方針が見えず"苦肉の3バック"も不発

 まだ関東地方の梅雨明け宣言はされていませんが、7月も半ばになって本格的に熱くなってきました。
 前節の水戸も松本相手に2点リードしながら後半にスタミナ切れを起こして逆転負けをしていますし、どのチームも夏をどう乗り越えるかが重要になってくると思います。


 うまくコントロールして、90分間なるべくばてずに戦うか。
 それともばてた状況でも、粘り強く戦えるチームを作るのか。
 選手交代策も含めて、賢い夏対策が求められてくるのではないでしょうか。
■序盤に飛ばすも失速し失点
 ジェフは多々良に代わって、新加入の丹羽がスタメン。
 ベンチからは小池が外れて、北爪が復帰。
 水戸はスタメンに変更はないものの、ベンチが一部変更。
 新加入で左SBをこなせる福井もベンチ入りしているので、佐藤祥は今が大事な時期なのかもしれません。


 先にチャンスを作ったのはジェフ。
 3分に右サイド奥でのスローインから、井出が長澤とのパス交換で抜け出しシュート。
 しかし、逆サイドのバーに当たって、ゴールならず。


 10分には水戸の攻撃。
 右サイドからのマイナスのクロスを湯沢が受けて、佐藤祥がオーバーラップしてゴール前に飛び込みます。
 しかし、ゴール前で井出が何とかブロック。
 


 14分にはジェフの攻撃。
 富澤がクリアボールを中盤で拾ってミドルシュートを放つも、相手GK本間がセーブ。
 その直後にも左サイドで井出がクロスを上げ、エウトンがヘディングシュートを放ちますが、枠を捉えきれず。


 試合序盤はジェフが優勢に試合を進めます。
 水戸は町田や井出のスピードへの対応が遅れがちで、簡単にマークをはがされるシーンが目立っていました。
 ジェフは主にロングボールを2列目が拾う形で、攻撃を作っていきます。



 しかし、ジェフは立ち上りから飛ばしていた印象があり、20分あたりから早くも勢いが落ちていきます。
 水戸は三島が落として中盤が拾い、ロメロと兵働がサイドに繋ぐ展開でチャンスを狙っていきます。
 水戸がボールを持つ時間が長くなり、ジェフはカウンターを狙う展開に。
 けれども、ジェフはラインが下がり押し上げが足りないため攻撃が単発になりがちで、結果的に防戦一方となっていきました。


 34分、水戸の攻撃。
 水戸のCKの流れから再び水戸が左サイドでボールを奪い、兵働、湯澤、ロメロと繋いで、船谷がクロスを上げ三島がヘディングシュート。
 ゴールネットを揺らしましたが、船谷のところでオフサイド



 そして、39分にスコアが動きます。
 水戸が中盤でロメロ、湯澤、兵働と繋ぐと、兵働が白井にスルーパス
 これが通って完全に裏を取られて、白井がゴール。


 ジェフは攻め込まれてから、兵働とロメロのボランチコンビを捉えきれずにいました。
 三島が空中戦で強さを発揮するため、ジェフはそこから押されて全体のラインが下がっていった。
 それによって中盤が空いてしまい、失点シーンも水戸のボランチが楽にボールを出せる状況でした。


 失点した以降も、ジェフは攻撃の形を作れず。
 0-1のまま、前半を終えます。
■3バックに変更も攻め手を欠き敗戦
 後半から反撃したいジェフですが、大きく状況は変わらず。
 逆に水戸は後半からより積極的にプレスをかけてきて、ジェフのビルドアップを自由にさせません。
 そこから奪ってカウンターといった展開も目立っていました。
 

 53分には水戸の攻撃。
 右サイドからのクリアボールのクリアボールを、兵働が中盤で拾って素早くミドルシュート
 鋭いシュートでしたが、ゴール左隅を逸れます。


 56分には、久々にジェフの攻撃。
 左サイドからのパスワークから、船山がカットインしてミドルシュート
 しかし、GK本間の正面で終ります。



 水戸はハーフカウンターからチャンスを狙っていきますが、大事なところでのパスミスが多い印象でした。
 これは前回対戦した時と同じで、水戸のが大きな課題なのかもしれません。
 良い形でボールを奪っても、シュートまで持ち込めない場面が目立っていた印象です。


 63分にはジェフのチャンス。
 阿部のスルーパスに反応した長澤が、前線で飛び出しクロス。
 井出がシュートを放ちますが、相手DFがブロック。 


 その直後には水戸の決定機。
 ジェフのCKを凌いだ水戸がカウンター。
 兵働が前線でタメを作って、走り込んできた白井にパス。
 白井はフリーでシュートを放ちますが、GK佐藤がセーブ。



 両チーム運動量が落ちていき、スペースが出来始めていきました。
 68分、ジェフが一気に2枚替え。
 長澤に代えて山本を、船山に代えて北爪を投入。


 72分、ジェフの攻撃。
 左サイドで町田が繋いで、井出が持ち上がってセンタリング。
 鋭いボールでしたが、ゴール前であわず。


 75分、水戸の選手交代。
 船谷に代えて、新潟から加入したばかりの長身FW平松を投入。
 その直後には水戸の攻撃。
 GK本間からの展開でこぼれ球を水戸が拾い、平松が繋いで白井へ。
 白井がミドルシュートを放ちますが、枠には飛ばず。



 82分、両チームの選手交代。
 水戸はロメロに代わって石神を投入。
 ジェフは阿部を下げてオナイウを投入し、3バックに変更しました。


 選手交代をしたものの、なかなか攻撃の勢いが上がっていかないジェフ。
 88分には、水戸が2枚目のカード。
 湯澤を下げて福井を投入。

 

 89分、ジェフのCK。
 一度は跳ね返されたものの、再びジェフが拾って井出がクロス。
 中央でイが競りますが、惜しくも枠には飛ばず。
 後半アディショナルタイムには、町田のアーリークロスをエウトン受けてボレー。
 しかし、これも枠には飛ばず、0-1で水戸が逃げ切りました。
■ハーフカウンターも繰り出せず振出しに戻る
 ジェフは攻守にアグレッシブさを出し切れなかった印象です。
 今年のジェフは得点した後に減速したり、最後に猛攻を仕掛けきれなかったりと、やり切れない試合が多いように思います。


 これは単純に選手のメンタルだけの問題ではないと思います。
 例えばマラソンなどでも選手は本気で走ろうと思っていても、コースがわからなければどちらに走っていいのかわからない。
 戦い方がはっきりしていないからこそ、出し切れない部分も大きいと思います。



 水戸が最後までアグレッシブに戦っていたからこそ、ますますそう見えたところがあったように思います。
 水戸は試合の入りこそ悪かったものの何とかそこを乗り切ると、20分あたりからは三島の落としを拾って兵働とロメロが散らす形で優勢に。
 その流れで得点を奪うと、後半からは積極的にプレスをかけ、相手のビルドアップを阻止しながらカウンターを狙う。


 大事なところでの縦パスなどにおけるミスは多かったものの、やることは明確だった。
 ゲームプランにおいても前節逆転負けを喫しているからこそ、その反省を活かして序盤はセーブしていたように見えました。
 チームとして戦い方がはっきりしていたからこそ、選手たちもアグレッシブに全てを出し切れたのではないでしょうか。



 一方のジェフは、攻守に戦い方が不明瞭だった。
 前半は三島へのロングボールで押し込まれると、相手のボランチを誰が見るのかはっきりせず、いいようにやられてしまった。
 押し込まれた状況で中盤が空く問題は、関塚監督が就任してから長らくの課題です。
 またカウンターへの対応も課題が多く、60分過ぎの兵働のタメから白井への展開でも、白井へまったく対応できなかった。


 攻撃においても、立ち上りに飛ばして奇襲のような展開で優位に進める他は、どうやって点を取るのか見えてこなかった。
 選手交代に関しても、有効な策は見られませんでした。
 船山を外したマイナス面も大きかったように思います。



 確かに船山を外して細かな仕掛けは諦めて、その分3バックにして井出と北爪をアップダウンさせる。
 あるいは疲れの見える阿部を変えて、2トップにしてサイド攻撃といった考え方もできるとは思います。
 しかし、肝心の井出や北爪を走らせるような形はほとんど作れず、シンプルに2トップに放り込むような攻撃も出来なかった。
 結果的にオナイウや井出などの個人技で攻めるしかなく、選手が変わっただけでチームとしては何も変わっていなかったように思います。


 結局3バックにしたのも、他に有効な攻撃策が作れないからシステムを大きく変え、相手とのミスマッチを狙うという形しかできなかったのだろうと思います。
 ようするに、ジェフには"苦肉の策"を取るしか道がなかった。
 チームとしての形が、作れていないことの表れではないかと思います。



 北九州戦では序盤にアクシデントが続き、愛媛戦では相手の出来が悪く自分たちのミスから負けてしまった。
 それに比べると水戸戦は試合前にも話したように相手がシンプルな戦い方をしてきたし、大きなアクシデントもなかった。
 その結果、ジェフの現在の状況がよりはっきりと分かった試合となったように思います。


 改めてこの試合で感じたのは、やはりチームのとしての方針が見えてこないということ。
 プレスからのハーフカウンターも継続できず、次の手も見えずに、また振出しに戻ってしまったような印象があります。
 このままいけば、ジェフは今年も厳しい夏になりそうな気がしますね。

2位と勝点差14で折り返し 後半初戦は水戸戦

 早いものでジェフは、前節愛媛戦を終えてシーズン前半を終了。
 今週末の水戸戦から、後半戦に突入します。
 熊本大震災の影響もあって試合消化数にばらつきがありますが、ジェフは9位で折り返すこととなりました。


 ここまで7勝6敗8分で勝点29となっており、6位清水との勝点差は5、2位C大阪との勝点差は14。
 鈴木監督解任時に「2位との勝点差10が目安だった」と当時の齋藤TDが説明しており、実際解任時の2位との勝点差はちょうど10でした。
 現在はそれ以上に差を付けられていることになりますが、状況が違うと言われればそれまででしょうし、PO出場権はまだ狙える位置にいると言えるでしょう。



 ただ、それ以上に気になるのは、ここまでの経過や内容に関してだと思います。
 2月、3月は3勝1敗1分と、好スタートを切ったジェフ。
 しかし、それ以降は失速していきます。


 ニューイヤー杯でも懸念していた通り、昨年に続いてシーズン序盤にピークを合わせたため、今年も開幕直後は好調だった。
 明らかに相手チームの選手よりも動きが良く、コンディションで相手を圧倒。
 しかし、ピークを序盤に持っていった結果、それ以降は下がるしかない状況でした。
 2014年はスタートダッシュに失敗したため、それも懸念して開幕時にピークを合わせているのでしょうか。



 4月に入ると1勝3敗1分と低迷し、4月9日金沢戦以降は1ヶ月以上勝ち星から遠ざかります。
 内容も攻撃は船山頼りで、守備も引いて守る分、中盤にスペースが出来がちでした。
 しかし、5月15日熊本戦で勝利をあげると、一度持ち直します。
 エウトンと町田の前線と左SH船山の起用も当たり、プレスからのハーフカウンターが機能していきました。


 けれども、6月に入ると、再び勝ち切れない状況に陥り1勝1敗3分と苦戦。
 特に6月12日東京V戦でプレスからのハーフカウンター対策を取られて苦戦したところが、1つの分岐点だったのではないでしょうか。
 北九州戦、愛媛戦と2連敗を喫して、シーズンを折り返すこととなりました。



 以前にも話したように、関塚監督が就任してから1つ何かを大きく変えると一度は良い状態になる。
 けれども、その状態を継続し、強化し、発展させることが出来ずに対策を取られて、右肩下がりに成績を落としてしまうという大きな問題があります。
 ようするに、一言で言えばチームを成長させられていない。


 確かに今年はメンバーが大幅に入れ替わった中で、大崩れしなかった点は評価されるべきなのかもしれません。
 しかし、関塚監督の場合はチームをコツコツと積み上げるタイプではなく、選手の入れ替えや組合せなどでやり方を変えて戦っていくタイプなだけに、結果的には良かったのかもしれません。
 むしろ昨年のメンバーがあのまま残っていたらもはや組合せはほとんど残っていなかったでしょうから、"弾切れ"状態に陥っていた可能性があります。
 選手起用の組合せによる変化だけで、あれ以上を期待するのは難しかったのでしょうし。


 しかし、今年は選手が大幅に入れ替わったと言っても永遠に"弾"が続くはずもなく、組合せによる変化だけでは限界があるでしょう。
 もちろんやり方を変えた結果としてそれで数ヶ月でも戦えればいいのですが、関塚監督の場合は切り替えの効果が1ヶ月ほどしか持たない傾向にある。
 そのため昨年も"弾切れ"状態に陥った印象ですが、それだけでは今年も厳しくなるのは見えていますし、チームの将来はおろか、短期的にも結果を残すのは難しいものがあります。



 とはいえ、このあたりは昨年末の時点で十分に見えていたこと。
 監督続投が決まった時点で、あまりそのあたりは期待できないだろうと思っていました。
 それだけに、そこまで大きな落胆はないように思います。


 6月26日北九州戦では試合後にブーイングが起きており、記事にもなりました。 
 確かに内容に乏しく、ブーイングが起きても仕方のない試合だったとは思います。
 ネット上では解任を望む意見も増えている印象ですが、昨年最終節後には関塚監督にブーイングが起こらなかっただけに意外でもあります。



 関塚監督は人格者であり、試合後にも毎回のようにサポに感謝の言葉を述べています。
 それによってイメージや雰囲気も良く、面と向かってのブーイングはしにくいということなのかもしれません。
 ただ、サッカーに限らずですが、そういったイメージと実際の仕事への評価などは別物と考えるべきだろうと私は思います。


 リオ五輪が近づいて手倉森監督の露出が増えて感じるのは、五輪監督はマスコミ対応なども出来てイメージも良い方を選んでいるのではないかという点。
 五輪は国民的な行事であるために、マスコミやスポンサー、ファンなどに対して"いい顔"が出来る監督でなければいけない。
 関塚監督も元五輪監督ですから、当然そういった面を持っている。



 そして、最近のジェフもスポーツ以上にエンタメ要素が増している印象で、"イメージ"というものが重要視されているように感じます。
 ファンやサポ向けに愛想の良い選手や監督が評価され、逆の場合は毛嫌いされる。
 もちろんそういった要素も不要だとは思いませんが、それによってスポーツ的な要素や実際の仕事への評価がぶれるようであれば、そこからクラブの歪みや甘さが生まれてしまう可能性がある…。
 特に近年はSNSの普及もあって、よりイメージなどが重要視されている印象もなくはありません。


 これはジェフだけではない問題なのかもしれません。
 アギーレ監督時代のフィジカルコーチもこのように話しています

「視察で多くのJリーグの試合を見ましたが、時にショーやお祭りを見るような空気がスタジアムに流れていて、違和感を感じたことがあります。サッカーに対する捉え方の違いですね。よく言えば相手へのリスペクト、悪く言えば甘い。その空気はピッチ上の選手に伝わるんです。欧州や南米には、競争と激しさ、喜びに怒りがあります。死ぬ気で相手がぶつかってくる環境でプレーすること」


 オシム監督も代表時代に「勝者のメンタリティ」という話から、「もっと厳しく選手を見てほしい」という話をしていました。
 しかし、それを変に受け取った結果、アマル監督に試合前からブーイングをするというおかしな状態になってしまった。
 「ショーやお祭りを見る」のではなくしっかりとスポーツとしてサッカーを捉えた上で、正当に仕事に関しての評価をしていくことが重要であるということなのかもしれません。



 さて、大きく話が脱線してしまいましたが、今週末のジェフはホームフクアリで水戸と対戦します。
 水戸は18位でシーズンを折り返し。
 4勝8敗8分と、苦労している印象です。


 4月29日にジェフと対戦した際には、開始早々に水戸が先制。
 船山をスタメンから外したジェフは攻め手がなく、0-1のまま敗戦しています。
 しかし、現在の水戸はここ7試合勝ち星がなく、あまり流れは良くないように思います。



 現在の水戸は綺麗な4-4-2を構成し、組織的な守備が印象的です。
 チーム全体がハードワークするスタイルで、前からもプレスをかけ、引いて守るチームではない。
 ジェフ戦でも戦い方を変えないのであれば、ジェフとしては比較的やりやすい相手となるかもしれません。


 このところの水戸は失点が増えているようで、これが勝ち星から遠ざかっている要因の1つということでしょうか。
 ここ3試合はロメロ・フランクボランチで起用し、兵働と組ませています。
 その分パス出しなどは期待できるかもしれませんが、守備面では不安が出ている印象もなくはありません。


 一方の攻撃面では、テンポの良いパス回しからのサイド攻撃と三島の強さが特徴。
 セットプレーからの攻撃も、武器の1つとなっている印象です。 
 しかし、前節松本戦では2-3で敗れていますし、どこかを変えてくる可能性もあるのでしょうか。



 対するジェフも、北九州戦、愛媛戦で2連敗となっています。
 関塚監督は負けると何かを変えることが多いですし、また変化が出てくるのでしょうか。
 ただ、今季は前方の選手に似たタイプが多く、攻撃陣は変えにくい状況にあるのかもしれません。
 守備陣は手を加えることが出来るかもしれませんが、基本コンセプトは変わらないでしょうし、それでチームが大きく変わるかどうか。


 そう考えていくと、やはり最終的に求められるのは1つのスタイルの維持と強化が出来るかどうか。
 そこが出来た時に初めて、現在のチームにおける将来への希望が見えてくるのかもしれません。
 それが出来るか否かが、シーズン後半に置いての、そして関塚監督にとっての大きなテーマとなるのではないでしょうか。


 ともかく、まずは水戸戦。
 これまでの戦い方で来るのなら水戸はシンプルなサッカーをしてくる印象ですし、現在のジェフの特色が出やすい相手とも言えるのかもしれません。
 そういった相手に、どのような戦い方が出来るのか注目ですね。