ナムのベルギー2部AFCテュビズへのレンタル移籍が決定

ナム スンウ選手 AFCテュビズへの期限付き移籍について(ジェフ公式サイト)


 今オフ、移籍先を探していたナムの移籍が決定しました。
 ベルギーに向かっていることは自身のFacebookでわかっていたので、欧州のクラブと交渉はしているのだろうなと思いましたが、決まって良かったですね。
 AFCテュビズは、今オフ京都に加入したファン・ジンソンが在籍していたクラブ。
 ナムのFacebookにはAFCテュビズのユニフォームを着た写真が投稿されていますが、ナム以外に若い韓国人選手2人がいる模様です。
 クラブの公式サイトによると、先日仙台などでもプレーした元韓国代表キム・ウンジュンとスカウトとして契約したそうですので、韓国路線を推し進めようということなのでしょうね。


 しかし、国内での移籍ならともかく、欧州へレンタル移籍というのは意外でした。
 若い選手ですし、当初から3年契約だったのでしょうか。
 しかも、2014年6月30日ということで、夏までのレンタルということになります。
 ジャイールのケースを思い出させますね。



 ナムは2013年に、キムと共に韓国の大学からジェフに加入。
 その時のちばぎんカップに出場しいきなりゴールを決めると、開幕戦からスーパーサブとして活躍していきます。
 3月24日の第5節G大阪戦では、初めてスタメンに選ばれフル出場を果たしました。
 トップ下に入って0トップ気味の谷澤をサポートする形で、前線でのプレスや裏への飛び出しにおいて大きく貢献。
 試合結果は1-1でしたがその頃からケンペスは裏抜けが出来ず運動量が少ないという課題がありましたので、谷澤の0トップ・ナムのトップ下の形は可能性を感じる部分がありました。


 その後もナムは、主に2列目でプレー。
 左SHにジャイールが入った試合では、ジャイールが攻撃で自由に中に入ってきたり守備をさぼったりするので、トップ下の位置から左SHに流れて守備の穴を埋めるなどジャイールをサポート。
 また攻撃面では技術もある上に体幹もしっかりしているため、狭いエリアでも前にグッと仕掛けられる強さとキレのある選手だったと思います。


 6月29日の第21節東京V戦では、ジェフでの公式戦初ゴールも記録。
 結局プロ入り1年目は、リーグ戦20試合に出場。
 スタメン出場は決して多くなかったですが、まだ若く町田、大塚、井出など2列目の選手たちと共に、翌年の飛躍を期待されてた選手の1人だったと思います。



 しかし、1年目から怪我が非常に多く、2年目もシーズン序盤から負傷して、長い期間戦列を離れていました。
 関塚監督就任以降も当初は出番がありませんでしたが、ボランチの運動量の面で苦しんでいた9月20日の第32節岐阜戦で、ボランチとしてスタメン出場します。
 ジェフでは主に2列目で起用されていたナムですが、U-22韓国代表などではボランチとして起用されていました。


 確かにフィジカルがあって運動量もあり、パスを展開できる技術や視野もある選手だと思います。
 対人の守備能力もあるため、ボール奪取も期待できる選手と言えるでしょう。
 けれども、危険なスペースを見つけて素早く消す、カバーリングで周りをサポートするといった動きはそれとはまた別の問題だと思います。


 U-22韓国代表での試合もネットで見ることが出来ましたが、展開力はあったもののスペースを消す動きでは一歩ずつ遅れて、守備で周りをサポートするという意味では物足りなさを感じました。
 そういった賢い守備が出来るかどうかという点で、パウリーニョに関しても気になる部分ではあります。
 もちろん経験ではパウリーニョの方が上ですしナムよりは計算できると思いますが、昨年終盤のジェフはボランチにかなりその部分を強く求めていただけに。


 結局、ナムは第33節愛媛戦でも引き続きボランチでスタメン起用されましたが、前半45分で交代。
 代わって入った健太郎が見事に中盤の底のスペースを消す動きで貢献したため、結果的にボランチとしてのナムの課題が浮き彫りになってしまった試合でした。
 関塚監督としては中盤が間延び傾向にある中で兵働より走れてパスも出せる選手としてナムに期待したのでしょうが、結局守備の穴は埋めきれずその後は勇人・健太郎といった守備の計算できるボランチコンビになっていきます。
 その試合後、ナムはベンチ入りの機会すらなくなり、2014年はリーグ戦7試合出場にとどまってしまいました。
 大塚同様、関塚監督は選手への見切りが早い印象がありますね。
 このままジェフに残っても出場機会はないだろうと考え、移籍を決意したのでしょうか。



 昨年の出場機会は限らていましたが、前への仕掛け・展開力などにおいては、非常にセンスあふれる選手だと思います。
 加えて日本人選手にはない体幹の強さ、重心の低さを感じる選手で、技術だけではない強みを感じられる選手だったのではないでしょうか。
 しかし、怪我が多いこと。
 そして、メンタル面の課題があることが、大きな弱点だったと思います。
 ベンチを外れると落ち込んでしまうことが多かったようですし、決定力に課題があったのもメンタル的な弱さがどこかにあったからかもしれません。


 ベルギーへの移籍が決まりましたが、どこでプレーするにしてもメンタル面の課題というのは、どうしても越えなければいけない壁となるでしょう。
 いろいろな経験を積むことは本人にとってもいいことなのかもしれませんが、しっかりと出場経験を得られる移籍先を選んだ方がいいのではないかと思います。
 センスという意味においてはジェフの若手選手たちの中でもトップレベルだったと思いますし、このまま埋もれてはもったいない選手。
 そのセンスをピッチ上で十分に発揮できるように、成長していってほしいですね。