後半40分からの反撃で逆転勝利

 試合の80分くらいは群馬に完敗で、ジェフのいいところを探す方が難しいような試合だったと思います。
 そこから逆転したわけですから、勢いがあるとか"持っている"というよりも、もはや悪運が強いと感じる試合でした…。


 これで負けても、逆に課題を見直すいい機会になるのでは。
 そんな風に思うほど出来のよくない試合だったと思うのですが、そこからの大逆転。
 このまま残り試合、この勢いで勝ち抜けるのか、それともどこかで課題が表に出て壁にぶつかってしまうのか。
 結果が出ているうちに、課題も改善できればベストなのでしょうが、果たして…。
 この試合の価値は、この後の試合で決まるのかもしれません。
■遅攻の形が作れないジェフ
 ジェフのスタメンは前節と同じ。
 スタメンは固定化されて来ましたね。
 ベンチには岡本が久しぶりに復帰。
 また田代、ジャイールが抜けて、戸島、オナイウがサブに入りました。
 これでベンチに、FWを3枚も入れたことになります。
 一方の群馬はこれまで同様、4-4-2で戦ってきました。



 試合序盤はジェフがボールを持ち込む展開。
 しかし、この試合でもサイドまではボールを持ち込むものの、なかなかチャンスが作れません。
 群馬は最終ラインはしっかりとコントロールし、決して極端に引いて守ろうという印象は感じませんでした。
 加えて、中盤のラインのプレスも、厳しいものではありませんでした。


 相手の前への激しいプレスはないので、ジェフがボールを持つことは容易な展開だったと言えると思います。
 けれども、群馬の守備はボールを奪いに激しくくことはなくても、しっかり前を消しにくる。
 多少遅れてでもチェックに行って、一番危険なコースはやらせない。
 特に特徴的だったのが、ジェフの右サイドに対する青木孝太の戻り、そして2トップの一角である平繁のジェフボランチに対するプレスバック。
 ともかく対面の選手が前への侵入を遅らせて、味方選手の戻りを待って相手の攻撃を封じるという形でした。


 その結果、ジェフのチャンスのように見えて、チャンスになりきれないことが多かった。
 そこで素早くパスをつないで相手の守備をずらす、相手のプレスバックの前に崩すという形が出来ず、サイドに回しては大外で縦に仕掛けるという形しかできませんでした。
 相手をサイドの大外に追いやって仕掛けさせる形は群馬の狙い通りだったのでなないかと思いますし、ジェフがボールを持たされていた状況になっていました。
 


 一方で群馬の攻撃も形が作れず、試合は両者停滞状態でした。
 しかし、前半20分過ぎから、ジェフは全体のラインが下がってしまいます。
 それまでは全体のラインが高く、相手ボランチがボールを持つとそこにジェフのボランチが行けるほどの位置取りが出来ていたのですが、ラインが下がったことにより群馬がボールを持つ時間が長くなっていきました。


 前半27分、群馬が中盤で奪ったところからハーフカウンター。
 孝太が山口慶を抜き去り、グラウンダーのセンタリング。
 平繁が足元で合わせてコロコロと転がっていきますが、ゴール左隅を逸れます。
 これが、この試合における両チーム通じての初めてのシュートでした。


 前半34分には幸野がミドルシュートを放つも力なくGKにキャッチされると、そのまま群馬がカウンター。
 ボールを持った孝太が左サイドで長い距離を走り、シュートまで持ち込まれます。
 そこで得たCKをロビーニョが合わせるなど、群馬の方がチャンスを作っていました。



 そして、前半39分には群馬が右サイド奥で粘り、後方のロビーニョにパス。
 そのままフリーでシュートを放つもGK正面。
 前半一番のチャンスだったと思います。
 ジェフから見れば左サイドの奥から1つ戻されてフリーな選手ができ、そのままペナルティエリアに侵入されシュートを打たれたということで、前節の失点シーンと似たような展開を作られてしまいました。
 やはり1つ前への対応が鈍いですね。
■後半40分からの反撃で逆転勝利
 前半は群馬のシュート8本、ジェフのシュート1本で折り返し、試合は後半へ。
 ジェフは後半に入って多少前掛かりになったものの、その分裏を突かれるシーンも目立ち、大きく状況が変わった印象はありませんでした。


 試合が動いたのは後半8分。
 群馬が左サイドからのCK。
 途中出場の金沢が蹴った巻いたボールを、大外の孝太が合せてゴール。
 マーカーは中村だったと思うのですが、孝太にうまく体を入れ替えられて前を取られてしまいました。
 高木の対応も前に出ていくのか、後ろで構えるのか中途半端でしたね。



 失点したジェフは、その直後に幸野に変えて井出を投入。
 後半15分には町田に変えてケンペスを投入。
 前半からパスで崩せない状況が続いていましたので、個人の能力で打開しようということだったのでしょう。


 ケンペスを入れて、サイドからのクロスが増えたジェフ。
 しかし、右サイドからのクロスが多かったですが、なかなか良いボールが上がりませんでした。
 群馬は守備で頑張ることができる孝太を後半から右サイドに移していましたし、前半から中村、谷澤のサイドを警戒していたように思います。
 左サイドのスペースケアをしっかりされたことにより、左からチャンスを作れなかったですね。
 群馬はこの時間、逆サイドはある程度捨てていたのかもしれません。



 また、ジェフは町田が交代したことによって、中盤の運動量が落ち、パスが繋げなくなっていきました。
 ケンペスも町田のようにサイドに流れることはあっても、パス回しは得意ではないので、効果的には機能しない。
 パス回しが非常に遅いので、そこからクロスに持ち込んでも、相手の守備陣は整ってしまっている…。


 後半25分には、勇人に変えて兵働を投入。
 町田を降ろしたことによりパスが繋げなくなってしまったので、兵働を入れてパスをつなごうということなのでしょう。
 相手の疲れも見えたところだったので、ボランチ兵働でも行けると言う判断だったのかもしれません。



 そして、後半30分過ぎから、群馬の運動量がガクッと落ちてきました。
 中盤の守備に送れてすらいけなくなり、ボランチ付近を完全にフリーにさせる状況に。
 それでもDFラインは下げずに守っていたので、ジェフとしては攻めやすい展開になっていったお思います。
 後半33分には兵働のロングキックを森本が落とし、ケンペスがシュートもGK正面。
 ケンペスが前を向いて仕掛ける形で、ゴールを狙っていきます。



 そして、後半41分。
 右サイドから中盤の位置でボールを受けたケンペスが反転。
 縦パスを出すも相手がカットしますが、再びケンペスが拾って、そのままミドルシュート
 ケンペスの一発で同点とします。
 最初に簡単に反転させてしまった相手の問題もありますが、あのミドルシュートは流石ケンペス
 DFは前に構えていましたが、その間を縫ってのゴールでした。
 


 失点直後、群馬は孝太に変えてカイオを投入。
 本来は青木良太が投入予定だったようですが、失点を受けて変えた模様です。
 しかし、どちらにせよ群馬の選手たちは足が完全に止まっていましたし、3枚目の交代が遅すぎたように感じますね。


 試合展開から考えると、ジェフからすれば同点でも御の字かと思っていたのですが、後半ロスタイム。
 左サイド奥の谷澤からのボールをペナルティエリア角の前でケンペスが受けると、クロス気味のボールを出します。
 これが相手DFに当たってオウンゴール
 クロスの質が良かったようには思いませんし、アバウトに蹴り込んだボールだったと思うのですが、ラッキーな形でのゴールだったと思います。
 この2ゴールでジェフが2-1で勝利ということになりました。
■運も味方につけての勝利
 ジェフからすれば、運も味方につけての勝利でしたね。
 最後の約5分間で、試合を決めたことになります。


 群馬としては、「点を取るのが早すぎた」パターンだったのかもしれませんね。
 守る時間が長くなりすぎて、耐えきれなかった。
 それでも終盤足が止まった状況で引いて守れば凌たようにも思えたのに、それもしなかった。
 そして、何よりもケンペスを自由にさせ過ぎましたね。



 ジェフとしては、収穫はケンペスが調子を上げてきたことでしょうか。
 現状のチームを考えると、今からスタメンに割って入るというのは難しいようにも思いますが、スーパーサブとして武器になる可能性は見られたのかもしれません。
 兵働に関しては調子を落としていたというよりも、ポジションがなくなり出場機会を失ったという面が大きいと思います。


 しかし、両選手共に使い方次第では活躍できるということは、見せてくれたということになると思います。
 明確な武器のある二選手なだけに、うまく使っていきたいところではないでしょうか。



 とはいえ、その2人が活躍しての戦い方は、あくまでもオプションということになるでしょう。
 オプションをうまく使うことも重要とは言っても、理想からすればメインの戦い方で良い試合をすること。
 そういう意味では、課題も大きい試合だったと思います。


 しかも、今回の試合で浮き彫りになった課題は、今までの試合にも見られたもの。
 相手が前に出て来てくれれば、相手の隙を付くことはできるものの、相手が慎重に守ってくると攻撃の形すら作れない。
 森本に関しても、やはり簡単に飛び込んでは来ない。
 谷澤、中村のサイドに関してもスペースを与えないことで、チャンスを作らせない。
 しっかりとジェフの攻撃を、研究して来た印象でした。


 守備においても全体ラインが高い状況ならいいのですが、その時間はあまり長くもたない。
 ラインが下がると中盤に穴ができてパスを回され、一つ前の選手へのケアがどうしても疎かになる…。



 これがこの試合だけなら、オプションのケンペスと兵働を使って切り抜けたで良いと思います。
 しかし、課題の根本は変わらず以前からあるものだし、他チームもこの試合でのジェフの苦戦はチェックしてくるでしょうから、似たような対策をしてくる可能性は十分あり得る。
 それを考えると、勝ったとはいえ、不安も残る試合だったように思わなくもありません。


 とはいえ、課題が浮き彫りになった上に、勝点3も拾うことができた。
 あの出来で油断するような選手、関係者はいないと思いますし、さらに結果も残せたのだから、そう考えればよかったのかもしれません。
 今後に向けて、更なる改善を期待したいところだと思います。