ジェフレディース上村総監督をセクハラ行為で解任

 本日は更新をお休みしようと思っていたのですが、こういったニュースを取り上げずサッカーだけの話をするというのも違和感が残ります。
 それだけ解任された上村監督だけでなく、クラブにとっても大きな出来事だと思います。
 非常に残念というか、とても悲しいですね…。
 こういったことは文章を打っていても辛いところがありますが、ひとまず話をまとめたいと思います。



 昨日の朝、スポニチ報知によって、ジェフレディース総監督でU-18監督も務める上村崇士がセクハラ行為を行い、解任されるというニュースが報じられました。
 報知には「被害を受けた選手が10代」であるということも書かれています。
 そして、報道の通り昨日昼、ジェフによる会見が開かれ、弁護士の調査によって"重大なセクハラ行為"が確認されたとして、上村総監督を解任することが発表されました。

島田亮社長は「情報が入り、社外の弁護士に依頼し調査したところ、セクシュアルハラスメント行為が認められた。この事態を重く受け止め、契約を即時解除することを決定した」とコメントした。(毎日新聞


 具体的にどのようなことが起こったのかはもちろん公表されていないわけですが、クラブがアナウンスしている"重大なセクハラ行為"とはいかなるものなのか。
 そのようなニュアンスをあえて選んだということは、明確に大きな事件が起こったということなのかが気になる部分でした。
 そんな中で、読売はこのような記事を書いています。

上村総監督は、飲酒した際に当該女性選手を2人きりの場所に呼び出し、セクハラ行為をしたという。セクハラ内容については、未公表。発表によると、今年8月、女性選手から担当コーチに被害の申し出があり、クラブが調査した結果、セクハラと認定。(読売新聞

 twitterなどでは朝の段階で「相手や周囲がセクハラと取るかどうかの難しさもある」という話も数多く出ていましたが、これを読むと上村は飲酒している状況であり既に指導の域は越えているわけで、その上で2人きりの場所に呼び出したというのであれば、その時点でセクハラと取られておかしくないでしょう。
 しかも、時事通信社によると「今年に入ってから選手1人を呼び出す形で数回、セクハラ行為をした」との説明だったようです。


 スポーツという縦社会ができやすい構造の組織において、女性選手を男性指導者が指導する状況となれば、セクハラという行為は最も気を付けるべきことの1つではないかと思います。
 本人に関しては、言語道断。
 周囲も含めて、細心の注意を払わなければいけなかったはずです。
 非常に軽率というか、あってはならないことだと思います。


 一方でこのような記事も。

会見では上村氏がセクハラ行為を認めたのか、否認したのかについて質問が出たが、出席した島田社長、調査をした弁護士ともに明確に回答しなかった。クラブ側の説明では、8月中旬に被害者から女性コーチに対して、セクハラ被害の申し出があった。8月下旬に事態の重大性を考慮してコーチが被害者の了解を得た上でマネジャーに報告。被害状況をヒアリングした。8月29日に島田社長とレディース部門担当の取締役が報告を受けて調査実施を決定、顧問関係のない外部の弁護士に調査を依頼した。9月11日に依頼を受けた弁護士が「セクハラ行為があった」という事実を認定。12日付でクラブは上村氏との契約を解除した。島田社長は自身の役員報酬20%を3カ月自主返納することを明らかにした。(デイリー

 事が事だけに、誤解なきよう長めに引用させていただきますが。
 わざわざ弁護士を用意したということは、起訴に発展する可能性もあるのかもしれません。
 相手が未成年となれば示談となる可能性も十分あるのでしょうが、どちらにせよ被告人の発言の意味も大きくなるため、明言をさけたということなのでしょうか…。



 しかし、現場に行かれた西部謙司氏も「モヤモヤした感じの会見だった」とおっしゃっているように、出来る限りクラブには今回の件をオープンにしてほしかった。
 デイリースポーツにもこのように指摘されています。

島田社長は「指導者のセクハラは断じて許せない」とし、謝罪したが、被害者への配慮を差し引いても、どの程度の行為が「重大なセクハラ」にあたるのかといった争点が明らかにされず、不明瞭な点が残った。(デイリー

 具体的な内容はともかくとして、"重大な"という説明をしたことによって余計に話を複雑にしている印象もありますし、被害者への配慮に欠けた説明だったようにも思わなくもありません。



 今回は普段のようにサポに言い訳をするような出来事ではなく、社会に向けてスポーツクラブとしての姿勢が求められるものです。
 にもかかわらず、クラブのリリースも必要最低限の内容となっていますし、これではなるべく内情を隠そうとしているのではないかと疑ってしまいます。
 もちろん被害者の気持ちが第一ですし、公にはできない部分があることも当然理解できます。
 何もかも明かせばいいというわけでもないですが、せめて記事になっている記者会見での内容は全て責任を持って公式に文章化してほしかったところです。
 このような場合、なるべく全ての情報を明らかにしようとする姿勢こそが、社会に向けての誠実な対応と言えるのではないでしょうか。
(なお、日刊だけは「腰に手、不快発言も」と具体的な内容を伝えています。「弁護士によると」と書かれているので個別に取材したのか。この記事もクラブの対応がはっきりしないため、どう捉えていいのかわらかなくなりますね。)


 特に気になるのは、第一報を報じたスポニチの内容。

08年にはチームを1部昇格に導いたが、一方で女性選手へ過度な接触などが目立ち、13年シーズン終了後に退任。今季からユースチームの指導をしていた。関係者によれば、行き過ぎた指導に対して、上村氏は「愛情表現」と説明したというが、千葉はスポーツ界のセクハラ問題に対して厳しく対応するという方針のもと、指導者として実績のある同氏に対して処分に踏み切った。

 今回の件も「今年に入ってから数回」もセクハラが行われていたとのことですし、セクハラ行為やそれに近いものが常習的に行われていた疑いも出てくるのではないでしょうか。
 もし以前からそういったことがあったのであれば、当然クラブ側にも大きな責任問題が出てきます。
 前からクラブがそれを認識していた上で、トップチーム監督解任後もクラブに残しU-18を指導させた上で今回のような問題が起こってしまったというのであれば、「クラブにも罪がある」といわれてもおかしくないように思います。
 ましてや昨年はスポーツにおけるセクハラ、体罰問題が大きな話題になっていた時期だったわけで、その時期にこの件を放置していたのであれば、社会的にも許されるものではありません。
 また、もしセクハラが起きていたとして、クラブが「知らなかった」としても監督不行届として大きな問題となるでしょう。


 今回の会見では、そのあたりは明らかにされなかったようです。
 以前からセクハラがあったのかどうかは調査が必要だとしても、クラブの幹部が知っていたかどうかはすぐにでも聞きだせる内容なはず。
 そこだけでも、はっきりさせてほしかったところです。


 報道によって社長の役員報酬返納が明らかになった事に関しても、非常に強い違和感を覚えます。
 今に始まったことではないですが、このクラブはどうも内部ばかりを見ているところがあるように感じます。
 何のための処罰なのか、誰に向けてのケジメなのか。
 もちろん、親会社やスポンサーも大事なのはわかります。
 けれども、今回はそれだけで納まる問題ではないはずです。



 今回の件に限らず以前からジェフという組織は非常に内向的な姿勢で、問題を内部だけで片付けようとする悪しき古き体質がなかなか抜け出せずにいる印象です。
 例えばとして鈴木監督解任時にも結局誰が監督解任を決めたのかはっきりしないまま終わっていますが、それでもそれはサポに対しての問題で済んでいたのでまだよかった。
 けれども、今回は一般社会レベルの大きな問題ですから、今までのようには済まされない。
 不誠実な対応と取られれば、クラブの社会的地位を大きく落とすことに繋がります。
 今まで生温いと思われても仕方ない対応が許されてきたからこそ、今回のような大事になっても変わらず今まで通りの対応になってしまっているところがあるのではないでしょうか。



 今回の件でジェフのトップチーム・レディースチームに関わらず、スポンサーやファン・サポが離れる可能性、未来のスポンサーやファン・サポに敬遠される可能性はもちろんのこと、選手獲得の面などにおいても問題が出る可能性があるでしょう。
 ジェフに限らず、女子サッカーなどへの社会的な影響なども考えられるかもしれませんし、なでしこリーグにおいても問題視されるかもしれません(なお、リーグはこれを受けセクハラ対策委員会を発足するようです)。
 そして、何よりも被害者への様々な影響が非常に心配です。


 ともかく、クラブ内でこのようなことが起こった以上はクラブの責任問題も問われることは間違いないわけで、当人もクラブも含めて真摯な対応を行い、今後同じようなことが二度と起こらないよう再発防止に努めてほしいところだと思います。
 そして、企業としての社会的責任を果たすためにも、今回の問題に対する最終調査報告を後日明らかにするべきではないかと私は思う…わけですが、これまでのクラブを見ていると、この件はこのまま終わらせる可能性が高いようにも思ってしまいます。