 途中出場なら目立たない粗も、長い時間試合に出るようになると、どうしても隠せなくなってしまう。
 守備では懸命に追いかけようとはするものの、パスコースの消し方や身体の寄せ方がうまくいかなかったり。
 攻撃ではパスワークなどに絡む際に、ポジショニングが曖昧になってしまったり、ボールを受けてから対応に迷ってしまったり。
 ゴール前でのプレーに関してはハイレベルなものがありますが、守備やボールのさばき方に関してはまだまだプロレベルに達していないといった印象でした。


 第30節の京都で途中交代した後は、リーグ戦でのスタメン出場はなく、次第に出場時間も短くなっていきます。
 結局リーグ戦出場は6試合にとどまり、10月以降はピタリとリーグ戦出場の機会がなくなってしまいました。
 オナイウが10月以降、試合に出場できなくなったのは、チームの変化というものも大きかったのでしょう。



 単純にチームが2トップ主体から1トップに変わったということも影響したでしょうが、10月以降のチームは主力メンバーも変わって攻撃ではカウンターが通用しなくなりパスを繋ぐようになっていった。
 守備では中盤や右サイドのスペースを消すため、走力でカバーするようになっていった。
 その中でパスを繋げない、守備に課題があるオナイウの立場が厳しくなっていたのだと思います。


 ただし、これはオナイウだけでなく兵働、井出、大塚、ケンペスといった、シーズン終盤に出場機会が減少していった攻撃的な選手にも同じことが言えると思います。
 それだけに2014シーズン途中の活躍は素晴らしいものがあり、将来性を期待したい数少ない選手の1人ではあると思うのですが、2015シーズンのオナイウもチームの状況次第で大きく立場が変わってしまう可能性のある選手と言えるのではないでしょうか。



 とはいえ、今オフにはケンペスが退団、戸島もレンタル移籍となったために、FW候補が少なくなってしまいました。
 特にケンペススーパーサブとして活躍していましたし、退団は大きい影響が出るかもしれません。
 ただ、先日鈴木隆行が加入したため、オナイウにとっては大きな壁となるかもしれません。
 昨年終盤のチームは走力で守備のスペースを埋めていただけに、鈴木隆行は守備固めやパワープレー要員として計算しようとしているのかもしれません。
 そうなると、オナイウは他選手とベンチ枠を争うことになるのでしょうか。


 とはいえ、オナイウに関しては昨年11月26日に行われた天皇杯準々決勝山形戦で久々に公式戦出場を果たしましたが、その試合でもやはりスタメン出場で長い時間プレーしたこともあって、ボールのさばき方や守備など基礎的な技術の課題が見られました。
 そのため、なかなか試合にうまく入り込めず、ゴール前での強さといった本人の特徴もうまく発揮できずに終わってしまった印象です。
 チーム状況に関わらず細かなプレーに関して大きな課題であることには変わりないわけで、来年1年でその課題を改善していって自身の強さをしっかりと出せる選手になっていってほしいところではないでしょうか。