引き分けから見えた収穫と課題

 公式発表では熊本対ジェフ戦の気温は30度超えだったそうで。
 そんな中で13時キックオフというのは、かなりしんどい試合だったと思います。


 とはいえ、相手も同条件ですしこれもサッカーなんだと思いますから、あまりそこを言い訳にはしたくないところではないでしょうか。
 もちろん、運営的にどうなのかな?とは思いますけどね。
■早々に得点も失点後は熊本ペース
 熊本は前節のスタメンから武富に変えてファビオ、原口を左SBに起用して、左MFに片山奨。
 左SBの186cmのチョ・ソンジンをCBに回して、オーロイ対策を行う…という報道もありましたが、結局両CBは前節と変わらず。
 かわりに、セットプレー時に191cmのFW長沢を下げる作戦をとってきました(ロングスロー時も含む)。
 流れの中でのプレーに関しては、無理にオーロイに競り勝つ必要なくオーロイの周りのスペースを消す方法を取ればいいわけですから、セットプレー時に長沢がいればOKということなのかもしれません。


 しかし、試合開始直後にゴールを決めたのはジェフでした。
 セットプレーではなく、ロングスローからのゴールでしたけど、まぁ、セットプレーとほぼ一緒ですね(笑)
 オーロイがGK前に立って、そこを超えて竹内がゴールを決めるという前節岡山戦の後半ロスタイムに決めたCKと同じパターン。
 今度はボレーシュートだったわけですが、竹内は良く足で合わせてくれたと思います。
 ミリガンからの鋭いスローインオーロイが直接ねじ込んだFC東京戦以来、GKの届くエリアはなるべくGKが見る形で対応されていた印象でしたが、このシーンではDFの意識がオーロイに集中していた印象でした。
 試合直後でしたし、やはり慣れるまではわかっていても怖い…というところがあるんでしょうか。
 まぁ、単純に竹内と対面したエジウソンの寄せが緩かっただけのようにも見えましたが。



 それ以降は沈着状態。
 熊本はDFの裏を狙うロングボールが多く、なかなか前でボールが収まらない。
 一方のジェフも早々に点を奪ったこともあってか、動きの少ない状況にになります。


 しかし、前半24分、ジェフ左サイドの守備から市村をフリーにしてしまい、クロスをあげられてしまいます。
 それをミリガンがダイレクトでクリアしようとして失敗。
 長沢に決められ、同点となります。
 フリーにしてしまったのも残念ですが、ミリガンはこういうミスが多いですね。
 足元に自信があるから一発でクリアしようとしたり、つなごうとしてしまうのかもしれませんが、目の前に相手選手がいるときはもう少し慎重になってもらわないと…。



 それ以降は熊本ぺース。
 熊本はFWの仲間を守備時に1列下げて、ここ数試合ジェフのパスワークのポイントとなっていた伊藤から前にパスを出せない対策をとってきましたね。
 オーロイ周辺のスペースを消すオーロイ対策と、伊藤を前に向かせないパスワーク対策をとることで、空・陸両面のビルドアップを止められてしまった印象でした。
■後半オーロイが完全にばて始める
 後半、そのボール運びのところで相手の目先を変える狙いもあったのか、太田に変えてゲッセルを投入し、右サイドに伊藤をまわします。
 ゲッセルはやはり日本人選手のスピードに戸惑うことが多く、ズルズルと下がっての対応が目立っていました。
 まぁ、このあたりは試合感の問題もあるのかもしれませんが、跳ね返す部分は完璧だったので、もう少しスピードへの対応が上手くできるようになれば…といった感じでしょうか。


 また、オーロイも後半の早い段階からばて始め、低い位置でボールを受けても、再び前を向いてゴール前に入り直す動きが出来なくなっていってしまいました。
 これはこれからの夏に向けて、不安材料ですね…。
 今後、夜間の開催は増えて行きますが、夏の暑さがボディーブローのように効いてくる部分もあるでしょうし。



 しかし、熊本の選手も徐々に疲れが見え始め、前半ほどの守備は出来なくなっていきます。
 そんな中で勇人、伊藤、米倉の運動量は素晴らしいものがありましたね。
 伊藤がサイドから中央に入っていくことによって、選手間の距離が狭まる効果も感じました。
 そして、オーロイのガス欠で”ナチュラル0トップ”気味になる中、米倉のドリブルも効果的にアクセントを作れるという点がより目立って見えました。
 相手をズバッと抜ききるようなドリブルではないですけど、上半身を上手く使って相手との間合いを取ることでタメを作れるドリブルですね。



 試合終盤は、激しい消耗戦。
 両チーム、中盤を省略する展開で、最後は両者、引き分けでいいと考えたのかもしれません。


 それでもまったく動けないオーロイを変えなかったのは、逆にゴールへの色気もあったのかなぁとも感じます。
 セットプレーで一発の可能性を残しておきたかったのかなぁと。
 逆にセットプレー時の守備の要としての期待や、引き分けだから大きく流れを変えたくなかったというところもあったのかもしれませんが。


 試合はそのまま1-1で終了となりました。 
■ここ3試合、得点はセットプレーのみ
 結果は1-1ながらいろいろと見所はあった試合だと思うのですが、結局前半3分のゴールしかジェフは得点を奪えなかったということになりますね。
 オーロイが動けずに得点が奪えなくなる…という問題は、ようするに「オーロイ不在時にどう点をとるのか」という課題と同じ状況ではないかと思います。
 決してオーロイがいない(動けない)からと言って、一気に状況が悪くなるわけではなく、中盤の選手達も良いプレーはしていたと思うのですが、現実問題として「じゃあ、そこからどうやって点を取るのか」というのが大きな壁であって…。
 もちろん、この試合でのゴールや前節の竹内のゴールも直接オーロイを使ってのゴールではなかったわけですけど、オーロイがオトリにすらなれない状況で点を取る術というのがなかなか見えてこない印象です。


 もっといえば、ここ3試合で4得点をあげているわけですが、今回のスローインからのゴールを含めるとすれば、全てセットプレーからのゴールということになります。
 「セップレーからの得点の形を持っていること」は誇るべきだと思うのですが、一方で「セットプレー以外の得点パターンを持っていない」とも言えるわけで、これは大きな課題ではないでしょうか。
 セットプレーだけでJ1に昇格できるほど、簡単なものではないでしょうし、どうしても大量得点というのは難しくなり”安全な勝利”も少なくなってしまうはずで。



 …そんな中で、米倉の高い位置でのドリブルキープや伊藤の動き回りながらのパス出しが目立っていたのは、1つの収穫ではないかと思います。
 ただし、どちらもまだ可能性のレベルで、チームとしてそこを上手く使ってチャンスを作る・ゴールを決めるという段階にまでにはまだ至っていないと思います。
 可能性レベルなら多くのチーム、多くの選手に言えるのことだと思いますし、それをモノにできるかどうかが違いとなって表れる部分ではないでしょうか。



 それとジェフ対策はこの試合で、はっきりと形になって表れてきた印象を受けました。
 4-1-4-1気味に守って、CB1人をオーロイに付けて、もう1人のCBとアンカーでその周りのスペースを消す。
 そして、中盤中央の2人でボランチに前を向かせない守備をして、ビルドアップをさせない。
 アンカーとCB1人がオーロイの周りを見る守り方は、鳥取戦でもやられましたからそれを手本にしたのかなとも思うのですが、前半の熊本はバランス良くそれが出来ていたように感じました。
 もし気温が低い状況で戦えたとしたら、後半どうなっていたのかというのは気になるところです。
 そういう意味ではジェフ…というかオーロイもあの暑さを前にバテてしまいましたが、熊本もこの気温にやられていたということになるのではないかなと。


 ともかく、この形で守られてジェフはボールの持ち出しにかなり苦労していた印象です。
 やはりビルドアップの質の向上も課題の1つではないでしょうか。
 岡山戦も相手に退場者が出て中盤より前に空きが出たために簡単にパスをつなげる状況になりましたが、それまではうまくボールを持ち込めなかったわけで。



 結果に関しては高気温の中での日中・アウェイ開催で、相手は5位の熊本だったわけですから、1-1で御の字だったんじゃないでしょうか。
 チームや遠征に行かれたサポーターの皆さんにはお疲れさまでしたと言いたいですね。
 ただ、内容に関しては課題も多く見えていますから、ここからもう1ステップ、チームを向上できるかどうかが今シーズンにおいて非常に重要になってくるような気がします。