2014シーズンを振り返る 井出遥也編

 2014年の井出にとって、飛躍の年になりましたね。
 井出は2011年にリーグ戦で1試合途中出場を果たしているものの、当時は神戸監督代行が指揮し消化試合となった最終節での出場で、まだ2種登録選手でした。
 サポーターへの顔見せ的な意味もある起用法だったと思います。
 昨年井出は11年以来のリーグ戦出場を果たしたことになるわけですが、その価値は大きく異なるものだったと思います。



 井出が14年初めて試合に出場したのが、3月30日の第5節熊本戦。
 いきなりのスタメン出場ということになったのですが、このチャンスで一発レッドを経験してしまいます。
 そのため第6節水戸戦こそ出場停止でしたが、その後の第6節湘南戦からスタメン出場を続けます。


 しかし、やはり公式戦慣れしていないのか、徐々に連戦による疲労が見られた部分がありました。
 動きが重くなり、運動量も落ち気味で、一時期スタメンを外れることになります。
 けれども、5月18日の第14節札幌戦でスタメン復帰を果たすと、この試合でプロ入り初ゴールを記録。
 5月に入ってから調子を上げていったチームに合わせて、井出もキレのある動きを見せ活躍していきます。



 関塚監督によるリーグ戦初戦となった栃木戦でも、試合開始早々にCKから先制ゴールをあげます。
 その後も好調をキープし、右SHのポジションでスタメン出場を続けます。
 その流れでU-21日本代表候補にも選出されました。


 しかし、9月28日の第34節東京V戦以降、スタメンの座からは遠のいてしまいます。
 その試合からU-21日本代表からは漏れる形となっていた、レンタル加入のFC東京MF幸野が井出に代わって右SHのレギュラーに。
 こうやって選手を1人1人見ても、改めて東京V戦から大きくスタメンも変わって、チームも変化していったことがわかるように思います。
 この試合からチームは運動量豊富でカバーリングのできる選手を多く起用し守備では走ってカバー、攻撃でもカウンターの機会は減りパスをつなぐ方向に変わっていった印象です。



 攻撃には魅力のある井出ですが、守備においては課題も多いと思います。
 単純に局面での競り合いや空中戦などに弱点があるだけでなく、相手がオフザボールで飛び出す動きへの反応が遅れる場面が目立つなど、細かな動きの面でも課題が見られました。
 ジェフは関塚監督になって右サイドの守備にスペースが出来てしまうことが増えたことにより井出の課題が更に際立つようになって、スタメンの座から降格することになってしまいました。


 一方で、攻撃センスに関しては素晴らしいものがあると思います。
 ボールタッチが非常にコンパクトでアジリティもあるので、一歩目で鋭く相手を抜きに行くことが出来る。
 フィジカルや高さなどはないものの、前線に飛び出すコース、タイミングもいいので、ラストパスの受け手としても期待できるところがあったように思います。
 裏を突くスルーパスも出せる選手ですし、相手守備陣の弱点を見極められる目を持った選手なのかもしれません。


 今後はよりパスワークにうまく絡んでいくことで、昨年は1つも記録できなかったアシストの面も期待したいところではないでしょうか。
 パスワークの中でうまくボールを受ける、シンプルに叩くところは叩くといった部分が増えていけば、よりコンスタントに活躍できるのではないかと思います。
 昨年の印象だと疲労が見えると試合から消えてしまうところがあるように思いますし、動きが鈍った時でもチームに貢献できるような選手になることが1つの目標になるのではないでしょうか。



 結局2014年は、リーグ戦32試合に出場し4ゴールをマーク。
 3年間リーグ戦で出場がなかったことを考えれば、立派な数字と言えるでしょう。
 6月末にはA契約条件も満たしたことになりました。
 まだ20歳と若いですし新シーズンでは更なる活躍を期待したいところではありますが、シーズン途中までは完全なレギュラー選手だったものの、終盤にポジションを奪われた流れを考えると、決して楽なシーズンにはならないかもしれません。


 ペチュニク、水野といった攻撃的な2列目の選手を補強したということは、強化部あるいは関塚監督が2列目の選手に物足りなさを感じたという判断なのかもしれません。
 実際、新体制発表会での配布資料では「補強ポイント」に関して「アタッカー、ボランチサイドバック」と答えており、意図的に2列目の攻撃的な選手を補強したということになるのではないかと思います。
 そうなると当然、井出にとっては難しい状況になるかもしれません。


 
 確かにシーズン終盤のジェフは攻撃が谷澤・中村の左サイド頼りになりがちで、そこを封じられると攻め倦む展開になる試合が増えていました。
 しかし、個人的には井出の問題以前に、チームに守備の問題が出ていたため、その穴を埋めるべく守備的な幸野などを起用せざるを得なくなったのではないかと思います。
 守備における全体のバランスを改善できなければ、水野にせよ、井出にせよ右サイドのアタッカー候補を活かすのは難しいのではないかと。
 少なくとも昨年終盤のままでは、どちらの選手も起用しづらい状況になるのではないかと思います。


 とはいえ、どちらにしても井出のライバルが増えたことには変わりありません。
 特に直接的なライバルとなるのは、水野ということになるでしょう。
 井出が身長171㎝、体重63㎏、水野は身長173cmで体重64kgと、体格もほぼ同じ。
 両者フィジカルには課題があって、守備もあまり得意ではない攻撃的な選手。



 唯一違うのは、仕掛けの種類ではないでしょうか。
 井出は一歩目が鋭く、右サイドからだと斜めにも仕掛けられる選手。
 そこからシュート、あるいは飛び出してボールを合わせることもできるアタッカーだと思います。


 一方の水野は、縦への仕掛けが得意な選手。
 右サイドの開いた位置で受けて、どんどん縦へ仕掛けて抜き切らずにクロスを上げる。
 ここ最近は右サイド以外でもプレーしているようですけど、本来は純粋な右サイドアタッカーではないかと思います。



 井出は佐藤祥と共に久々にユースから直接昇格した待望の選手であり、水野もジェフ全盛期に清水商業から加入し水本と共に将来を期待された選手でした。
 ユース卒と高卒、トップ加入までの経緯は違いますが、井出にはどこか水野に似たところを感じていたところがありました。
 どちらもイケメンで人気の高い選手ですしね。


 井出としてはプレースタイルも含め似通った先輩がジェフに帰ってくることになるわけですから、大きな試練ということになるのではないでしょうか。
 先ほども言ったようにクラブとしては、井出などに足りない部分があったと判断されたのかもしれません。
 しかし、攻撃センスという点においては非常に高いものがあり、ジェフでも貴重な存在だと思います。
 ぜひともポジション争いに勝って、ベテラン選手を跳ね除けるほどの活躍を見せてほしいところです。