高橋氏がGMに 斉藤TD、唐井部長は強化部を離れる
ジェフ入りが報じられていた、高橋悠太氏のGM就任が発表になりました。
スポニチによると、「斉藤TDと唐井部長はすでに強化部門の中枢を外れ」ているとのこと。
この記事にはどこか悪意も感じられ、斉藤TDと唐井部長に責任を押し付けようとしている感もなくはありません。
しかし、若い高橋GMの下に斉藤TDと唐井部長が付くとも考えにくく、今後お二人は退団ということになるのではないでしょうか。
個人的には非常に残念です。
一般的な組織でも現場に近い役職の方が、仕事の即効性は高いと言えるでしょう。
サッカーでも人事などを取りまとめるTDやGMといった役職よりも、直接指揮を執る監督の方が短期間で影響が出やすいと思います。
例えばGMが高卒の選手を獲得たとしても、2、3年でモノになるかどうかは分からない。
しかも、初年度は仕事の引き継ぎや準備なども必要になってくるはずで、その人の色が出てくるのはさらに後になる。
そう考えると本来は監督以上に、TDやGMといった役職の方が長い目で見なければならない。
ジェフ時代の祖母井氏もチームが軌道に乗ったのは、GMに就任して5年ほど経ってからでそれまでは我慢が続いていました。
祖母井氏が退団してからのジェフは、何度も同職の人材を入れ替えこれで5人目となります。
07年からの8年間で5人も変えているのですから、クラブの方向性が定まらないのも当然だと思います。
また、有力なTD・GM候補は国内でもなかなかいないと思います。
クラブの方向性に関わり、人事管理を行わなければいけないわけですから、経験や実績、コネクションなどが重要になってくるはずです。
その中で斉藤TDは、十分に期待できる人物だったのではないでしょうか。
個人的には斉藤TDは、ようやくまともにチームを運営してくれる方が就任してくれたといった印象でした。
斉藤TDになってからのクラブの動きを中心に、振り返っていきたいと思います。
今回は憶測も含むものであることを、あらかじめご了承ください。
■長年の課題だった世代交代に着手
J2に降格してからのジェフは茶野、村井、林、藤田俊哉、オーロイ、ゲッセル、山口智、兵働などベテラン選手を中心とした補強を行ってきました。
早期のJ1昇格を狙ってのことだったのでしょう。
しかし、J1昇格は叶わずベテラン中心の補強をしていたため、チームとしての伸び代も少なかった。
ベテランを補強して昇格に失敗し、衰えたベテランが退団となり、さらにその穴をベテラン補強で埋める…といった悪循環に陥っていた印象もありました。
斉藤TDが就任してからのジェフは、そのベテランからの脱却を目指していた印象です。
深井正樹、櫛野亮、山口智、竹内彬、山口慶、兵働などが引退、あるいは退団。
サポコミでも「ベテランは補強しない」といった話をしており、意図的にベテラン選手に頼らない方向を目指していたのでしょう。
補強の面でも斉藤TDが就任してから、若手〜中堅中心に変わっていった印象です。
ナム、キム、栗山、オナイウ、森本、高木、田代、中村、金井、北爪などを獲得。
鈴木隆雅、山中、松田などレンタル選手が多かったことは多少気にはなりましたが、世代交代を目指すというビジョンは外からも感じ取れたのではないでしょうか。
特にキム、オナイウ、北爪といったポテンシャルの高い新卒選手は、ここ数年なかなか補強できていませんでした。
町田も斉藤TDがスカウト時代に、補強してきた選手だったはずです。
その後の栗山、北爪などに続く、専修大ルートの確立にも貢献された方だったと思います。
今後は専大ルートが消滅する可能性もありえるかもしれません。
斉藤TDは監督として三菱養和クラブで大きな成功を収めた方でもあり、若い選手を見る目を持った方でもあったのではないかと思います。
世代交代を考えるのであれば、必要な人材だったのではないかと私は思うのですが…。
■14年監督交代の責任は不明瞭のまま
監督招聘も鈴木監督に関しては、個人的には悪くない人選だったと思います。
実績も十分にあったし、実際のシーズンに入ってからもパスサッカーをある程度のところまで作れていた印象です。
少なくともそれまで経験の浅い監督を招聘し続けていたジェフですから、その時期よりは可能性を感じる監督だったと言えるのではないでしょうか。
しかし、関塚監督に関しては、失敗に終わった印象です。
ただ、斉藤TDは鈴木監督解任後、監督を解任したのは自分ではないという話をされていました。
そうなると鈴木監督の解任はもちろん、関塚監督の選定も斉藤TDによるものではない可能性がある。
そこに関しては現在も不透明なまま、責任の所在が明らかになっていない印象です。
以前にも神戸TDが外国人補強に関して質問され、「自分には権限がないから」と話されていました。
ようするに、ジェフのTDは権限がかなり制限されているのではないか。
それこそが大きな問題を含んでいるのではないかとも思います。
今回の高橋氏は一般的にTDより権限が高いものと思われる、GMに就任するとのことで個人的には驚きです。
GMに関しては以前のサポコミで質問され、「これまでにもGMという役職の人物はいない」と当時の三木社長が答えていたことがあります。
実際には祖母井氏も唐井氏もGMだったはずですが、あえてGMという役職を付けなかったのはそれだけ権限が制限させていることを示唆しているのではないかと感じていました。
ただ、高橋氏はGMといっても、サッカー界ではまだまだこれからの人材。
34歳と若く一度は楽天に就職しており、サッカークラブでの実績は神戸だけで、その神戸でも経験は7年だけ。
現在64歳で現役時代は日本代表選手で引退後も様々な経験を経験を積んできた斉藤TDでも抑制されてきた面があったとすれば、しがらみの多いであろうジェフ内部で高橋氏が主導権を握る姿というは今のところ想像ができません。
そうでなくともコネクションや経験が重要になるであろうGM業ですから、突然外部から若いGMを招聘するというのは正直不安も大きいと思います。
そもそもジェフアマチュア監督、トップチームのコーチ、スカウトと、様々な面で貢献をしてきた斉藤氏にはTDを与え、外部から加入したまだ実績の少ない高橋氏にはGMといった役職を与えるというのは失礼な話ではないか。
役職が全てではないにせよ、あえて若い高橋氏にGMという権限を与えて、誰かにとって扱いやすい人事をしただけなのでは…と勘ぐってしまいます。
神戸でもそれに近い立場だったのではないかとも思わなくもないですし。
憶測で疑いを持つのはよくないことかもしれませんが、結局のところ根本的なジェフの問題は表に出ていない内部にあるのではないかと思います。
その話を避けて通っては、いつまでたっても堂々巡りで終わってしまう。
そういった状況下で現在の状況を良しとしないのか、それとも堂々巡りを続けることを選ぶのか。
あるいは、いっそ諦めてクラブから距離を取るのか…。
妥協点を見つけられれば良いのかもしれませんが、いずれにせよ難しい判断を求められているように思います。
■「作り直し」はどこに
島田社長に関しても、親会社の言うことは絶対という立場でしょうから仕方がないということもあるのでしょう。
このチーム状況で関塚監督が継続するのであれば、それも親会社の意向やメンツを保つためなのかもしれません。
その監督の代わりに、斉藤TDと唐井部長が責任を取らされた可能性もあるのではないでしょうか。
そうであるのなら、当然この人事にも納得できないものがあります。
親会社の意向が強いと感じる部分のあるジェフだからこそ、個人的には2014年1月のサポコミで社長と斉藤TDが「作り直し」を明言したことに関して、大きな期待を抱いていました。
スポナビによる宇都宮徹壱氏のコラムでも、このように書かれています。
「柏にしても甲府にしても神戸にしても、レアンドロ・ドミンゲスやダヴィやポポみたいな絶対的な存在がいて、『これなら勝てる』という形と自信がありますよね。ウチの場合は、みんなで形を作って、みんなで点を取る感じ。ウチが一番、よりどころにしたいのは、ナビスコ連覇時代にはあった運動量」そこで島田社長が強化のトップに据えたのが、斉藤和夫TDである。そんな彼も「オシム時代への回帰」という点で、島田と意見が一致したことを認めている。
「やっぱり、オシムさんが監督をしていた頃のサッカーが理想ですよね。あの時、みんなが感じていたワクワク感をもう一度、取り戻すことはできないか。そう、社長とも話をしました。私自身、オシムさんとは一緒に仕事はしていませんが、現役時代から『日本人は自分たちの特性を生かすサッカーをすべきではないか』という思いがずっとあった」
長い引用になってしまうので短くまとめてみましたが、13年10月にアップされたこの記事が出た時点では社長とTDが同じ方向を向いていた印象も受けました。
上はコラムの前編で、後編で斉藤TDはこのように話しています。
何より反省すべきは「J1復帰」に重きを置き過ぎたばかりに、強化の方向性が目まぐるしく変わってしまい、一貫したビジョンを構築できなかったことであろう。斉藤和夫TDはこう語る。 「(J2に降格した)2010年の時点で、降格した原因をしっかり分析して、もっとしっかりしたビジョンを築くべきでした。それを省いてしまって『すぐに(J1に)戻れるだろう』と考えてしまったのが、一番の失敗だったのではないでしょうか。この3年間を無駄にしないためにも、何かを始めなければならない。サポーターも、単に勝った、負けたではないものを求めていると思いますので」
このコメントからしても、サポコミでの「作り直し」という話からしても、斉藤TDの意思というのは一貫していたと思います。
そして、社長もTDも同じ方向を向いて取り組むことで、内外からのしがらみを遮断し団結してクラブ運営を進めてほしいという思いが自分の中にはありました。
しかし、実際にはそうではないことが起こった。
14年シーズン途中に監督が交代して、チームの方向性はまた変わってしまったことになるわけです。
やはりあの監督交代劇は社長か、あるいはさらに上の何者かが決断したものだったのではないかと疑ってしまうところがあるわけですが…。
改めて斉藤TDの処遇に関しては、残念な気持ちでいっぱいです。
07年の唐井氏からバトンを受けた昼田氏も大量流出後の大変さもあったでしょうが、名前先行の補強ばかりでベースを作れず、後に社長から名指しで経営が悪化したというような話をされていました。
そういった話をするのもいかがとは思いますが、実際問題として昼田氏は安定したチーム運営ができていなかった印象があります。
神戸氏も早期J1昇格というプレッシャーもあったのかもしれませんが、ベテラン補強ばかりで監督に関しては経験の浅い人材が続いていました。
そこから斉藤TDは、ようやくジェフを"正常化"しつつあったのではないかと思います。
選手との契約の問題などもあって、一気に世代交代を進めるのは無理があったのでしょう。
それでも徐々に、変化は出ていたのではないかと思います。
他クラブのことを言うのは失礼でしょうが、京都や大分も一時はプレーオフ争いや昇格までしていたにもかかわらず、ガクッと成績が低迷してしまった。
京都は祖母井氏が抜けた翌年に、強化部が方針を変えて苦しんだ印象もあります。
ジェフも関塚監督は維持して強化部には責任を取らせるようなことをしていては、同じような運命をたどる可能性もあるのではないでしょうか。
まだ斉藤TDと唐井部長の退団等は正式発表になっていませんが、ひとまずお疲れ様でした。
個人的にはJリーグのためにも斉藤TDにはぜひ次のクラブで頑張っていただきたいと思うのですが、ジェフではご苦労も多かったでしょうし、そう簡単に次とはいかないのかもしれませんね。
新たに就任する高橋氏に関してはまだ未知数ですが、ジェフで経験を積んで頑張ってほしいと思います。
正直不安な面も多いですが、GMとしてはまだ若い方ですから、決めたからには長い目で見守る必要があるのではないでしょうか。