栗山「今日は井出と水野がうまく相手の間に入ってくれた」

 天皇杯岐阜戦後のコメントより。
 井出や水野が相手の間に入ることにより、井出、中村、トップとパスコースが増えたとのこと。
 それによってうまくパスを回せて、やりやすかったとのことです。


 確かにこの試合では、いつもより井出、水野が中央寄りに入っていく動きが多かったように思います。
 それによって中央に人数が増えて、相手を押し込むことができていた印象があります。
 岐阜の守備も中盤から前のプレスはあまり厳しくなかったので、それもあって後方から中盤ではパスを回せていたという感覚があったのかもしれません。



 ただ、水野、井出が中に入ってくると、当然その分サイドは薄くなる。
 例えば前半途中から岐阜はレオミネイロを左SHに回したことでサイドの守備が疎かになっていたのですが、その時間帯も水野が中に入っていくことが多かったので、相手の弱いところを突くことが出来なかった。
 43分にようやくそこからクロスを上げることができ得点に結びついたわけですが、後半になるとレオミネイロを前線に戻したことからも、結果的にこのフォーメーションチェンジは岐阜の失策でしょう。
 ジェフの右サイドを甘く見ていた部分があったのかもしれませんが、ジェフもそこを使うまでには時間がかかってしまったことになります。


 この試合のジェフの武器は、水野の個人技とセットプレーだったと思います。
 これをうまくリーグ戦にもつなぐことができれば…とも思うのですが、立ち位置としてはペチュニクの代役といったところではないでしょうか。
 タイプは全く異なる2人ではありますが、「右SHの選手に自由にやらせて個人技でチャンスを作ってもらう」という形は同じ。
 そういった意図で、天皇杯の2試合は水野が右SHで使われたのだろうと思います。


 そのためペチュニクと水野を同時起用するわけにはいかないでしょうし、水野はスーパーサブといったところになるのではないかと思うので、そのままそっくりプラスになるかというと難しいのではないでしょうか。
 もちろんベンチのカードが増える可能性は期待できるかもしれませんが、大きな変化とはいかないかもしれません。
 ペチュニクをFWとして水野が右サイドで活躍できる形が作れるのであれば違うでしょうが、そうなるとまた別の難しさが出てくるのだろうと思います。



 心配なのは、左サイドの中村。
 右SBの大岩もそうでしたが、SHが中に入るためサイドで孤立することが多かった。
 中村が深い位置まで上がっていってクロスを上げるシーンはほとんどなかった印象ですが、これはここ最近のリーグ戦でも見られる課題だと思います。


 守備面を重視してか谷澤でなく井出が起用さることがが増えているため、前でタメを作る選手がいなくなり中村が前に出ていけないといった点もあると思います。
 しかし、それだけでなく、単純にサイドへのフォローが少ない。
 昨年からジェフはボランチやトップ下がサイドにサポートに行って中村がクロスを上げる形を作っていたわけですが、それがなくなったことで中村が高い位置でクロスを上げる回数が減っている印象です。



 やはりこれに関しては、鈴木監督の遺産というところが大きいのでしょう。
 今季は特に前への姿勢を強くしたサッカーでスタートしたこともあって、サイドでトライアングルを作る形が失われてしまったのではないかと思います。
 昨年終盤はサイドでショートパスをつないでいる間にボランチがニアに飛び出す形もみられましたが、現在はサイドでパスをつなげないためボランチの飛び出しも単発になることが多い印象です。
 結果、中村自身も攻撃参加のタイミングを迷うことが多く、周りもどのようにサイドを使うのかはっきりとしなくなっているように思います。


 その上でSHを中央でプレーさせる形を取るということになると、ますます周りの選手と中村との距離感は空いてしまう。
 中村の場合は例えば米倉のようにランニングコースを開けてあげて活かされるタイプではなく、近くでフォローしてあげて連携で前に出ていくタイプなだけに、距離感が空いてしまうと良さを出しにくいところがあると思います。
 現状だとプレースキッカーとしてしか、機能していないようなところがあるのではないでしょうか。



 考えにくいとは思いますが、中村からのクロス展開を諦めたということなのか…。
 その分、中央からの攻撃を厚くするという考え方も出来なくはないかもしれませんが、それならば中央からの攻撃を作れるようにならなければいけない。
 しかし、これまでの経緯から考えると、中央攻撃を期待するのは簡単ではないようにも思います。
 サイドの整備と中央からの攻撃のバランスを、今後どのように考えていくのでしょうね。