後半アディショナルタイムのPKで勝点1を拾う

 改めてフクアリ10周年おめでとうございます。
 フクアリのオープン当初はチームも上り調子で、Jリーグの中でも1つの流れを作っていた自負もありました。
 このまま結果を残し続けるのは難しいだろうなぁとは薄らと思っていましたが、さすがに10年後にJ2で苦しんでいるところまでは想像することができませんでした。


 ただ、盛者必衰。
 どんなチームであれ、高みに居続けることはそう簡単ではないのでしょう。
 問題は苦しんだ時に、クラブがどういたビジョンを描けるか。
 辛い時でもグッと我慢して、飛躍の準備が出来るかどうか。
 長い目で見ると、そこが大事なのではないでしょうか。
■大分の2ゴールで前半折り返し
 ジェフは4-4-2に戻してきました。
 前々節愛媛戦のスタメンと比較すると、健太郎に代えて勇人。
 左SHには谷澤が入り、井出はベンチにも入らず。
 また、森本、安がベンチに入り、オナイウもベンチから外れました。


 大分は前節栃木戦のスタメンと同じ11人。
 元ジェフの荒田、兵働もスタメン継続。
 三平が負傷中でこの試合ではエヴァンドロがベンチから外れ、若い後藤が入りました。



 先に決定機を作ったのは大分。
 13分、右サイドからのロングスロー。
 高木が直接触りますが、大きく弾き返せず。
 こぼれたところをダニエルが拾ってシュートを放ちますが、ゴール前で何とかキムがブロック。


 17分、今度はジェフのビックチャンス。
 左サイドに流れた松田が中央に入ってきた水野に繋ぐと、そのまま水野がシュート。
 GK武田がボールをこぼしたものの、ゴールラインの前で何とかストップ。



 大分は前節と同じような試合の入り方。
 4-4-2でボックスを作って、ポジションを重視して守る。
 攻撃ではボールを奪ったら、ダニエルと兵働から素早く長いボールで裏を狙う。


 しかし、ボックスを守る意識は高いものの、そこから外へのチェックに行けず相手の攻撃を遅らせることが出来ない。
 そのためジェフはボランチやサイドで、自由にボールを持つことができていた。
 立ち上がりはその優位を活かし切れずそこから良い展開を作ることができませんでしたが、ようやく17分に形が作れたことになると思います。



 しかし、20分の大分の攻撃。
 ダニエルからのロングフィードに対してパウリーニョが触ったものの跳ね返し切れず、松本怜が受けると伊佐へつながれます。
 伊佐がダイレクトでシュートを放ち、GK高木がこぼしたところを荒田がゴール。


 ジェフはいつもと同じパターンで、右サイドを一度攻め込まれたところから中央に展開され、ダニエルがフリーになって長いパスを出されてしまいました。
 ダニエルから長いボールが出てくるのは前節からわかっていたと思うのですが、失点時以外でもそこを抑えきれないシーンが目立っていたと思います。
 この試合では前線でペチュニクを使っていたため、なおさらそこで後手に回っていた印象がありました。



 得点が動いてからは、大分の守備も若干修正された印象です。
 特にサイドへの守備に対する警戒が増していき、簡単に空くことはなくなった。
 ただ、それでもまだ中から外に出ていく動きは遅く、付け入る隙はあったように思います。


 31分、ジェフの攻撃。
 右サイドからのスローインを谷澤がキープして、中央にセンタリング。
 ペチュニクがファーで合わせますが、枠に飛ばし切れず。



 同点ゴールを目指すジェフでしたが、34分には再び失点。
 松本怜が右サイドからアーリークロス
 これをファーの若狭が、ダイレクトで叩きつけて2-0に。


 この場面では右サイドに伊佐が流れて縦に持ち込まれ、戻されたところの松本怜がフリーになってクロスを上げられてしまいました。
 谷澤が攻め込んだ後の戻りが遅く、サイドで数的不利になっていたところからやられてしまいました。
 ペチュニク、水野、谷澤と攻撃に特徴のある選手が並んだことになりますが、その分ジェフは前方の守備に不安を抱えていた印象です。


 37分、ジェフのチャンス。
 右サイド水野のセンタリングからペチュニクが合わせますが、GK武田の正面でゴールならず。
 31分のシーンでもそうですが、大分の守備陣はセンタリングに対してニアが空く場面が目立っていましたね。
■後半ATにPKでなんとか同点
 大分は51分、荒田に代えて吉平を投入。
 荒田は怪我での交代。
 吉平は大分U-18所属で、2種登録の選手だそうです。


 55分、ジェフの攻撃。
 右サイドで水野が仕掛けて、相手を抜き去り素早く中央へ。
 これをファーでペチュニクが頭で合わせてゴール。
 ペチュニクとしては3度目の正直となる、右サイドからのクロスからのチャンス。 
 これで1-2となります。



 57分には大分のチャンス。
 右サイドからのクロスの跳ね返りを兵働が拾って、左サイドの為田に展開。
 為田がグラウンダーのクロスを上げ、松本昌也がフリーで合わせますがGK高木の正面。


 その直後、大分の選手交代。
 右SH松本怜に変えて、CB安川を投入しました。
 右WBを西、左WBを若狭とし、安川、ダニエル、鈴木による3バックに変更。
 前半からペチュニクのマークを余らせることが多くそこから失点したので、そこへの修正ということでしょう。



 62分、ジェフの攻撃。
 左サイドで谷澤のパスを受けた中村がクロス。
 ファーの大岩が足元で受けてシュートを放つも、相手選手に当たりゴールにはなりませんでした。
 中村はこの試合、これが初めてのクロスだったのではないでしょうか。


 その直後、大分は西に代えて山口貴弘を投入。
 そのまま、右サイドに入りました。
 これで大分は早くも、3枚のカードを使いきったことになります。


 しかし、大分の選手たちは早くも足が止まってきており、60分頃から防戦一方に。
 ジェフとしては同点ゴールの欲しい展開ですが、ボールを持っても攻撃面で連携が見られずシュートにも持ち込めない時間帯が続きます。
 外からのロングボールが多く、パワープレーのような状況になってしまいます。
 大分は3バックにしたことでゴール前の穴が出来なくなり、サイドへの守備の遅れも小さくなっていきました。



 ジェフは74分、勇人に代えて安を投入。
 続いて77分には、松田に代えて町田を投入。
 しかし、大きな変化にはつながらず。
 

 79分には大分の攻撃。
 中盤で大分が拾って、左サイドの安川へ展開。
 素早くクロスを上げ伊佐が頭で合わせますが、ジャストミートせず。


 83分にも、大分のチャンス。
 ジェフのクリアを安川がヘディングで跳ね返すと、キムと富澤が処理しきれず伊佐が抜け出します。
 GK高木との競争になりますが、高木が先に触って何とかクリア。



 その直後、ジェフは最後の選手交代。
 大岩に代えて金井を投入。
 金井を前に出して、水野をSBに回しクロスを上げていく狙いだったのだと思います。


 86分、ジェフの攻撃。
 右サイドからのCKを水野が蹴ると、一度は弾かれますがパウリーニョが中盤で拾います。
 そのままミドルシュートを放ちますが、GK武田がセーブ。



 このまま試合終了かと思いましたが、後半アディショナルタイム
 ペチュニクへのロングキックのこぼれ球を拾った金井が、相手に倒されてPKを獲得。
 微妙な判定にも見えましたが、これをペチュニクがど真ん中に決めて2-2。


 その後、ジェフ、大分ともにゴールを目指しますが、どちらも得点はならず。
 そのまま引き分けで試合終了となりました。
■中も外もどっちも取れず
 大分の守備は、決して良い状態ではなかったと思います。
 伊佐も長い時間、足を釣っていましたし、非常に苦しい試合だったといえるでしょう。
 それに対して、ジェフが攻めあぐねた印象の強い試合でした。


 特に前半は両チーム共に、前方の守備に課題があったと思います。
 ジェフはダニエル、兵働からの縦パスを防げなかったし、大分もジェフのボランチやサイドへの守備が遅れがちに。
 その結果、両ゴール前でのプレーが多い状況になっていました。



 しかし、大分は前半途中から、サイドをケアするようになっていった。
 それによって、ジェフは徐々に攻撃を作れなくなっていった印象です。
 後半途中から大分が5-4-1になってからはさらに横へのケアがしやすくなり、ジェフは攻撃の手立てを失ってロングボールばかりになっていきました。


 サイドを切られると攻撃が作れなくなる。
 それだけ、ジェフはボランチからの縦パス展開が作れていないということだと思います。
 だから、大分としても無理に相手ボランチの守備にはいかず、その分サイドをケアすればよかったのではないでしょうか。
 勇人が抜けてボランチが1枚になってもビルドアップ面で大きな問題が出なかったのは、もともとボランチからの展開が作れていないからだと思います。
 関塚監督になってからの大きな課題ではあるわけですが、それがここにきて大きく目立ってしまった印象です。



 また、ここ数ヶ月ジェフは攻撃時にSHが、中央に入ってプレーすることが増えていると思います。
 4-4-2でトップ下が空白になるので、そこでSHがプレーしようということなのではないでしょうか。
 確かにその動きによって、中央で水野がボールを触る回数は増えた。
 しかし、そこから他の選手がうまく絡んで攻撃を作れている形というのは、なかなか作れていない印象です。


 その分相手の守備陣が中央寄りになって、大岩へのマークが遅れる場面が多かったと思います。
 ジェフは中央からの攻撃が作れていないこともあって大岩に展開することが多かったけれど、大岩は決してクロスが得意とは言えない選手。
 そのため、右サイドの大岩に展開しても期待薄…といなってしまうことが多かったように思います。
 だから、最終的には右SB水野にせざるを得なかったのでしょう。
 ただ、もちろんこれはスタメンで使える策ではないと思います。



 それならば、水野はやはり右サイドに張らせておくべきなのか。
 しかし、右の水野からだけだと、中央での形が作れないし…。
 でも、水野が中に入ってきても、そこを活かせる形が作れていないし…といった状況で、結局中も外もどっちも取れず、攻撃の強みを作りきれてない印象があります。


 それでもこの試合では運も重なって、なんとかかんとか勝点1を拾った試合。
 他のライバルチームもパッとしない状況のようですし、プレーオフに進めさえすればチャンスはあるかもしれない。
 この勝ち点1を無駄にしないように、次に活かすことを考えていきたいところですね。