選手は入れ替わったもののチームは"正常進化"
季節は2月に入ったばかりですが、早くもニューイヤーカップがスタートしています。
今年はJリーグ開幕が若干早くなったことで、例年以上に早くチームを作り上げていかなければならないのかもしれませんね。
今年のジェフは多くのメンバーが入れ替わった状況ですので、選手の能力を見極めるだけでなく選手間の相性や全体のバランスも考えながら仕上げていかなければならないと思います。
加えてニューイヤーカップは中一日で3試合を実施ということで、より多くの選手を試すことになるのでしょう。
各チームでコンディションのばらつきもあるでしょうし、かなりテスト的な意味合いの強い大会と言えるでしょうね。
なお、ブログの更新もニューイヤーカップに合わせて中一日にしていきたいと思います。
■カウンターから井出が先制
ニューイヤーカップ初戦、ジェフの相手は熊本となりました。
熊本は昨年末に小野監督が退任し、清川監督が就任。
清川監督は昨年まで熊本でヘッドコーチを務めており、監督に昇格した形となります。
この日の熊本は4-4-2。
監督が変わったとはいえ内部昇格ということで、基本的なサッカーは大きく変わっていないのではないかと思います。
それでもダイレクトプレーや前線を目がけた早いボールが増えた印象もあり、攻撃ではより縦に速く。
守備でもポジショニングを重視し、全体をコンパクトに保ちながら前へのプレスを積極的に行ってきた印象でした。
新体制ということで、まずはアグレッシブに前への姿勢を強く掲げているのかもしれませんね。
大幅に選手が入れ替わったジェフのスタメンは、GKは佐藤優也でDFラインは左から阿部、多々良、イ・ジュヨン、北爪。
中盤は左から井出、富澤、山本、長澤で、2トップに船山とエウトンといった布陣でした。
攻撃時はエウトンと船山が縦関係になり、ボランチでも富澤が下がってビルドアップする展開が多かったですね。
このあたりの細かな関係は今後も変わっていくかもしれませんし、徐々に出来上がっていく部分でしょう。
試合序盤は、熊本がボールを保持する展開。
熊本は昨年にも見られたサイドで細かくつないで縦に持ち込む展開だけでなく、素早く巻のポストにあてたり齋藤恵太が裏を狙ったりといった攻撃を作っていきます。
ジェフはプレスが前からうまくはまらず押し込まれ、ボールを保持しても後方から細かなビルドアップが作れず、昨年も良く見た状況になっていました。
それでも22分にはジェフのチャンス。
相手CKの守備からカウンターで長澤がボールを持って北爪に繋ぎ、北爪がシュートまで持ち込みます。
しかし、シュートは角度がなくGK原がブロック。
それ以降はジェフもボールを持つ時間が増えていきますが、シュートまでは持ち込めず。
すると、27分には熊本の攻撃。
船山が奪われたところから齋藤、巻とつないで八久保がシュートを放つも、GK佐藤がセーブ。
40分にも、熊本のロングカウンター。
後方から繋いでいって、巻が中央でボールをキープ。
後ろから走り込んできた上村がミドルシュートを放つも、GK佐藤がキャッチ。
この時間はジェフがボールを持つものの、熊本がうまくボールを奪って素早くカウンターといった形ができつつありました。
しかし、先に得点を奪ったのはジェフ。
後半アディショナルタイム、カウンターからの展開で中盤の長澤から右サイドを抜け出した船山にボールが入り、そのままセンタリング。
井出が逆サイドで飛び出して、ヘディングで合わせて先制ゴール。
GK原の飛び出しも中途半端でしたが、船山のボールも良かったですね。
井出も確実に合わせて、良いシュートを決めてくれました。
■試合終盤に点を取り合って2-1で勝利
後半開始と同時に、熊本は園田に代わって植田、村上に代わって高柳、黒木に代わって上原、巻に代わって平繁と4人を交代。
ジェフも多々良に代わって若狭、イ・ジュヨンに代わって近藤、富澤に代わってアランダを入れました。
後半、先に決定機を作ったのは熊本。
52分、アランダがワンタッチで叩いたパスが短く、熊本が拾ってカウンター。
嶋田がそのまま縦に持ち込み、平繁に繋ぐと上原がオーバーラップ。
その上原が受けてクロスを上げると齋藤がフリーでヘディングシュートを放ちますが、GK佐藤がセーブして失点を免れます。
アランダは視野の広さは感じましたが、コンディションはもう少しといったところでしょうか。
そのアランダのパスミスから作られたカウンターですが、ゴール前で齋藤のマークを見失った守備陣にも課題を感じました。
近藤が見るべきエリアで、こちらもまだ試合勘に問題があるのでしょうか。
続いて53分にも、熊本のビックチャンス。
熊本が右後方から左にパスをつないでいき、上原から斜め前方にミドルパス。
ジェフのバイタルエリアで平繁が受けて反転し、嶋田にラストパス。
ジェフDFラインの裏を取られてシュートを放たれGK佐藤も交わされますが、何とかゴールライン手前で近藤がクリア。
58分にも熊本の攻撃。
CB鈴木からグラウンダーの長い縦パスが出て、ジェフのMFラインとDFラインの間を取られます。
そこから右サイドに展開されてグラウンダーのクロスを上げられ、最後は嶋田がフリーでシュートを放ちますが大きく吹かしてしまいます。
このシーンでは鈴木のパスが良かったとも言えますが、一度熊本が左サイドでパスをつなぎジェフの選手たちがそこに密集。
そこから戻され後方でサイドチェンジされ、鈴木の前が空いたことで縦にパスを出されてしまいました。
昨年も片方のサイドで密集した後に後方で展開されると、逆サイドがぽっかりと空く課題が見られましたので、同様の問題が出てしまったことになります。
劣勢の展開が続くジェフでしたが、63分には高い位置での長澤のチェイスからボールを奪取。
そこから船山が受け、裏に抜け出したエウトンにスルーパス。
エウトンがヒールで北爪に繋ぐと、最後は井出がシュートを放ちますが、クロスバーに嫌われます。
この攻撃から熊本の勢いがトーンダウン、運動量も落ちていった印象でした。
65分にも、近藤からエウトンに縦パス。
エウトンがうまく落としてアランダが受け、長澤に縦パス。
長澤は転びながら出した井出を狙ったパスは通りませんでしたが、これを船山が受け中央に蹴り込むも相手選手にあたって終わります。
エウトンはポストプレーが安定していて、視野も広く判断も良いので、攻撃において要所要所で効いていましたね。
71分、熊本は齋藤に代えて坂元を投入。
ジェフは長澤に代わって小池が入りました。
76分には熊本が嶋田に代えて岡本を投入、上村に代えて中山を起用しました。
78分には熊本のチャンス。
DFラインから右サイドに繋いで、阿部の裏を取られる形に。
熊本は一度戻したところからクロスを上げると、最後は八久保がシュートを放ち、GK佐藤がパンチングで対応。
79分、ジェフはエウトンに代えて吉田を投入。
その直後の熊本の攻撃。
クリアボールを熊本が拾ったところから、中盤に繋ぐと右サイドを飛び出した八久保にパスを出します。
ジェフからすれば阿部の裏を取られた形で、中央に繋がれると坂元にフリーでシュートを放たれますが、枠をそれ事なきを得ました。
後半途中からはジェフの方が勢いでは上回っていましたが、チャンスは熊本の方が多かった印象です。
81分には熊本の上村に代わって、ベテラン藏川が出場。
これで交代カード8枚を使い切ります。
ジェフは84分に井出に代わって町田が投入され、6人の交代で終了となりました。
88分、熊本が中盤でボールを奪ったところから左サイドに展開。
外で上原がオーバーラップした動きを囮として、そのまま坂元が縦に仕掛けてクロス。
これがジェフDFの広げた腕に当たったようにも見えましたが、ホイッスルはならず。
その後の流れで、熊本が中盤でパスミス。
これを吉田が持ち上がると、4対3の数的優位に。
町田のシュートはGK原が一度はセーブしますが、小池が詰めて2-0とします。
しかし、得点を奪われた直後の流れで、熊本が1点を返します。
右サイドからの展開で平繁が裏に抜け出してうまく引き出すと、中盤の高柳に一度戻します。
そこからゴール前で八久保が受けターンをし、そのままシュートを放つとこれが決まって2-1に。
後半アディショナルタイム、熊本の攻撃。
バイタルエリアでターンで受けてターンしたところから左サイドに展開し、一度戻すと岡本がフリーに。
岡本がジェフDFラインを裏を狙ったスルーパスを出しますが、惜しくも合わず。
それがラストプレーとなり、2-1で終了となりました。
■選手は変わってもチーム全体のイメージは変わらず
非常に多くのメンバーが変わったジェフですが、チーム全体に関しては"正常進化"といったイメージでした。
"正常進化"とは特にモータースポーツでよく使われる言葉で、パーツや細部は変えるものの大枠のコンセプトは変えずに新車を作っていく考え方。
関塚監督はいろいろなサッカーが出来るタイプではないということもあるのでしょうが、これだけ選手が入れ替わってもサッカーは大きく変わらないことには驚きも感じました。
それだけ、やはりサッカーは監督が重要であると言えるのでしょうか。
昨年同様に守備では一度攻め込まれ、ボールを戻された後の対応に不安が見られました。
選手が1つのエリアに密集しそこで遅らせるといったことができず、逆サイドへのスライドが遅いので、どうしても他のエリアが空いてしまう。
58分の鈴木にロングパスを出されたシーンもそうだし、失点シーンも一度平繁が中盤に戻したところがフリーになり、そこからラストパスを出されてしまいました。
また前半見られたようにリトリート時にボールの奪いどころがはっきりしない点も気になり、これも昨年からの課題と言えるでしょう。
攻撃においても相手のプレスがかかっている状況だと、後方からの細かな組み立てが作れず。
今年も遅攻では前で行き詰ると、中盤の底から一発で大きく逆サイドに展開する形が狙いの1つなのでしょう。
しかし、大きく展開した後にどのような形を作るのか。
逆サイドへの人数をかけるのか、昨年のようにアーリークロスを積極的に狙っていくのかといった部分はまだ見えてこないところです。
この試合ではカウンター展開で、何度か相手の間を突く攻撃が作れていました。
昨年終盤から見られたように井出、長澤の両SHが中に入ってくるだけでなく、船山も下がって受けるシーンが目立ちました。
またエウトンなどがバイタルエリアに顔を出して、そこから展開する形も見られました。
しかし、熊本相手だから出来ていたのか、他のチーム相手に出来るかはまだわからないところです。
熊本はかなり積極的に前に出てきて、披カウンター時は2バックのような状態で守っていることが多かったので、ジェフがカウンターを作りやすかったという部分は確実にあったと思います。
加えて3ラインで守っていたために、どうしても守備に深みがなくコンパクトに守れていないとラインの間が空きやすい状態でした。
そのためジェフの前線や2列目の選手たちが、そこを使いやすかったという部分も大きいでしょう。
メンバー構成からしてもエウトンが軸となりつつ2列目の選手を活かしたいという意図はあると思うので、その形をどこまで追求できるかが今年の攻撃のポイントとなるのでしょうか。
また後半60分過ぎからはジェフが勢いを持って攻めることができていましたが、これも熊本が前半から飛ばしていたので先にスタミナ切れを起こした面があったと思います。
一方のジェフは途中投入された選手たちが動けていたので、勢いを持ってプレーできていた。
ジェフの場合、新加入の選手が多いので気合を入れて、早めに仕上げてきている選手が多いのかもしれません。
ただ、やはり連携面においては、熊本の方が攻守に狙いを明確に持ったサッカーができていたと思います。
熊本は前半のFWを素早く狙う形だけでなく、後半のバイタル狙いなども興味深かったですし、守備でも前からのはめ方がうまくできていた。
かなり前への姿勢が強い状況でしたので、これがシーズン中も持つのか、それともどこかで方針転換をするのかといった不安はあるでしょうが。
決定機自体は熊本の方が多かったのではないかと思いますし、問題はラストプレーの精度ということになるのでしょうね。
逆にジェフは細かな連携面に課題があるため、勢いで相手を攻め込んでいても確実なシュートチャンスまで持ち込めない時間帯が長く、これも昨年からの課題と言えるでしょう。
ジェフはメンバーが変わっても全体の印象は大きく変わらなかったわけですが、昨年の状況からすれば"変わらない"ことは決して良いこととは言い難いわけで。
もちろん良い部分があるのであればそこを残せれば良いのでしょうが、悪い部分ばかりを引きずってしまっては今季も昨年同様の不安が残ることになります。
果たして、新チームは新たな可能性を見いだせるのか。
新加入の選手たちの良さといったものも見られましたが、そこは昨年にも言えたことだと思いますし、チームとしてどういったものを作り出せるかが重要ですね。