開幕戦、際立ったベッテルの強さ 可夢偉は…

 決勝前にドライバー一同がグリッドに集まり、日本国国旗を半旗にして、黙とうが行われました。
 改めて感謝の気持ちでいっぱいです。


 先日紹介したヘルメットやマシンのロゴも、F1ファンでないと「ただステッカーを張っているだけ」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、お金で換算すると分かりやすく、かなりの額になるはずです。
 F1のロゴは本来フルシーズンで考えれば、数十億円単位で売れるものであって、今回の日本へのメッセージも数億円、数十億円単位の金額として考えられるのではないでしょうか。
 もちろん今回の日本へのロゴは1レースだけだと思いますし、1レースでのスポンサーというのは少ないため具体的な数字の換算というのは出しにくいのですが、あれだけの数のロゴだった上に、オーストラリア放送局も敢えて狙って撮影してくれましたから、全世界からかなりの注目度を浴びたはずです。
 そして、注目度を浴びれば、それだけ支援の輪が広まる可能性が高まる、ということになるのではないかと思います。
 本当にありがたいことです。



 さて、レース。


 開幕戦ということで、毎年のように”驚き”が多い展開だったのですが、まず意外だったのが気温とタイヤの摩耗。
 トワイライトレースとなり以前のような日中開催ではなかった上に曇りがちの天候だったためか、予選・決勝ともにスタート時の気温は18度前後と低め。
 その気温のせいか、ピレリスタッフの健闘のおかげなのか、多くの関係者の予想に反してタイヤのたれが少ない傾向となりました。
 このため、決勝では2ストップと3ストップが主流に。
 意外とタイヤにとっては大きな問題のない決勝となりました。


 ただ、徐々にタイムが落ちるのではなく、ガクッとタイムが急に下がるため、各チームいつタイヤが終わるのか予想しづらい状況ではあったと思います。
 これは今後のレースでも戦略面において、悩みの種になるかもしれませんね。



 しかし、そのような状況下でも圧倒的に早かったのがベッテルで、いとも簡単にポールトゥウインを成し遂げてしまいました。
 予選では2位ハミルトンに0.7秒以上の差。
 決勝でも危なげなく独走。
 これまでにはなかった安定感を感じ、『ホンモノ』になった印象を受けます。
 これは今期はベッテルの独走なのでしょうか…。


 それを追わなければいけないのがチームメイトのウェバーだと思うのですが、予選でも0.8秒差。
 決勝でも3ストップを選んだせいなのか(タイヤが早くたれてしまった?)、5位フィニッシュと残念な結果に。
 おかげで、レースとしては面白くなったのかもしれませんけど、地元だったわけだしもう少し頑張りたかったところではないかと。 


 意外だったのがここまでのテストで絶不調だったマクラーレンで、ハミルトンは予選・決勝共に2位。
 バトンも決勝で6位となりました。
 ここもハミルトンが2ストップでバトンが3ストップと、結果的には2ストップの方が良かったのかもしれませんね。
 一方テストで好調だったフェラーリは4位アロンソ、9位マッサと振るわず。
 こちらは両者3ストップだったわけですが…。


 そして、3位にはロータスルノーの新人ペトロフがロシア人初の表彰台を獲得。
 昨年はチームメイトのクビサに水をあけられ、厳しい評価を受けることが多かったわけですが、昨季終盤に評価を上げたことが自信となったのでしょうか。
 あるいは、クビサが怪我で不在となったことが意識改革とつながったのか。
 ウィークエンドを通してハイドフェルドを先行し安定した走りを見せ、素晴らしい開幕戦となりました。
 担当エンジニアの小松さんも良かったですね…。
 おめでとうございます!
 一方のハイドフェルドは予選でもQ1落ち、決勝でも14位フィニッシュと予想以上に苦しんでしまいました。



 ザウバーの小林可夢井は予選ではQ3進出を果たし、9番手と良い走りを見せていました。
 しかし、決勝ではなかなかタイムが伸びず(こちらのロングインタビューによればシームレスギアの問題が大きかった?)、8番手フィニッシュ。
 それでもまずまず良い結果だとは思うのですが、なんとルーキーでチームメイトのペレスが1つ前の7番手フィニッシュということで、ファンとしてはちょっと複雑な思いを感じてしまう結果となってしまいました。
 まぁ、ペレス成功のきっかけは、何よりも前ドライバーで唯一の1ストップ作戦が成功したことだと思うのですけどね。
 スタートでハード側のタイヤを履いていたのはペレスだけだったのではないでしょうか。
 それが成功して…ということなのでしょうが、それで安定したタイムを出せていたのはさすが。
 一方の可夢偉はQ3に進出したことで、予選で使用したタイヤを決勝スタートで使わなければいけなかったことも大きかったのかもしれません。
 まぁ、ジェームス・キー曰く「タイヤに優しいマシン」らしいので、それが本番でも発揮できたというのはチームの今後にとって重要な収穫だったと思えば…。


 …とか思っていたら、なんと決勝後にザウバーの2台が失格に。
 リアウイングのフラップのサイズの問題が指摘されたそうで、確かリアウイングの形状はザウバーが自信を持っていたパーツの1つだったはずです。
 たぶんテストの時から目を付けられていて、本番のここぞという時に異議を申し立てたチームがあるのではないかと。
 まぁ、F1では常套手段ではありますが、もともと狙われていたのかもしれませんね。
 ザウバーは抗議しているそうですが、こういった抗議がうまくいくことはあまりないと思いますし…。
 ちょっとザウバーにとっては後味の悪い結果になってしまいました。



 それに関しては置いておくとして、レース自体は面白い展開だったのではないかと思います。
 可変リアウイングによる追い抜きはあまり見られませんでしたが、それでも接近戦は増えたんじゃないでしょうか。
 ピレリタイヤも思ったよりは作動しましたし、先が読めないという意味ではよかったんじゃないでしょうか(笑)


 可夢偉は良くないなりに上手く走った(セッティングでも迷っていた?)…という印象だったのですが、今後はもう少しふっきれた走りを見せてほしい気もします。
 ルーキーを抱えたので確実さも求められるのでしょうが、まだ老獪な走りを見せるような年でもないと思いますしね。
 マシンは悪くないようですし、今後に期待したいと思います。