2014シーズンを振り返る 田中佑昌編

 2013年の田中はパスサッカーを志向するチームの中において、走れて飛び出せる2列目の選手として活躍。
 リーグ戦で37試合に出場し、9ゴールを決める活躍を見せてくれました。
 改めて思い返すと、よくあのサッカーの中でうまくポジションを見つけられたという印象があります。


 2014年も開幕戦でスタメン出場すると、そのままシーズン序盤はレギュラー選手としてプレーしていましたが、5月11日の第13節山形戦以降はスタメンから遠ざかっていきます。
 途中出場でのプレーが多くなり、久々のスタメンとなったのが7月5日に行われた第21節大分戦。
 齋藤監督代行による試合でした。



 齋藤監督代行は縦に速い攻撃を掲げていましたが、これは同じ方向性を示していくことになる関塚監督の就任も見越してのことだったのではないかと思われます。
 そこに2列目から飛び出せる田中が起用されたこともあって、今後のレギュラー候補の1人ではないかとも言われていました。
 しかし、実際には齋藤監督による第21節大分戦以降のスタメン出場はなし。
 関塚監督就任以降は途中出場での出場機会も減少し、控え組主体で戦った天皇杯での3試合にこそスタメン出場を果たしましたが、リーグ戦では途中出場の3試合にとどまる結果となります。
 そして、9月20日の第32節岐阜戦で途中出場するも、試合中に負傷し途中交代となってしまいます。


 その後、怪我から復帰し11月2日の練習試合に出場しましたが、それ以降も公式戦ではベンチ入りの機会はありませんでした。
 リーグ戦の最終節直後に行われた天皇杯の準決勝山形戦では出場機会があるのではないかと思われましたが、この試合でもベンチ入りは果たせず。
 このまま2014年は田中の出番なく終わるかと思われていたのですが、大一番のプレーオフ決勝山形戦で9月20日以来の公式戦ベンチ入りを果たすと、後半40分から途中出場を果たしました。
 こうやって改めて振り返ってもあそこでの田中投入は大きな驚きで、交代枠を残したことも含めて関塚監督自身もプレッシャーの中で迷いがあったのでしょうか。



 結局、2014年の田中はリーグ戦22試合に出場ということで、前年の37試合出場から大きく出場試合数を減らすことになってしまいました。
 そして、リーグ戦、天皇杯ともに得点はなしという結果に終わっています。
 2004年に福岡U-18からトップチームに昇格しプロ入りを果たした田中ですが、ルーキーイヤーにも1ゴールを記録しています。
 それ以降も毎年ゴールを決め続け、ジェフに移籍した年の12年にも8ゴール、13年も9ゴールと活躍しており、ノーゴールに終わった年は2014年がプロ入り初めてということになってしまいました。
 本人にとっては非常に悔しいシーズンということになったのではないでしょうか。


 監督交代の影響もあったかもしれませんが、大きかったのは若い井出の台頭と、シーズン途中からの幸野の獲得ではないかと思います。
 田中は運動量豊富に走ることが出来て守備も計算でき、体を張ってゴール前に飛び込める勇気のある選手だと思います。
 しかし、どうしても足元の技術に関しては課題が少なくなかった。



 クロスに関しては良いボールを上げることが出来るものの、トラップやパスなど細かい技術においてミスが多い。
 トラップやパスが少しずつずれることによって、時間をロスしてしまい、相手の守備陣形が整って、こちらの攻撃のリズムも崩れてしまう…。
 また、上下にアップダウンする動きは活動量も多く攻守に貢献度が高いですが、中盤の中央などに入ってパスワークに絡む動きは少なく、中盤の構成力に関しても計算しづらい部分があったと思います。


 5月以降には若い井出が出場機会を得て勢いに乗っていき、右SHのポジションを確立していくことになります。
 さらに8月には走れて守備でも貢献度が高い上に、足元の基本技術もある幸野をレンタルで獲得し、シーズン終盤には井出からポジションを奪うことになりました。
 これによって、ますます田中の立ち位置が厳しくなっていきました。



 2015年の状況を考えていくと、2014年終盤に課題を抱えていた右サイドの守備で貢献できることや、山口慶のいなくなったSBでもプレーできる部分などがアピールポイントとなるのでしょうか。
 2014年終盤のジェフはSBが絞って守る傾向が強く、特に相手の前線が三枚だとSHがそのスペースを埋めなければいけない傾向が見られました。
 そのため天皇杯3回戦柏戦では6バックのように守っていましたが、その時の右SHが田中でしっかりと後方まで下がって守る役割をこなしていたと思います。


 いわばSHがSBのような動きをするタスクだったわけで、リーグ戦での終盤にそれをこなしていたのが幸野ということになると思いますが、幸野、田中以外でそういったタスクがこなせるジェフの選手は多くないと思います。
 ただし、田中の方がスタミナがあって長いスプリントなどダイナミックな動きが出来るとは思いますが、幸野の方が攻守に器用で上下だけでなく左右も含めて広範囲を守ることができる印象があります。
 それだけに昨年レンタルだった幸野がジェフに残るとなると、田中の状況は厳しい状況になるのかもしれません。


 加えて、2015年には水野の加入も決定。
 タイプは異なるもののポジションは重なる部分がありますし、年齢が水野が1つ上と近いところがありますから、ライバルになる可能性は十分にあるでしょう。
 しかし、田中のダイナミックに走るプレーというのは、チームを盛り上げる面においても大事な要素ではないかと思います。
 2014年は試合出場数もゴールという意味でも厳しい結果となってしまいライバルも少なくないですが、懸命に走る姿勢を見せ続けて結果を残してほしいところですね。
 2015年は田中にとって勝負の年となるのかもしれませんし、頑張ってほしいと思います。