2015シーズンを振り返る その3

 毎日のようにオフの動向は進んでおり、補強に関する発表も出ています。
 しかし、1人1人は良いとしてもますますテクニカルな中盤過多な状況になっている気がするのですが、その方向で大丈夫なのでしょうか…。
 さて、主に開幕時から7月末までを取り上げたその2に続いて、その3を取り上げます。
 そこからジェフは、また一度大きく舵を取ることになります。
■引いて守るサッカーに変わり一時的に改善
 開幕からのハイプレスも1ヶ月で不安が見つかり、成績が下降していったジェフ。
 攻撃においてもハーフカウンターが機能しなくなり、新たなバリエーションが作れず。
 守備においても前に出て行ってもプレスをはめきれず裏を取られることが増え、かといって後方も埋めきれず、中盤も空いてしまう状況に。
 攻守に軸がなく、中途半端なサッカーになっていました。


 4月中旬から長らく迷走していましたが、7月末にようやく戦い方が変わった印象です。
 全体的に後方に引いて守る時間帯が長くなり、重心を低くした戦い方に変更。
 要するに、昨年終盤の戦い方に近いサッカーになっていきました。



 これに合わせて、選手起用も変更に。
 最も象徴的だったのは、7月26日の熊本戦からキャプテンであるパウリーニョをスタメンから外したことでしょう。
 パウリーニョはハイプレス時のボール奪取役としては大いに貢献しましたが、それ以降は安易に前に出て行っては裏を取られるパターンが多発していました。


 全体的に引くことになり中盤の空いたスペースを、勇人と健太郎のバランスの取れるボランチコンビにすることで埋める狙いがあったのだと思います。
 2人は安定感があって、気の利いた守備ができる選手だと思います。
 一方でパウリーニョは守備の約束事が出来ていなかったことも大きかったのでしょうが、周りと息を合わせて守ることがなかなかできなかった。
 だからお目付け役の勇人が必須となっていたのでしょうし、正直使い方が難しく弊害も多い選手だったと思います。



 また7月中旬には富澤を獲得し、いきなりスタメン出場。
 ハイプレスを諦めたことでボールの奪いどころが低くなるため後方からの展開役と、カバーリング能力に期待したのでしょう。
 同時に2トップにしたことにより、安もレンタルで獲得。
 FWの枚数を増やすことと、後方からのロングボールのターゲットとして補強したのではないかと思います。


 また8月に入ってから、松田力をレンタルで獲得。
 縦に速く、強い選手で、ロングカウンターの起点となってくれました。
 8月15日の長崎戦、23日の長崎戦では連続ゴールを決めるなど攻撃面で大いに貢献。
 

 一方で谷澤が8月中旬から徐々に出番がなくなり、井出などが守備的に起用されることが増えていきます。
 また9月に入ってからは、右SBを金井から大岩に変更。
 より両SBが深く引いて、中央に絞る守備的な流れになっていきます。



 こういった戦い方の変化と夏の臨時補強によって、成績は改善します。

 しかし、これは一時的なもので、すぐにまた低迷を続けてしまいます。
■勝負強さも足りずPO進出もできずに終了
 後方に引いて守る戦い方で、裏を取られることは少なくなったジェフ。
 しかし、結局は課題を埋める応急処置にしかすぎず、全体の守備バランスは改善されませんでした。


 全体が後方に引くことで、逆に中盤のスペースがあき、そこから攻撃を作られることに。
 特に目立ったのが、サイドで一度ボールを深くまで持ち込まれると、そこに選手たちが寄ってしまい他のエリアが空いてしまうこと。
 そのためサイドを深く持ち込まれ、一度戻されて逆サイドに展開されると、完全にそこがフリーになってしまう。
 ボランチもサイドに寄りがちになるので中央のスペースも空き、そこを使われて決定機を作られる展開も目立っていました。
 そして、それを改善することは最後までできなかった印象です。



 後方に引くことで裏は取られないものの、中盤のスペースが空いてそこからやられてしまう。
 これは昨年から見られた傾向で、関塚監督の特徴と言えるでしょう。
 特に14年10月と15年8月からの引いて守るサッカーへの変更により、そこがより顕著に出ていたように思います。


 変更当初は何とか守れるものの、相手の研究にあって翌月からは成績が落ちる。
 それが2年連続で発生したことになります。
 結局行きつく先のサッカーが同じスタイルだったこと、行き着いた先の同じ課題が改善できていないことになるわけで、来年以降にも大きな不安が残る状況だと思います。



 攻撃においても変更当初は松田の加入などもあって勢いで何とか乗り切れましたが、その後はその攻撃を成長させることができずに苦しんでいきました。
 一時だけなら勢いで行けるものの、勢いだけでは長くは続かない。
 これも2年連続で同じことが言えると思います。


 9月以降も後半調子を上げてきた水野や、ペチュニクの左SHやCFでの起用。
 北爪のスタメン出場など様々なテストしていきますが、1つとしてものにすることは出来ず。
 結局チームとしての形が作れないために、選手を動かすしかないのでしょう。



 それでも今年はPO出場権を争うライバルも足踏みを続けていたこともあって、結果的に終盤戦までPO争いに加わることができていました。
 しかし、致命的だったように見えたのは、10月10日の福岡戦。
 前節愛媛戦で1-0で勝利していたにも関わらず、この試合でいきなり3バックを試して敗戦。


 そこからはもうボロボロだったと思いますし、選手たちもチームの方針が固まらないことに戸惑いがあったのではないでしょうか。
 シーズン終盤には、松田と田中をSHで起用して6バックのような状況に。
 昨年も町田や幸野、山口慶と走れる選手を起用して走力で守備の穴を埋めていましたが、考え方はそれと同じものだと思います。



 そして、11月14日の岡山戦、23日の讃岐戦と、最後の2試合でも無得点で敗戦。
 特に讃岐戦は、選手たちの動きが異常なほどに硬かった。
 結局、関塚監督になってから昨年のPO山形戦、今年の福岡戦、そしてラスト2試合と大事な試合で良い試合ができず、試合にも負けている印象です。


 ロンドン五輪予選でもこのような問題が起きていたようです。

「ノーリスクでいこう!」というなにげない監督のひと言が、選手たちに深い動揺を与えることになる。
(中略)
権田が述べた「ピッチ状態もよくないから、うしろで変な横パスをするんだったら、ノーリスクで前を向くことも必要だ」という解釈はおそらく正しい。関塚も権田が理解した意味で使っていたはずだ。しかし、「この試合に負ければとんでもないことになってしまう」と思った選手たちのナーバスな心理状態では、監督の意図を正しく読み取ることは難しかったのかもしれない。(サッカーキング

 こうなってしまった背景は五輪代表選手たちの幼さもあるのでしょうが、これによってロングボールを蹴る方向に進み流れが悪くなっていったとの記事です。
 ジェフでも最終節讃岐戦では、長いボールを蹴るよう監督が指示していたとスカパーの中継で紹介されていました。
 ロングボールがすべて悪いわけではないですが、選手たちが明らかにナーバスになっていたことも含めて、当時と似通ったところがあるように思います。


 関塚監督が大事なところで勝てないという課題は、川崎時代から長らく指摘されておりシルバーコレクターとも言われていました。
 川崎には実績があるとはいえ、逆にあれだけの戦力で長い間指揮を執っていたにもかかわらず、J1でタイトルを取れなかった監督でもあります。
 最終年にリーグ2位、ナビスコ準優勝で指揮を終えたのも体調の問題だけでなく、タイトルを取るためにクラブが決断したのだろうと感じました。



 ジェフは戦力で圧倒できるレベルではないことは、この数年間で痛いほどわかったはずで。
 そうなると地道にチームを作っていくか、勝負どころで勝てるチームになっていかなければならない。
 しかし、地道なチーム作りも勝負強さの面でも、大いに課題の感じるシーズンだったように思います。


 結局15年のジェフは、クラブ史上最低順位となるJ2での9位でシーズンを終了。
 8月に一度息を吹き返したとはいえ、全体的に見れば右肩下がりの状況で、来年以降もこのままいけば危ないかもしれない。
 京都や大分のような例もあるわけで、強い危機感を感じるシーズンだったように思います。