船山が決定機を決めきれず

 金沢戦ではゴールを決めた富澤以上に、ある意味で船山が目立ってしまったように思います。
 決定的なチャンスが2度、3度とあったにもかかわらず、シュートを決めきれなかった。
 船山にとっては、少し残念な試合になってしまったのではないでしょうか。


 ただ、チャンスメイクという点においては、大いに貢献していたと思います。
 船山はこの試合に限らず、多くの試合でチャンスを作っている。
 ジェフの攻撃における、軸となっている印象です。



 金沢戦ではまず13分に相手選手が転んだことによって、フリーになってゴールに迫るもシュートはバー直撃で終ってしまいます。
 しかし、続く18分にも、井出の右サイドからのクロスをダイレクトでシュート。
 このシーンでもシュートを外してしまいますが、クロスを受ける前にまず斜め前へ走っていってピタッとストップ。
 そこからマイナス方向に戻ってボールを受けることで、相手DFのマークを外しシュートを放っています。


 後半に入って、60分にも船山の決定機。
 右サイドからのパスに対して受けるそぶりを見せておいて、相手DFを前に引き付けてスルー。
 そこから裏に飛び出して、井出からのパスを受け完全に抜け出します。
 そのままループシュートを放つも、ここでも外してしまいます。



 得点こそなりませんでしたが、この2つの決定機も船山の動きで決定機が生まれたシーンと言っていいでしょう。
 右サイドからのパスをスルーしてから裏へ飛び出す展開は、C大阪戦でも同じパターンでチャンスを作りかけましたし、船山が得意な形ということなのでしょう。
 他選手はこういったプレーを狙っていないことからして、チームとして狙っているわけではなく、船山個人のアイディアで生まれた攻撃と言えるのではないでしょうか。
 続く63分にも船山のタメからカウンターのチャンスが生まれるなど、自身がシュートを狙うだけでなく周りを活かすプレーでも攻撃の中心となっている印象です。


 船山はアイディアと動きのキレで、1人でチャンスを産み出すことが出来る。
 町田はトップ下に入れば1人でパスワークを作り出すことが出来る選手だと思いますが、船山は1人でアタッキングサードでチャンスを作り出すことが出来る選手と言えるのかもしれません。
 攻撃をチームで組み立てられるタイプではない関塚監督にとっては、非常に貴重な選手と言えるように思います。



 しかし、いくら1人でチャンスを作れて決定的なシュートシーンまで持ち込むのが得意な選手でも、そこからの決定力が低ければ魅力は半減してしまう。
 特に2トップの一角としてプレーしていることを考えると、やはり決めるべきところは決めてほしいところだと思います。
 ただ、松本時代の船山は決定力が低い印象はなく、むしろどんどんシュートを決めている印象でした。


 そこでJリーグのデータを取り扱っているFootball LABで2014年の船山の情報を見ると、やはり決定力は高かったことがわかります。
 パロメーターで言うと、決定力は20点満点中20点となっているそうです。
 あくまでも数字から割り出されたデータではあるわけですが、実際に松本時代の船山のイメージともマッチするものだと思います。



 しかし、今年の船山は金沢戦のみならず群馬戦でも決定機を外しており、決定力の面で物足りない印象を受けます。
 では、なぜジェフでは決めきれないのか。
 個人的には現状だと、船山への負担が大きすぎるのではないかと感じます。


 現在のジェフは船山1人のアイディアでチャンスを作って、船山本人がそのままゴールも狙わなければいけないことが多い。
 確かに長澤や井出なども攻撃センスがあって良いプレーを見せていますが、それらの選手たちが有機的に絡み合って1つの攻撃を作る展開は少ない。
 例えば長澤が得意のキープからスルーパスを出し、船山がシュートを狙う…というような状況であれば、船山もシュートに集中できると負いますが、現状だとそういったパターンはあまり出来ていない。
 攻撃の1つ1つが、それぞれ個人能力で作られていることが多いように思います。


 また、金沢戦では守備面でも2トップへの負担が大きかった。
 相手3バックにプレスをかけ続けなければいけない状況で、しかも最終ラインの押し上げも緩やかなのでFWの走る距離が長くなる。
 攻守に負担が大きく体力的に厳しい状況になれば、どうしてもミスは増えてくるものだと思います。



 もちろん、それにしても金沢戦では外し過ぎた…というのが、率直な感想でもあります。
 しかし、現状だと船山がチャンスメイクでも、得点面でもエースとして期待されている状況ではないかと思います。
 1人への負担が大きすぎればプレーの質も下がりかねないと思いますし、マークも厳しくなっていくかもしれない。
 今後のチームを考える上でも、他の選手もチャンスメイクやシュートの面で貢献できるような状況を作りたいところではないでしょうか。