ビアンキの事故原因と今後の対策
鈴鹿で起こってしまったジュール・ビアンキの事故。
いまだビアンキの状態は意識不明で、三重からも移動できない状態となっているようです。
これに対して、メディアや関係者は様々な事故原因や対策などを報じてきました。
ただ、的外れなものも少なくなかった印象です。
コクピットをガラスで覆うクローズドコックピット案も以前から致命的と指摘されている「事故後にドライバーを早期にマシンから降ろせない可能性がある」ことに関しては何も話が進んでいないし、クレーン車を出すべきではなかったという意見に関してもマシンをどかしていなければ更なる事故が起こる可能性があった。
レースを開催すべきではなかったという話も出ていますが、それまでは大きなクラッシュもなく順調に進んでいたわけだし、開始を1時間早めたところで根本的な問題が解決するようにも思えないコンディションでした。
ウェットコンディションに関しては「あれくらいは珍しくない」というのが、キミ・ライコネンや小林可夢偉などの意見で、実際そこまで難しい状況には見えませんでした。
数多く指摘されていた事故現場にグリーンフラッグが降られていたという話も、そこからイエローフラッグが解除されるという意味であり、ビアンキがコースアウトしたのがイエロー区間だったことに変わりはありません。
どうも事が事だけに、レースに詳しくないメディアなども様々なことを報じているようです。
FIAは1週間後に事故の詳細を発表。
迅速な発表で、納得のできる内容だったと思います。
焦点はコースアウトした区間で振られていた、"ダブルイエローフラッグ"でしょう。
ただのイエローフラッグではなく、ダブルイエローは「いつでも停止できるスピード」まで減速しなければならない。
日本の道路交通法で言うところの"徐行"ということになります。
ビアンキは200kmものスピードでクレーン車に突っ込んだという発表ですので、徐行レベルまでスピードを落としていなかったことになります。
冷静に判断すれば、そこが大きな原因ということになると思われます。
ただ、このダブルイエローに関しては、今までのレースでも今回もあまり厳守されていませんでした。
FIAもこのように話しています。
「多くのマシンがダブルイエローフラッグ区間を通過した。それほど減速しなかったマシンもあれば、かなり減速しているマシンもある。彼が他の者に比べてどれだけ減速していたのか、その詳細を突き詰める必要はないと思う。データは十分あり、彼はスローダウンしていたが、それは程度の問題だ」
これまで、通常のイエローフラッグに対しても曖昧な印象があり、「減速さえしていればよい」といった程度にしか扱われていなかった印象があります。
あえて責任問題まで考えるとすれば、それを野放しにしていたF1村全体の問題とも言えるのかもしれません。
これを受け、FIAはイエローフラッグ厳守に向け、ルールの変更を検討しているようです。
強制的にマシンを遅くするシステムも考えているようですが、それは危険も伴うのではないかと思われます。
来週末のアメリカGPでは、早くも一部ルールのテストを行う可能性が議論されています。
現在セーフティーカー導入時には混乱を避けるため、セクターごとに既定のデルタタイムで通過しなければならないといったルールがあります。
そのデルタタイムをイエローフラッグにも採用するというもの。
ああいった事故が再び起きないように、今回のルールがうまく機能することを期待したいところです。
そして、ビアンキの1日も早い回復を改めて祈りたいと思います。