トゥーロンのオナイウと五輪メンバー予想
トゥーロン国際大会に出場した日本代表。
結果は1勝3敗でグループリーグ敗退。
残念な結果となってしまいましたが、それなりに収穫もあったのではないでしょうか。
今回の五輪代表チームは4×4のボックスでカウンター主体のチームだったと思いますが、その分これまでの試合では遅攻時に焦って縦パスを出してボールを失うことが多かった。
しかし、今大会ではしっかりパスを繋いで崩す形が、作れるようになっていました。
特に後方からの縦パスを2列目の選手が相手のバイタルエリアの横で受けてそこから縦に仕掛ける、あるいは相手を引き付けSBに繋いでクロスを狙う…といった展開が狙いとして見て取れました。
その展開を警戒して相手が前に出てきたら、FWが裏を走ってそこへロングパス。
そこで重要だったのがFWの裏への抜け出しで、特に浅野は戦術的にも重要な選手だったのではないでしょうか。
守備面でも貢献度は高かったと思います。
遅攻が増えた分、引き付けてカウンターといった攻撃はあまり見られませんでした。
しかし、現在は4-4-2でのカウンターが世界のトレンドとなっているわけで、今度はそのサッカーを打開するためにまた遅攻が必要になってくるのではないかとも思います。
J2でパスサッカーを展開する山口も、その方向で上位に食い込んでいる存在と言えると思います。
また、アジア予選などでも感じましたが、このチームは選手を入れ替えても大きく質を下げずに戦うことが出来る。
選手が最低限の約束事さえこなせば、誰が出てもチームとして成立する印象があります。
怪我人の多発で主力選手の大半が欠場となった今大会ですが、それでも大崩れしなかったのは地味に凄いことではないかと思います。
ほぼ新顔といえる富樫、喜田、三丸などがいきなりチームになじんでアピールできたのも、そういった特徴があるからではないでしょうか。
大会中の内容も、そこまで悪くなかったとは思います。
ただ、勝てなかった。
勝ち癖をつけることや勢いをつけることは大会に向けて大事な要素だと思いますし、それが自信につながる面もある。
特に課題となったのは決定力の面で、そこはやはりOAや復帰組に期待したいということになってくのではないでしょうか。
前線の選手ということで、オナイウも得点力という意味では物足りなさを感じた選手の1人。
後半途中から出場したパラグアイ戦では相手のボランチエリアまで下がって、うまく受けてポイントになっていました。
これまでのオナイウは懐の深いボールタッチはあったものの、それをうまく活かせていない印象もあったのですが、シンプルにさばいて攻撃のリズムを作っていました。
ジェフでは足元にボールが入ることも少なく判断基準がありませんでしたが、オナイウの成長を感じる部分だったように思います。
しかし、後半30分にパラグアイが1点を取って勝ち越すと、相手が前に出てこなくなります。
すると、オナイウにボールが入る回数も減って、攻撃の起点になれなくなっていった。
サイドに流れて囮になる動きも、相手が前に出てくれば中央に裏のスペースあるため浅野を中心にチャンスを作れますが、相手が引いてしまうと逆にゴール前の人数不足に繋がってしまう。
スタメン出場したポルトガル戦、イングランド戦でも、サイドや中盤でボールをさばくプレーは何度か作れていました。
しかし、そこからゴール前へ飛び出す動きは少なかったため、結局ペナルティエリア内で勝負した回数は極めて少なかった。
中盤の選手としてなら他に良い選手が代表にもジェフにもいると思いますし、実際前を向いてのパスはミスが目立っていました。
結局はゴール前でボールを引き出す動きが、大きな課題なのでしょう。
ジェフでも相手が引いた状態でオナイウが前線にいると、オナイウがボールを引き出せず停滞してしまうことが多い。
かといって今大会でも相手DFに競り負けていたように、空中戦のポストプレーはそこまで強くはない。
特にポルトガル戦では相手が長身DFだったため、クロスを待っているだけでは跳ね返されてしまう。
しかし、相手との駆け引きや裏への抜け出しは得意ではないため、タイミングで勝負できない。
今大会でも前を向いた時の跳躍力の高さを見せられることはほとんどなく、シュート自体もPA外からの3本のみだったと思います。
多くの前線の選手が決定力不足を指摘される中で、オナイウはシュートまでの形を見せることが出来なかった。
また、イングランド戦の前半は全く動けていなかった。
ジェフでも連続して出場すると調子が落ちる印象もありますし、連戦が効かないという評価を受ければ五輪本戦も厳しくなってくる。
オシム監督も代表時代に連戦で戦えるかどうかも評価ポイントであるような話をしていましたし、協会スタッフはそのあたりも見ていると思います。
守備においてもパスコースを消しながら追いかけられない、あるいは次の予測が出来ていないため、どうしても後追いの守備になってしまう。
本人は"献身的な守備"がウリだと話していたそうで、確かに初めの2試合は献身的に走っていたところもあったと思います。
しかし、"効果的な守備"ではないので、本当の意味での無駄走りが多い。
またボールホルダーの近くまではプレスに行ってもそこから寄せきることが出来ないので、追いかけてもボールを出されてしまうことが多かったと思います。
イングランド戦は体力的な問題もあった上に、1トップだったためチェイスが難しくなった部分もあったとは思います。
ただ、ポルトガル戦でも浅野がファーストディフェンスに行けていたから、オナイウがなんとかチェックに行けていたという部分も大きかったのではないでしょうか。
コンパクトなサッカーが主流となっている中で、前からのプレスが安定しないというのは大きなマイナスだと思います。
もともと怪我人が多い状況下でトゥーロン国際のメンバーに選出されておらず、さらに追加招集で何とか呼ばれた立場。
その中である程度出来た部分もあったとはいえ、得点も出来ず大きなアピールは出来なかったわけですから厳しい状況と言えるでしょう。
確かに身長のあるFWは極めて少なく、セットプレー要員なども出来れば欲しいところではありますが、枠は18人と非常に少ない。
加えて前線の選手たちの決定力不足も露呈した大会でしたから、OAも考えられます。
とはいえ、オナイウにとっては良い経験だったのではないでしょうか。
世代が下とはいえポルトガルやイングランドなどと試合が出来ることはめったにないことですし、連戦の苦労なども体感することが出来た。
その中でやれることとやれないことが見えてきたわけですから、勉強になったのではないかと思います。
ただ、見えてきた課題に関して言えば、今までのジェフでの試合でも感じ取れていた部分。
やはりベースは普段の試合や練習であり、まずはジェフで試合に出場して活躍することが何よりも重要なのではないでしょうか。
残すところ予定されている強化試合は6月29日の南アフリカ戦と、昨日発表された7月30日のブラジル戦のみ。
しかし、ブラジル戦はブラジルで開催されますので、すでにメンバーは決まっているでしょう。
となると、ここからは直接アピールする機会はほとんどなく、クラブでの活躍が重要となってきます。
南アフリカ戦も怪我からの復帰組がいれば、そちらが優先されるのではないかと思います。
オナイウに関しては、まずジェフで大きくアピールして、逆転での選出を期待したいですね。
最後に五輪メンバーの現時点での予想を。
怪我人が多くいつ復帰するのか、そこからコンディションがどこまで上げられるのか判断が難しいので、まだまだ予測しにくい状況ですが。
GK:櫛引(鹿島)、中村(柏)
DF:三丸(鳥栖)、植田(鹿島)、森重(OA・FC東京)、酒井高徳(OA・HSV)、岩波(神戸)、室屋(FC東京)
MF:遠藤(浦和)、大島(川崎)、井手口(G大阪)、南野(ザルツブルク)、中島(FC東京)、矢島(岡山)、野津田(新潟)
FW:久保(ヤングボーイズ)、興梠(浦和)、浅野(広島)
バックアップ:富樫(横浜FM)、喜田(横浜FM)、杉本(徳島)
OAは誰が呼べるのかからないですが、スピード系のCBと両SBが出来るSBと得点が期待できなそうなFWを入れてみました。
怪我人も久保は間に合うと思いますが、岩波、中島あたりはどうなるかわからないですね。
左SBは山中が主軸でしたが、山中も負傷してしまったので、今大会で活躍した三丸にしました。
ただ、三丸も鳥栖では試合に出れていないので、最後まで2人で争うことになるのでしょうか。
悩んだのは最後の2人で喜田か、原川か、矢島か、野津田か、鈴木武蔵か、富樫か…。
全体のバランスもあるので悩ましいところだったのですが、矢島ならボランチも出来ること。
このチームなら点を取りたい時は、パワープレーよりドリブルやスピードだろうということで野津田にしました。
守備固めのカードや高さに不安もありますが、18人枠を考えるとどこかを妥協せざるを得ないですしね。
バックアップには、トゥーロンで複数ポジションをこなした富樫と喜田を選んでみました。
結果的に横浜FMからバックアップが2人も出てしまって、何となく申し訳ないですが…。
実際に選ぶとなれば、協会がその辺りを考慮する可能性もあるかもしれないですね。
18人枠というのはどのチームもかなり厳しいと思うので、そろそろ変えてもいいのでは?と思うのですが、クラブとの関係で難しいのでしょうか。
本番のメンバーはどうなるのか。
発表までにまた情勢が変わるのか、気になるところですね。