昨年終盤のサッカーに戻して久々の勝利
気温だけではなく、湿度もかなり高く蒸し暑い気候となった昨日のフクアリ。
その影響もあってか、試合内容も両チーム共にかなり重い、苦しそうな一戦となりました。
この日の観客は8391人となりましたが、久々の勝利をあげたことで、今後の動員も変わってくるのでしょうか。
■谷澤の今季初ゴールで先制
この試合でも、ジェフはスタメンが入れ替わりました。
北朝鮮代表に選ばれた安が戦線を離れ、怪我明けの森本が復帰。
シーズン序盤以降レギュラーを維持していた町田がベンチからも外れ、森本とペチュニクの2トップ気味に。
右SHには井出が入りました。
ベンチからは大岩が外れて、水野が久々に入りました。
そして、この試合でもパウリーニョはベンチスタートに。
対する徳島は、前節金沢戦でコンディション不良のため欠場していた、元ジェフのアレックスがスタメン復帰。
それ以外は、不動のメンバーとなっています。
チームの調子が良いこともあって、メンバーが固まってきている印象です。
先にチャンスを作ったのは徳島。
10分、右サイドからのアーリークロスに対して、佐藤が粘り対面のキムが右サイドに釣り出される形になります。
佐藤からの落としを受けた廣瀬は、前方でフリーになった津田にパス。
そのまま津田はシュートを放ちますが、ゴール上部をかすめゴールはならず。
しかし、いきなり決定的なシーンを作られました。
この日のジェフは、立ち上がりから全体のラインが低め。
相手がボールを持ったら、後方で待ち構えるスタイルになっていました。
立ち上がりから10分の間に、何度もペチュニクのところで前を向かれ攻撃を作れていました。
10分の徳島の攻撃も、中盤中央でエステバンが縦パスを出した流れの後に作られたものでした。
12分、ジェフが右サイドの奥からのFK。
中村が蹴ったボールを、徳島GK長谷川が前に出てパンチングしようとするもミス。
ペチュニクの足元に入りましたが、シュートは右に逸れます。
その後、試合は均衡状態となり、シュートシーンが少ない展開に。
徳島は4-4-2できれいなポジションを保った守備を形成。
それに対してジェフはボールを持つ時間が長くなり、サイドで起点を作ろうとするもののなかなかチャンスを作れずにいました。
しかし、徳島も攻撃の形がうまく作れない。
ジェフの前線の守備の問題もあって、中盤の高い位置でフリーになってボールを持てる回数は多かったものの、そこから先の精度に欠いていました。
高温多湿な環境でのアウェイゲームで、あまり無理をしないという意図もあったのでしょうか。
32分、突然ゴールが生まれます。
左サイドの中村から、中央の井出にパス。
井出がトラップミスして目の前に流れてきたボールを、谷澤が思い切ってダイレクトシュート。
これがゴールネット右隅に決まり先制します。
谷澤らしい弾道のゴールでしたね。
これが谷澤の今季初ゴールとなりました。
38分には徳島の右サイドからの攻撃。
藤原からのクロスを佐藤が落として、津田が持ち込みシュート。
しかし、GK高木がキャッチ。
先制ゴール後は、ジェフが引いて守る時間が長くなっていきました。
前半途中からジェフは、守備時のペチュニクの位置を若干下げた印象があります。
それまでジェフのボランチ前で自由に持たれていたため、その前に選手を置きたかったということではないでしょうか。
ペチュニクは相手にかわされるシーンが目立っていましたから、かわされるくらいならボランチの前で壁になってほしいということだったのかもしれません。
■後方を固めて1点を守りきる
1-0で折り返して後半へ。
さすがに前半終盤の戦い方を続けるのは厳しいと見たのか、後半からジェフは再び前へに出ていく動きを見せていきます。
ただ、FWが無理に深い位置まで追う、というようなプレーは少なかったですね。
相手がボールを持ったら後方に下がる。
そこから前に出ていくといったところで、前半よりも前への勢いを上げていった印象です。
58分、徳島が選手交代。
廣瀬に代わって井澤を投入
この時間帯から、徳島がボールを持つ時間帯が長くなります。
64分、徳島FW佐藤が足を捻って負傷交代。
代わりにFW長谷川悠が入ります。
徳島は早くも2枚目のカードを切ることになります。
ジェフとしては徳島に攻め込まれる時間帯が増え嫌な流れかなとも思っていたのですが、結果的にここで一息つけたのは大きかった気もします。
67分、ジェフは森本に代わってオナイウを投入。
72分には、井出に代わって田中を起用。
谷澤を右に移し、田中を左へ。
左サイドを狙われていただけに、守備強化という意味もあったのではないでしょうか。
73分、徳島はアレックスに代えて広瀬を投入。
藤原を左SBに回し、広瀬は右SBでプレーしたようです。
アレックスも負傷交代だったようですね。
後半立ち上がりこそ前への姿勢を見せたジェフですが、それ以降は前に出られず後方で守る時間が増えていきます。
その結果、両ゴール前でのプレーが少ない後半となりました。
76分、両チームにとって久々のチャンス。
徳島のエステバンが中盤で拾って、そのまま持ち上がりクロス。
これを長谷川が頭で合わせますが、ゴール左を逸れます。
79分、中村に代えて田代を投入。
田中に続き、左サイドの守備改善という意図だったのではないかと思います。
(コメント欄で中村は負傷交代という情報をいただきました。)
81分、徳島の決定機。
右サイド若干引き気味の位置で広瀬がボールを持つと、サイドの裏を長谷川が走ってフリーでボールを受けます。
マイナスのクロスを津田が足元で受けると、フリーでシュートを放ちますがGK高木の正面。
この日の津田は、幾度となくビックチャンスを外していましたね。
その直後にも、徳島の攻撃。
FWを目がけた縦パスを一度はジェフがカットするも濱田に奪い返され、右サイドでフリーになった井澤へ。
井澤はニアの津田めがけてクロスを上げるも、若干ボールは高く中で合わず。
続いて86分。
徳島が右サイドから左サイドへパスワーク。
右サイド奥を取って、再び中央へつないで行って、後方でフリーになった濱田へ。
濱田がミドルシュートを放つもゴール枠外。
その後も徳島はボールを持つもゴールを奪えず。
そのままジェフが逃げ切って久々の勝利となりました。
■低重心な昨年のサッカーへ
先週、昨年終盤の戦い方に戻す可能性に関して話してきましたが、この試合から本格的に変化が見られたといった印象です。
無理に前にはプレスをかけず、4×4でラインを低めにして後方を人数で固めて守るサッカー。
相手に高い位置までボールを持ち込まれても、縦パスが入ったところでCBとボランチのプレスバックで守る守備。
特にゴール前に人数を固めるスタイルですね。
今季前半のようなハイプレスはもちろんのこと、金沢戦から見せていた5トップのような戦い方とも全く違う。
高い重心を目指していたところから、一気に低い位置に重心を下げた守備で戦った試合と言えるのではないでしょうか。
それを「前向きに選んだ」というよりは、もう「それしか道がなかった」のだろうと思います。
ただ、内容としては決して良いものとは言えない出来だったのではないかと思います。
シュート数も6本対8本で徳島の方が多かっただけではなく、決定機も徳島の方が多かった。
津田が1本でもチャンスをものにしていれば、結果はわからない試合だったでしょう。
徳島の攻撃に助けられた試合と言えるでしょうし、試合内容からすれば引き分けでもおかしくない出来だったのではないでしょうか。
ただ、それでも現状を見れば、これが一番無難なやり方なのではないかとも思います。
パウリーニョを外したのも後方を固める守備にするため、勝手に前に出て行かれるのを嫌がってのことなのでしょう。
もっとも栃木では4×4をこなしていたわけで、まったくそれができないかと言えばそうではないようにも思うのですが。
しかし、後方を固めるにしても、課題は多いように思います。
後半もあれだけピンチを作られましたし、例えば86分にも左から右へ、右から中央へと徳島にパスをつながれたシーンでは、少しずつマークにずれができていました。
徳島のパススピードが遅く攻撃も雑な面があったので救われたものの、より精度の高いパスワークをやられていたら危なかったように思います。
また、ペチュニクの守備にも不安が残ります。
いくら4×4で後方を固めるにしても、4×4が無防備な状態で守る状況が続けば、リスクは大きくなってしまう。
前節の対戦相手である熊本も後半は4×4だけで守るような時間帯が増えて失点がしたように、いかに前の2人で追いかけて相手の攻撃を限定するかが重要だと思います。
昨年はそこで町田や幸野などが追いかけていたわけですが、ペチュニクは広い範囲を守るには走力に課題がある。
とはいえ、ペチュニクは攻撃ではアクセントをつけられる選手ということもあって残したのでしょう。
右サイドから中央に移したのも、井出を使って4×4をより強固にしたいという狙いがあるのかもしれませんが、その分今度は中央前方の守備に不安が出ていたように思います。
そして、何よりも気になるのは昨年も結局このサッカーで昇格に失敗したわけですから、「元に戻した」だけでは同じことを繰り返す可能性がある。
一度サッカーを元に戻したのは仕方ないにしても、そこからさらに何をプラスできるのか。
そこが今後は重要になってくるのではないかと思います。
攻撃面においては、そこまで大きな変化はないと思います。
得点シーンもラッキーな面が大きく、谷澤の一発で決まった流れ。
決して相手を崩したわけでもないし、狙い通りの形というわけでもないのでしょう。
その他のシーンでもチャンスはほとんど作れなかった。
ただ、守備を固めるサッカーなだけに、この形の方が大崩れしないのかなとは思います。
勝点も少しずつかもしれないけれど、稼ぎやすくなるかもしれない。
また、関塚監督に合ったサッカーとも言えるのかもしれません。
関塚監督自身はハイプレスや前に重心を置くサッカーを理想としているのかもしれませんが、実際に関塚監督が結果を出すチームはそこから妥協したこのスタイルの方が多いのではないかと思います。
とはいえ、どこまでこのサッカーで伸び代を作れるのか。
昨年終盤から今シーズン始まってスタイルを大きく変えたのも、昨年のサッカーでは限界があると思ったからではないでしょうか。
それだけにこのサッカーに戻したということは1つの諦めともいえるでしょうし、実際パウリーニョが2試合続けて試合に出なかったことからしても非常に大きな決断だったと思います。
このサッカーに戻した以上は結果だけなく、ここからのさらなる発展の可能性を見せてほしいところではないでしょうか。