町田の途中投入と3バックへの変更

 山口戦の50分から、多々良に代わって町田が出場。
 阿部を含む3バックとなり、町田は長澤と2シャドーの位置に入りました。
 町田の出場は金沢戦に続いて、今季2度目となります。


 金沢戦では立ち上がりから2トップが積極的にプレスをかけていき、相手のビルドアップを遮断。
 しかし、それによって2トップの消耗が激しくなり、90分持たなくなってスタメンが2人とも途中交代となりました。
 その時に出場したのがオナイウと町田で、プレスに専念する"プレス要員"として2人が投入されたのではないかと思います。



 山口戦での町田は攻守に期待されての投入だったと思うので、ようやくまともな形での出場となったのではないでしょうか。
 やはり町田が1人いるだけで、パスワークが活性化される。
 単純にボールをシンプルにさばける、運動量が豊富であるといった特徴だけでなく、相手の間で受ける、裏に抜け出して引き出すといった動きによって、パスコースが増えるという面が大きいのだと思います。


 ここまでの関塚監督はチームが苦しくなってきたら、町田に頼ることが多いように思います。
 ジェフ就任も初めは勢いがあったものの勝ち点を伸ばせずにいると、9月に入ってから町田をスタメンで起用。
 昨年もハイプレスに不安が見え始めると、ちょうど今と同じGW時期からレギュラーとして使われていきました。



 ただ、逆に言えば町田が起用され始めると、当初のプランが崩れ始める兆候とも言えなくもないかもしれない。
 もちろん今年のサッカーは、昨年のハイプレスほど町田との相性が悪いわけではないかもしれません。
 加えて、まだスタメン出場というわけではないため、町田に頼り切っているわけでもないでしょう。
 とはいえ、今後も町田の出場が増えていき町田に頼る傾向が強くなっていくと、結果的にチームとしては良くない流れになる可能性もあるのかなとも考えてしまいます。


 それだけ町田は、影響力の高い選手とも言えるのではないかと思います。
 1人でパスワークを構築できてしまうだけでなく、守備でも運動量が豊富なためパスコースなどを消すことが出来る。
 ただ、やはりラストプレーの精度が低いために、町田1人に頼り切るとそこで大きな課題が出てしまうところがあるのでしょう。



 山口戦では65分に町田が裏に飛び出して、決定的なセンタリングを船山に上げることが出来ました。
 船山はそのチャンスを逃してしまいますが、決定的な仕事も1つこなしたことになるわけで、全体的には悪くないプレー内容だったのではないでしょうか。
 ただ、投入直後のシュートは大きく吹かしてしまった。


 状況からして、リズムを変えるために思い切ってシュートにいったシーンだったのかもしれません。
 しかし、シュートが雑だった印象があり、外し方が気になったシーンでもありました。
 外すにしても丁寧に放ったシュートでないと、次への期待というものも薄れてしまうように思います。



 町田が投入されてからの3バックに関しては、可能性を感じる部分もありました。
 タメが作れる長澤と前後左右に動き回れる町田との専大2シャドーコンビはさすがの関係性でしたし、富澤が散らしてのサイド攻撃も悪くなかったと思います。
 3バックの方がトライアングルが作りやすく、攻撃面での連携も作りやすいかもしれません。
 また、守備に置いても5バック気味に守れば、この試合での1失点目のように逆サイドの大外が空くことも少なくなるでしょう。


 ただ、井出がWBに回ったことで、守備に専念せざるを得なくなった。
 吉田もこの試合では積極的に前に出ていけていましたが、スタートからやるとなれば守備に戻らなければいけなくなるでしょう。
 阿部に関しては名古屋時代にも数試合3バックのCBをやっていた記憶があり、SBでも高い位置まで行けていないので意外と大きな変化はないのかもしれませんが、それでもやはり勿体ない印象を受けてしまいます。



 加えて、岡山戦での豊川にも苦戦していたように、イは相手に前を向かれた状況でのドリブル対応に課題がある印象です。
 この試合でも香川に抜かれてしまったように、3バックのCBだとどうしてもそういったシーンが増えていきます。
 本格的に3バックをやるのであれば、そこが致命的な弱点になりかねないのかなとも思わなくもありません。


 3バックになってからは、ビルドアップも守備の関係も手探りだった印象で、練習であまりやっていなかったのではないかと思います。
 昨年の福岡戦でも突然3バックを実施しましたが、あの時も同様の印象を受けました。
 今回は前に人数を増やしたいという思いと、山口と前節戦った徳島が山口対策で3バックを実施していたため、そのイメージも残っていたのでしょうか。


 どのシステムにしても一長一短はあり、3バックもうまくやれば良さは出せるようになるかもしれません。
 しかし、基本的に関塚監督は細部を作り込むのではなく、選手を並べるタイプの監督だと思います。
 そのため細かな連携や距離感などは選手たちが試合などをこなしていくことで、体で覚えるといった部分が大きいのではないでしょうか。
 それだけに大きな変化があるたびに作り直さなければいけない部分が出てくる印象で、頻繁な変更は得策ではないようにも思います。



 山口戦での3バックへの変更も「逆転勝利を狙って大きな変化を与えた」という意味では、間違いではなかったのかもしれません。
 ただ、あの大きな変更によって、それまでの戦い方による課題を有耶無耶にしてしまった印象もあります。
 あの試合の中で自分たちの課題を突き詰めて解決を図るのではなく、課題を隠して新たな可能性にかけた采配と言えるのではないでしょうか。


 それはあの試合に限定すれば間違いではないのかもしれませんが、今後の試合やチームの成長を考えるとどうだったのか。
 1つの方法を突き詰めるのであればベースとなる4バックのまま戦って、課題の解決を模索した方がよかったのではないかと思います。
 しかし、ああいった状況で課題の根本的な解決よりも目先を変えるような選択をするのが、関塚監督らしいとも言えるのかもしれません。
 これまでのシーズンもそうだったような気もしますが、どこまで課題を隠し通せるかが今後のシーズンを占う上で重要となってくるのでしょうか。