麻薬のようなハイプレッシャー状態
試合とは直接関係ないですが、15日にベトナムでの親善試合に出場しゴールも決めている横浜FCのカズは、この日もスタメン出場。
シーズン中の水曜日に親善試合に出場。
しかも、海外での試合だったのに試合に出てしまうところが、凄いところですね(笑)
それを周りが許せてしまう状況というのも、重要ですよね。
何というか寛大とも言えるのかなと思うのですが。
もちろん”三浦知良”という大きな存在がそれをさせているんでしょうけど、そういった存在を許せる部分というのも時には必要な気がします。
実際、今回の親善試合だって、中田英寿や松井大輔やパク・チソン、チョン・テセなどそうそうたる面々が出ているにもかかわらず、日本のスポーツ番組では「カズが親善試合でゴールをあた」ことばかりを取り上げていましたし。
ジェフはどうだったのかな…とか思ったりして。
誰のことかは明記を避けますけど、ジェフは良くも悪くも真面目ですからねぇ…。
その悪い方が出ていたような気もしていたのですが。
■攻撃の不発と”ミリガン無双”
試合序盤のジェフは前節同様、後方からオーロイへロングボールを供給。
しかし、岐阜戦のようにはうまくいかず、オーロイが競り勝てない状況に。
横浜FCのパク・テホンは後方からオーロイにロングボールが出ると、一歩目の速さを活かしてオーロイの前に出て跳ね返す。
185cmと身長差は20cm近くあったわけですが、見事な対応だったと思います。
これを見て、ジェフはロングボールではなく、パスを繋ぐ展開にシフト。
特にサイドからのパスを繋いで、オーロイの足元を狙っていく展開だと思うのですが、これもなかなかうまくいかない。
「ロングボールがダメならオーロイの足元へのくさびのぱす」というジェフのパターンも横浜FCは研究してきていて、オーロイの足元へ入ったらCBとボランチで素早く囲み、そこで潰されていました。
ジェフのビルドアップもあまり工夫を感じませんでしたね。
SBからパスを繋ごうとはするけれど、そこから先への展開が見えてこない。
唯一のルートはオーロイへのくさびのパスですけど、それだけの選択肢しかなく、相手の予測がしやすい。
この試合では太田の負傷もあってか、伊藤が右ウイング、ゲッセルがアンカーに入ったこともあって、中盤を使っての大きな速い展開がなかなか見られない状況になっていました。
攻撃がうまくまわっていかないジェフは、オーロイがサイドに出ていって足元で受けようとするなど、それなりに変化を図ってはいたようにも見えましたが、その場しのぎな印象も強く、根本的な解決には至らなかったように思います。
対する横浜FCの攻撃は、カウンター時はシンプルにジェフのサイドを付いて、クロスを狙う攻撃を。
そして、遅攻時はオーロイのチェイシングがほとんどないということもあって、CB付近でパスを繋いでリズムを作り、ロングボールを狙う攻撃をしてきました。
1トップに187cmのカイオがいるということもあって、最終的にはその高さを目指す展開になっていたのでしょうけど、こちらも最後の部分で攻撃に関しての工夫があまり感じられない印象でした。
そんな中、ジェフで魅せてくれたのはミリガンでしたね。
カウンター時の2列目の守備が軽い、あるいはCBからフリーでカイオめがけたボールが出て来る状況で、1人でボールを跳ね返し鋭いカバーリングを見せてくれました。
”ミリガン無双”と言えば聞こえはいいですけど、ようは”ミリガン頼り”の守備になっていました。
■後半からハイプレッシャーをかけていくも…
後半開始から、ジェフは勝負をかけてきた印象でした。
深井、米倉、伊藤といった2列目の選手がかなり高い位置をキープして、相手DFラインにプレッシャーをかけ続け、その状況でオーロイにロングボールを出す。
これに相手DFラインが戸惑いを見せ、前半は維持されていた横浜FCのDFラインがズルズルと下がっていってしまう状況に。
横浜FCは前半から飛ばしていたのか、全体的な運動量や動きのキレも落ちていましたね。
そして、後半16分。
米倉が左サイドに出したパスは精度を欠きましたが、相手右SBが後ろ向きでボールを処理したところを深井がボールを奪い、そのままグラウンダーのセンタリングをオーロイが受けてゴール。
ジェフが先制します。
しかし、さすがにあの勢いを続けるのは難しかったのか、得点後ジェフの勢いは落ち着いて行きます。
逆にジェフの守備は2列目のプレスが緩くなっていき、中盤で相手に楽に前を向かれる場面が増えていきましたね。
これによって、ジェフの最終ラインも下がらざるを得ない状況に。
そして、後半40分。
横浜FCが相手左サイドから攻撃からクロス。
これを一度は跳ね返し、相手の中盤が拾ったところで、そこにプレスが行けないこともあって、ジェフはラインを上げられず。
今度は相手右SBからフリーでアーリークロスをあげられて、落されたところを最後はカイオに決められます。
ジェフはラインがGKラインの位置まで下がっており、非常に守りづらい状況でアーリークロスをあげられてしまいました。
そこが失点の要因だと思います。
その直後にもジェフの右サイドをドリブルで完全に突破され、クロスからへディグでバー直撃。
ジェフも前に攻める意思は感じたのですが、その裏を突かれて決定的なピンチを作られるシーンの方が多かった印象でした。
■ハイプレッシャー使用の問題点
ジェフの順位やJ1昇格という目標を考えれば、1-1の引き分けは残念だったとも言えるのかもしれませんが、ジェフの内容を見るとむしろ引き分けで御の字だったかなと思います。
ドワイト監督はわりと勝負師的なキャラというか、チーム力を積み重ねて上げていくタイプではなく、試合の中でちょっとした変化を作って、勝点を稼いでいく監督なのかもしれませんね。
うーん…。
その「変化」というのが後半開始からのハイプレッシャー状態時のことで、これは大分戦の後半こそうまく行ったものの、その後1-3で敗戦した草津戦でも狙って入ったもののうまく作れず。
そして、今回は一度は上手く機能したものの、一定時間しか勢いを保てず、その後は「攻めたい」という意識はあるものの足は付いて行かず、その分守備面で穴が出来てしまって、前半から緩さの感じた中盤の守備がますます緩くなって、DFラインも下がり失点しまったと。
前半は相手の守備の術中にはまっていた印象でしたし、やはりこの試合は「引き分けで良かった」といった試合内容だったと思います。
その「変化」も、ちょっとやり方を変えてみる…というようなオプション的なものならいいのですが、「変化」を加えなければ得点が奪えない、延いては試合に勝てないということで、必要に迫られてやっているような状況で。
しかも、今回のようにその後、足が止まってしまう、そして、その裏を突かれてしまうというような状況に今後もなって行くとなると、ちょっと心配ですね。
選手が動けているのが前提のハイプレッシャー状態ですから、これから夏にかけてこれをやるには負担も大きくなっていくし。
ちょっと麻薬のようなシロモノかなとも思います。
この麻薬で勝ってしまうことで、問題点が見えにくくなるという意味においても(笑)
前節の岐阜には3-1で勝てましたが、正直相手とのレベル差があり過ぎて、参考にはならないような状況でした。
だから、先週は正直何を書いていいやら…と言った状況で、この横浜FC戦こそが真価を問われる内容だったと思うのですが、やはり大きく課題は変わっておらず。
通常時だとビルドアップに工夫が見られない。
ハイプレッシャー状態かセットプレーでないと得点が奪えない。
守備で中盤から前のプレスが上手く整備されていない。
サイドの守備が脆い。
このあたりが現在の課題なのかなぁと思います。
チーム作りにおいての積み重ねもなかなか見えてきづらくなっている印象ですし、ドワイト監督にとってもこのあたりが頑張りどころなのではないでしょうか。