関塚監督「今日の試合は我々の自滅だった」

 徳島戦後の試合後のコメントです。
 まとめると、「前半は守備から攻撃へという形」だった。
 「後半途中まで組織された形はできていた」。
 しかし、「最後に自滅でこの試合を失った」という評価のようです。


 短いコメントなので細部まではわかりませんが、1つ1つ見ていきたいと思います。
 まず「前半は守備から攻撃へという形」だったというコメント。
 実際、試合展開としてはそのような状況だったと思います。


 前半の戦い方があれで良かったと考えるかどうかに関してはこれだけではわかりませんが、ハーフタイムに「もう少し前に出ていこう」と話したそうですから、少なくとも攻撃に関しては満足していなかったということなのではないでしょうか。
 実際、「守備から攻撃」と言うには、攻撃機会が少なすぎましたね。
 かといって、徳島の方も前半は攻守に良いサッカーができていたようには見えませんでしたから、攻め込む隙は十分にあったと思います。


 しかし、そこでジェフがチャンスを作れない時間が続いた。
 前半の戦い方が悪くないと判断され、状況によっては「守備から攻撃」も狙っていくチームを目指すとするのであれば、やはりカウンターの形をより確実に作れるようになっていかなければならないのではないでしょうか。
 パスワークで崩しきるチームを目指すのであれば遅攻を優先していくという考えもあると思うのですが、現状の方向性ではそうでもないと思いますし。



 そして、「後半途中まで組織された形はできていた」とのこと。
 これに関しては意外な印象でした。
 後半の早い時間帯からジェフはラインが下がりがちになって、相手選手を捕まえきれなくなっていたように思います。


 それでも評価が高いのは、攻撃において若干改善点が見られたからでしょうか。
 前半は空きがちだったSBやボランチがボールを持っても、そこからどう攻撃を作るかが見えてこなかった。
 しかし、後半に入ってからは、サイドに人数をかけるようになったこと。
 そして、サイドの裏を狙うことを、意識的にやっているような印象がありました。



 ただ、徳島は中央に絞りがちな守備をしていたので、サイドは取りやすい状況だったと思います。
 サイドからどう中央を攻め込むのかに関しては、作れていなかった。
 その結果、大岩がゴールを上げた6分から、オナイウがヘディングシュートを放った80分までシュートがない状況になってしまった。
 試合前はペチュニクがスタメンに復帰して町田とのコンビがどうなるのか気になっていたのですが、そこに行きつくこともなく終わってしまうことが多かったように思います。


 例えばとして、サイド攻撃に関してもFC今治のオーナーになった岡田氏は、このような話をしています。

例えば日本人が世界で勝つためにはペナルティエリアの端の二アーゾーンを取らなければいけない。そこに1人が入ったときには必ず、こことここには2人が走っていないといけない。一瞬一瞬に皆が同じ絵を描いている。そういうものを作っていかなければいけない、それが“型”だと思っています。(デロイト

 久々に聞いたので新鮮に感じたのですが、第二期日本代表監督に就任していた頃によく話していた内容ですね。
 ようするに、日本代表は高さで勝負できるわけではないし、単純に大外から中央へクロスを上げただけではゴールに結びつかないと。
 サイド攻撃をするにしても、よりゴールに近いニアのペナルティエリアの端や逆サイドのペナルティエリアの端を狙うなど、工夫をしていかなければいけない…という考えだと思います。
 この考えが全てではないにせよ、日本対世界に限らず工夫のある攻撃というものを作れなければ、なかなかチャンスというものは作れないのではないでしょうか。


 岡田監督もW杯直前になって重心が下がりロングカウンターが増えていった印象なので、こういったペナルティエリア端狙いはなくなったのかなと思っていたのですが、以下を読むと本人としてはそうではないという評価だったのかもしれません。

実際、南アフリカでは、強固な守備ブロックを形成して、乾坤一擲(けんこんいってき)のカウンターで活路を見いだすサッカーでした。それでも3−1で勝利したデンマーク戦は、欧州でかなり評価されていたそうですね。
「あの試合では、パスをつなぐところはつないでいますよ。だから欧州の指導者も、あの時の日本サッカーを評価してくれている。けれど、日本では「守備的なサッカー」というレッテルを貼られてしまっているからね(苦笑)。(スポナビ

 このあたり、今治のオーナーになってメディア露出が増えたので、もう一度あの頃のサッカーを分析するにはいい機会かもしれませんね。
 岡田監督もこのように話しているように、どうも今は世論もフラフラしているところがあるように感じますし。

結局、僕がやっていたサッカーは守備的でダメで、ザックの攻撃的なポゼッションサッカーも大会前までは絶賛されていた。それがダメとなると、今度は「縦に速く」とか「球際を強く」でしょ。僕がそれを言っていたときには批判していたのに、何なんだろうと思うよね(笑)。でもまあ、そんなものですよ、世の中って。


 だいぶ話がそれてしまいましたが、徳島戦後半途中までのサッカーが悪くなかったという判断なら、やはりサイドに人数をかけて攻める形が1つの理想ということなのかもしれません。
 しかし、それにしてもサイドを崩せていたわけでもなかったし、サイドから裏狙いもありましたが単純に相手との競争になるような形が多く、それこそ工夫がなかったように思います。
 あの形が良いということなのであれば、やはりFWがサイドに流れるのも監督の意図があってのことなのかもしれません。
 しかし、FWをサイドに流してまでサイドに人数を増やしパスを回せてもそこまでは当然とも言え、その分中央が薄くなってしまってはゴールも遠のいてしまうように思うのですが…。


 また「最後は自滅だった」とも話しています。
 確かに2失点とも北爪が簡単にボールを奪われたところからでしたし、2失点目は岡本のクリアミスも大きかった。
 ただ、1失点目につながった飛出しを見せたエステバンを捉えきれていなかったのはそれまでの展開でも目立っていたし、2失点目にボランチの濱田をフリーにしたこと、津田の裏への動きに手を焼いていたこともあの場面だけではなかったと思います。
 ですから、「最後は慌てた」ということでしたが、それまでの戦い方も厳しいものだったと思いますし、突発的にやられたわけではなかったと思います。


 このあたりのコメントからしても、関塚監督としては大枠としてのチーム状況は問題ないとみているということなのでしょうか。
 微調整や局面での頑張りさえできていけば、今のトンネルから抜け出せるという判断なのかもしれません。
 実際に1人の監督による大きな括りのチームカラーというものは、さほど変わらないものだとは思います。
 ただ、このままでチームが再び浮上できるのかと考えると、現時点ではなかなか光が見いだせないようにも思うのですが。
 もっとも監督がすべてを素直に話しているとも限らないでしょうし、ここからやり方を大きく変える可能性もあるとは思います。
 少しでもここからの光明が見いだせる状況になるといいですね。