頂上決戦らしい試合も力及ばず

 なんとも、熱い試合だったんじゃないでしょうか。 
 パスワークをウリとする両チームの対決といえると思うのですが、綺麗とか楽しいとかと言うよりも激しく熱い試合で、ある意味で頂上決戦らしい試合だったのかもしれません。
 非常に気温が高く、連戦ということもあって、自分たちのサッカーはやりきれなかったかもしれませんけど、それでもだれることのない死闘だったかなと。


 その中で、なぜジェフは勝てなかったのか。
 どこが足りなかったのか、ということになりますが…。
コーナーキックから失点
 ジェフは前節から武田に変えて渡邊を起用してきました。
 以前と変わらず、積極的なオーバーラップを見せてくれて、また武田とは違う良さを見せてくれたお思いますけど、やはり渡邊の場合は受けた後ですね…。


 試合序盤はパスをつなぐ両チームの主導権の握り合いといった感じ。
 監督の変わっていない東京Vは前年同様、ボランチやCBで細かくパスをつないで行って、そこからサイド奥などへのロングボールも絡めて前にボールを運んでいく感じ。
 ジェフはパスをつないで行って、兵働に前を向かせてスルーパスというのが一番の狙いかなぁと思います。


 一進一退といった感じでしたが、前半12分。
 東京VのCKから西がボールを蹴り、杉本がヘディングで先制ゴール。
 失点数の少ないジェフですが、CKからの守備は相変わらずの課題で。
 今回もゾーンの隙を狙われて決められてしまいましたが、なぜゾーンにこだわるんでしょうね…。
 これまでにも失点には結びつかなかったシーンも含めて、フリーでヘディングシュートを放たれるシーンなどが目立っていると思うのですが。
 もちろんゾーンでも、しっかり課題を解決してくれればいいのですが…。



 その後も状況はあまり変わらなかったですが、どちらかと言えば東京Vが押し込み、ジェフがカウンターを狙う時間帯が多かったかなぁと。
 やはりジェフはバランスよく守れている状況ならよいのですが、一度高い位置までボールを運ばれると、そこに集まる守備をしますから全体的に引き気味になってしまうことが多いかなぁと。
 一方の東京Vの方の守備は、ジェフをしっかり研究してきたのか、無理にボールを奪いには来なくても、縦へのパスコースを消すことでジェフのビルドアップを難しくしてきましたね。
 基本的にCB二人などからの縦パスが攻撃のスイッチだったりするわけで、そこをケアされると難しくなる…と言った感じですね。
 サイドの守備に関してはちょっとギャップがあったような気もしますが、全体的なバラスは安定していた印象です。


 前半途中からはジェフが積極的に、前に出ていきます。
 FWだけでなくウイングの田中なども高い位置を取り、そこにボールを出していく形。
 ただ、東京VのCBも粘り強く、最後のところでしっかりと凌いできましたね。
■後半からロングボール展開へ
 後半も同じように均衡状態でしたが、試合状況は少しずつ変わっていきましたね。
 昨日は非常に湿度が高く、気温も高くてサッカーをする上では厳しい状況だったと思います。
 そのため、後半からは両チームロングボールが増え、前からの守備も少しずつ減り、結果的にゴール前でのプレーが増えてきました。
 ジェフもチャンスはありましたけど、どちらかと言えば東京Vのほうが優勢だったのではないでしょうか。 


 東京Vの守備は球際が激しく、疲れてきた状況でも大事なところで外せなかったですね。
 基本的に東京Vはマンマークの意識が強いため1人1人がしっかりと責任を持って守っている印象で、逆にジェフのほうは組織的に守り複数人で囲む守備を狙っているだけに、こういう展開になってくると辛いのかなぁと。
 CKなどセットプレーの守備でもそうですけど、組織として上手くいっているときはいいんだけど…といったところがあるのかもしれません。
 そういえば、1人1人に責任を与えてタスクをはっきりさせ、集中させるなどの理由でオシム監督はマンマークを好んでいたはずでしたね…。



 後半27分。
 ジェフがPKを与えてしまい、阿部がしっかりと決め2-0。
 渡邉がエリア内で相手選手を倒してしまったわけですが、疲労もあったのでしょうが、完全に足がかかってしまいましたね。
 その前後、ジェフDFラインは東京Vのスピードのある前線の選手の裏を突く動きに、追い付けなくなっていました。


 ジェフは後半39分にオーロイを投入。
 代わりに渡邊を交代するという、スクランブルな展開に。
 オーロイにロングボールを上げて、深井などが積極的にボールを拾ってシュートを狙っていくといういつか見たような風景に。
 まぁ、ここまでくると、戦術云々といった状況ではなかったですね。


 そして、後半43分、オーロイがロングボールを頭で受けた後、しっかりと足元で収めてそのままシュート。
 これが決まって2-1となります。 
 一矢報いた形となったジェフですが、もう1点は決まらずジェフの敗戦となりました。
■ディテールに対する意識
 連戦の影響もあったでしょうし気候も非常に蒸し暑く、試合が進むにつれて疲労はあったと思いますし、全体的に動きは落ちていったと思います。
 しかし、両チームともに気持ちがこもっていて、大事なところではしっかりと走って体を張っていました。
 だからこそ、暑い中でもだれた印象はあまりなかったのかなぁと。
 東京Vとしても首位に立つために、ジェフにとっても首位をキープするために重要な試合だったわけですからね。


 しかし、その試合になぜ勝てなかったのか…というところになります。
 両チームの差はあまり大きくは感じず、どちらが勝ってもおかしくはない試合だったとは思います。
 細かなことを言えば、一点に集まりすぎてしまう守備戦術の問題だとか、DFラインのスタミナ不足・スピード不足だとか、守備時の球際の激しさだとか、サイドの守備だとか、ジェフの攻撃陣のスピード不足だとか、クロスの質の問題など、様々感じる部分はありましたが、そのあたりを1つ1つ言っていてもきりがないわけで。
 まぁ、それらの解決し切れてこなかった問題(そして、解決せずとも問題はなかったところがある…)が、出た試合ともいえるのかもしれませんが。



 難しいところですが、大きな視点に立って考えるとすれば、ディテールに対する意識の部分なのかなぁと。
 ゾーンでのセットプレー時の守備もそうだし、押し込まれた時の対応だとか、逆に相手ゴール前での細かな動きだとか。
 そういったところを少しずつでも詰めていかなければ、ここから上にはなかなかいけないのかなぁと。


 そこを突き詰めることができずに、FWの補強などでなんとかしようというのであれば、なかなか進歩は期待できないかもしれないですね。
 もちろん、チームとして少しずつは良くなってきているとは思いますし、この試合のジェフのサッカーも決してひどい内容ではなかったとは思いますが、だからこそここからもっともっと頑張らないと、「次にやった時は絶対に勝つ!」と言えるレベルにまで達するのは簡単ではないのだろうなぁと。


 昨年1試合目はしっかりと勝ったFC東京相手に、2試合目にはたやすくひねられてしまったように、ここからもしっかりと強い意識を持って、成長を目指すことが大事なんだと思います。
 GW前の底を乗り越えて順調に勝ち星を伸ばし、首位に立ったところでの頂上決戦。
 ここで自分たちが主役に立つにしては、まだ力不足だったということがわかってしまったわけで、ここをターニングポイントにしてもう一段レベルアップしていきたいですね。