サイドアタックを封じられ0-0の引き分け

 夏休み期間ということで、いつもとは違う時間帯のアップとなりました。
 たぶん明日からは通常通りの更新時間になるはずですので、よろしくお願いいたします。
 まぁ、夏休みに限らず日曜夜の試合になると、なかなかゆっくり試合を見る時間がなくて悩ましいところはあるのですが…。


 まず17日に行われたジェフ対熊本の前に、16日にはジェフレディース対仙台戦が行われました。
 エキサイティングシリーズ上位リーグ入りをかけた大事な試合だったわけですが、ジェフレディースは見事2-0で勝利し6位で上位リーグ進出となりました。
 ここで終わりではないですが、ひとまずおめでとうございます。
■サイド守備を攻略できず
 さて、ここからは男子トップチームのお話。
 井出が前節負傷退場したジェフは、左SHに山中、右SHに谷澤を起用。
 また、1トップでケンペスをプレーさせ、トップ下に大塚を置きました。
 やはり森本の得点力の問題もあって、前線の形を悩んでいるということでしょうか。


 前半6分にはその大塚がチャンスを作ります。
 右サイドからの展開で、ボランチの兵働が大きく逆サイドへ展開。
 山中がボールを持つと大塚が斜め前に走りこんでボールを受け、山中がワンツーで受けてシュートという形を作りました。
 大塚はGW明けから鈴木監督体制でレギュラーを勝ち取りましたが、今年に入ってこうやって斜め前に走りこんで受けるプレーができるようになったことが、1つの成長といえるように思います。



 対する熊本は巻が、キャプテンマークを付けてのスタメン出場となりました。
 前半14分にはジェフの左サイドでボールをカットされてカウンター。
 そのまま藏川がボールを持ち込んで、スルーパスを巻がシュート。
 ジェフからすると、ゴール右隅をかすめる危ない展開でした。


 巻の起用は守備面を意識した狙いもあったのではないでしょうか。
 しかし、ジェフのCBがボールを持っても、無理に追ってくることはありませんでした。
 熊本の2トップはジェフのボランチをケアし、CBからボランチにボールを入れさせない。
 また、サイドの守備も興味深く、SHとSBがサイドの守備を徹底していた印象でした。



 そして、低い位置で中村がボールを持った時には、あえてアーリークロスを蹴らせるような守り方をしていたようにも見えました。
 アーリークロスなどが出れば確かにゴール前にボールは行くのだから、チャンスのようにも見えなくはない。
 しかし、実際にはFWは斜め後ろからのボールに競り勝ってシュートまで狙うという難しいプレーを求められるし、偶発的な攻撃にしかならない。
 サイドをえぐってのクロスに比べて長い距離のクロスになるから、滞空時間が長く守りやすい。
 熊本のDFは引き気味で守っていた上、ケンペスは裏を狙える選手ではないから、アーリークロスへの対応は見た目以上に楽だったのではないかと思います。


 では、どのような守備の意図があったかというと、サイドを広く守りながら、SHは横をケアしてボランチに展開させない。
 SBは縦をやらせないという狙いで、サイドにボールを追いやっていくと。
 そうやってボールをタッチライン際に追いやり、アタッキングサードまでいったら潰しにかかると。



 ジェフはボールを持つ時間が長かったものの、マークがついた状況のままサイドの大外でボールを持ち込むばかりで、なかなかチャンスを作れない状況になっていきました。
 基本的にジェフの攻撃は、関塚監督になってから中央突破は作れておらずサイドからの展開が多い。
 熊本はそれならSHとSBがサイドの守備に専念して、絞ることよりもピッチを広く守ろうと。
 また中央では山口智からサイドへ大きく展開することも多いですけど、だからと言ってそこがすぐ決定機になることないのだから、無理に智を追うことはなく、FWはボランチをケアすればいい。
 CBからの細かなパスワークも、今はなくなりましたからね。
 あとはセットプレーが得点源となっているわけですけど、そこで巻というところもあったのかもしれません。



 サイドからのクロスが出せないジェフは、徐々に失速。
 前半の20分頃から中盤でパスを奪われる展開が増えて、熊本がハーフカウンターでチャンスを作るようになっていきました。
 ジェフはサイドでのパスワークしかできていませんでしたから、そこを封じられてボールのまわしに迷いが出てきてしまいました。


 久々にジェフのチャンスとなったのが、前半32分。
 大塚が左サイドに開いてサイド攻撃をサポートすると、一度戻して中村がフリーになったところで、裏へ走りこんだ山中にロングパス。
 大塚が受け直して、オーバーラップしてきた中村が受けてクロス。
 クロスは合わなかったものの、こぼれ球をジェフが拾って最後は大塚がシュートを放つもGKがセーブ。
 この試合で、ようやくクロスからチャンスが作れたシーンでした。


 しかし、38分にはジェフDFが浮き球のスルーパスで裏を取られ、仲間がダイレクトシュート。
 オフサイド判定でしたが、危険なシーンでした。
 熊本は巻がスタメンではありましたが、簡単にロングボールを蹴るような攻撃ではなかったですね。 
■熊本の決定機もゴールは決まらず
 後半立ち上がり。
 熊本右サイドから、斎藤がポストプレーで仲間がシュート。
 シンプルですが、勢いのある展開でした。
 

 後半スタートは熊本ペース。
 後半2分にも智がパスの出し所に迷い、ボールを失い、カウンターでクロスを上げられるところまで作られてしまいます。
 その直後にもジェフは左サイド低い位置でボールを奪われ、巻のポストからサイドをえぐられてクロスと危ないシーンが続きます。
 熊本は前節の試合でも見られましたが、サイドから斜め前のFWへくさびのパス、ポストプレーでさらに斜め前方に展開し、サイドを縦に突破する攻撃が1つの形として作れている印象です。



 後半10分、大塚が左サイド寄りの相手MFとDFの間で受けて、中村のクロスを演出。
 その直後にはカウンター気味に山中が後方からDFの前でボールを受けて、そのままミドルシュート
 このあたりの時間帯から熊本の選手たちは徐々に運動量が落ちていき、ラインが押し上げられなくなります。 


 それでも後半17分には、交代した直後の中山が中盤で齊藤に預けて前にダッシュ。
 齊藤は前方の澤田にパスを出すと、澤田は1タッチで走りこんでいた中山に落とします。
 対応したキムが何とか中山を止めましたが、ジェフとしては危ないシーン。
 中盤で簡単にパスをつながれたところなど、ジェフの守備の甘さが目立ちます。


 後半20分には熊本のロングボールを巻が競り勝ち、熊本が右サイドでつないでクロス。
 フリーで中山がクロスを上げると、澤田がニアでヘディングシュート。
 澤田もフリーな状況でした。



 苦しい展開が続くジェフは兵働と山中を変えて、勇人と森本を投入。
 2トップにして左に谷澤、右に大塚とポジションを変えます。
 後半25分には勇人、大岩、谷澤とサイドで縦につないで、谷澤がグラウンダーのクロス。
 それを大塚が繋いで、最後は勇人がシュートを放ちますが枠外。


 その後は両チーム中盤が間延びしていきます。
 前半30分には大塚に変えて、新加入の幸野を投入。
 幸野をトップ下、左に谷澤を置いた変則的な4-2-2-2のようなフォーメーションだったのでしょうか。
 その分、どうしても相手左SBのエリアは空きがちでしたが、無理にでも攻撃的にという意図だったのか。
 しかし、どうしても勇人が広範囲を守らざるを得なくなり、そこで後手に回ることが多かったですね。



 後半37分。
 熊本左サイドの攻撃。
 スローインからポストプレーで、飛び出してきた齊藤が完全にジェフDFラインの裏を取ります。
 そこから逆サイド大外から走りこんできた藏川が完全にフリーでシュートを放つも、岡本がセーブして得点はならず。


 後半39分。
 ジェフが中盤でボールを奪われると、ジェフの右サイドから熊本にパスをつながれます。
 ジェフは右SHがいない状況ですからその位置で相手にボールを持たれ、大岩が前に釣り出されます。
 大岩が前に出て開いたスペースに中盤の選手が走りこむと、勇人が埋めざるを得なくなり、今度はボランチがいなくなる。
 そのボランチの位置から中央にパスをつないで行って、ポストプレーを絡めて攻撃を作られます。
 最後は飛び出していった高柳がゴールに迫りますが、ゴールのわずか左を逸れて、ジェフの失点はま逃れました。


 幸野、森本を投入してパワープレーのようになったジェフは、岡本からのボールを森本が粘って最後はケンペスがシュートを放ちますが決まらず。
 その直後には熊本がカウンターでつないで行って、最後は高柳がミドルシュートもGK正面。
 今度はジェフがケンペスの右サイドでの強引なドリブル突破から幸野がシュート…と、最後は打ち合いの展開となっていきました。


 ロスタイムには幸野が中盤で少しタメて、右サイドの大岩に展開。
 大岩が幸野にクロスあげてシュートも決まらず。
 その後、熊本が攻め上がりますが、クロスは大外に外れてしまいます。
 そのままスコアレスドローで試合終了となりました。
■この引き分けの評価は今後次第
 0-0での引き分けではありましたが、決定的なチャンスは熊本の方が多かったのではないかと思います。
 熊本からいえば運のない。
 ジェフからいえば、相手の最後の精度に助かったと言える引き分けではなかったかといった印象です。



 特に前半、熊本の守備にはまってしまったところが、大きかったのではないでしょうか。
 熊本としてはそこまで徹底的なジェフ対策をしてきたわけではなく、シンプルにクロスが武器のチームに対して「簡単にサイドをやらせない」、「タッチライン際にボールを追いやる」というセオリー通りのやり方で、守ってきたのではないかと思います。
 そうなったジェフはサイド攻撃が作れなくなり、中央からの形も作れておらず、攻撃の手がなくなってしまったと。
 後半は相手の運動量も落ち、サイドの守備も遅れがちだったので徐々にチャンスが作れましたが、それでも熊本がしっかり攻撃を作っていたのを見ると、大雑把な攻撃が多かったように感じてしまいました。
 特にこの試合では出し所に迷って、遅れがちにつないだパスを奪われるというシーンが目立っていました。


 そこで谷澤や兵働の個人技での突破に頼りたかったところではないかと思うのですけど、この試合では二人のコンディションがあまり良くなかったように思います。
 谷澤に関しては右SHで起用されたことも大きかったようには思いますが、左に移ってからも決定的なプレーはできなかったですし、単純にあまり動けていなかったように思います。
 ビルドアップの兵働、仕掛けの谷澤に頼るところが大きくなっているので、2人のコンディションが重要ではないかという話をしてきましたが、ここでその不安が出てしまった印象です。
 これが単純にアウェイゲームでこの試合だけなのか、夏の疲労が蓄積されて毎年成績の悪い9月が近づいてきているからなのか…といったところが、気になるところです。


 サイドを封じられた攻撃だけでなく、守備でも相手のパスワークを封じられなかった印象で。
 うまく前からパスコースを消せない、追いかけられていないこともあって、中盤の守備が機能せず、ポストからの展開を何度も作られていました。
 特に両SHの裏を意図的に狙われていた印象もあり、試合終盤にはいなくなった左SHのスペースを使われていました。
 最終的にCBが奮闘して守った印象もありますが、それ以上にことごとく相手のシュートがGK正面だったことや、ゴールポスト横を外れていたことが多く、熊本の決定力不足に助けられた面の方が大きかったように思います。



 まぁ、このあたりが最近勝ちきれていない熊本の勢いということなのでしょうか。
 逆に言うと内容は悪くとも引き分けられたジェフも、まだ勢いは残されているとも考えられるのか。
 この引き分けがどう評価されるかは、今後の試合にかかっているとも言えるのかもしれません。