大分の攻撃を凌いで6試合ぶりの勝利
大分戦、ジェフとしては何とか勝てたといった試合だったと思います。
大分は最下位ながらもやはり力のあるチームではあり、この日の試合内容も決して悪くなかったとは思います。
しかし、やはり最下位ということもあってか、攻撃ではチャンスを決めきれず、守備では一瞬の隙を見せてしまった。
力のあるチームが悪い状態となる、典型的なパターンではないかと思います。
ジェフとしてはその大分に勝って、久々の勝利を上げたことになります。
しかし、谷澤、勇人がスタメン復帰した試合とはなりますが、試合前に期待したような浮上の兆しが見えるような試合とはいかなかったように思います。
■大分優勢も決めきれずジェフが先制
柳田監督が就任してからの2試合で、積極的にメンバーを入れ替えている大分。
3試合目となるジェフ戦でも、大きくメンバーを変えてきました。
松本昌、松本怜、吉平、伊佐が外れ西、兵働、三平、岡本がスタメンに。
ベンチにも阪田、為田、高松といった実績のある選手たちが、怪我から復帰しました。
これまで若手を多く起用してきた柳田監督ですが、この試合ではベテラン選手が多くなった印象です。
若いチームならではの勢いも感じるところがありましたが、甘さも目立つチーム状況になっていたので、ここでベテランを投入して引き締めようという狙いだったのでしょうか。
一方、佐藤勇人、谷澤が怪我からスタメンに復帰したジェフは、代わりに佐藤健太郎、水野がベンチに回りました。
先週末スロベニア代表に招聘されたペチュニクも、ベンチスタートに。
森本の1トップ、町田のトップ下という前節福岡戦と同じ前線中央のコンビになり、右に井出、左に谷澤でスタートしました。
キックオフ直後から、大分のビックチャンス。
カウンターから素早くFW岡本が右サイドに展開し、三平が抜け出すと素早くクロス。
中央で触ればあわや、という攻撃を作り出します。
4分には大分左サイドからのCK。
兵働が蹴ったボールに対して、岡本が中村の前を取ってヘディングシュート。
フリーでシュートを放つ形となりましたが、ゴール右隅にそれます。
メンバーを入れ替えてきた大分ですが、前への積極性は前節までと変わらず。
ボールを奪って素早く縦へ。
特にDFラインの裏を狙うボールが効果的で、大分が優勢に試合を進めます。
14分には大分DF鈴木から岡本へのロングパス。
FW岡本が裏を取りかけますが、キムが何とか戻ってはじき出します。
16分には大分が左サイドからのCK。
三平が競り勝ってシュートを放ちますが、GK岡本の正面。
ジェフは攻撃を作れない時間帯が続きます。
森本の頭をめがけたロングボールが多いものの、若狭、鈴木のCBは空中戦にも強い選手。
そこにしっかりボランチのキム、兵働も戻ってきて、森本のところで挟んで潰してくる。
大分の守備はそこを警戒してきた印象でしたし、逆にジェフは森本しかターゲットがいないため、前線に起点が作れない状況。
さらにセカンドボールも拾えず、劣勢になっていきました。
また守備においても前へのプレスが遅れがちな状況にもかかわらず、DFラインは積極的に上げていくので、その裏を取られる回数が多かった。
DFラインを下げたくないという意図もあったのでしょうが、全体のバランスとして中途半端な印象でした。
しかし、25分過ぎからは、徐々に大分の勢いも落ちていった印象です。
それでも31分には、大分が左サイドからのCK。
兵働が蹴ったボールを一度ははじき出しますが、キム・ジョンヒョンが拾ってシュート。
これはゴールを外れますが、元ジェフの兵働からチャンスを作っていきます。
しかし、大分がチャンスをものにできず、ジェフが凌ぐ展開が続くと37分。
右サイド低い位置でパスをつないだところから、町田が裏に飛び出します。
金井からそこにボールが入ると、町田がマイナスのグラウンダークロス。
これを受けた井出がシュートを放ち、相手DFに当たったもののそのままゴールとなります。
大分はこの時間帯、守備の集中力が切れたのか、町田が裏へ抜け出した動きに対して譲り合う形で、誰も反応できませんでした。
慌ててラインを下げると、今度は中央にいた井出のところがぽっかりと空いてしまい、フリーで井出がシュートを放てる状況になってしまった。
これまで良い形で戦えていた大分ですが、大事なところで甘い部分が出てしまった印象です。
■後半立ち上り以降は防戦一方に
先制したものの内容は厳しかったジェフは、後半からペチュニクを投入。
初めから決まっていた起用法なのかもしれませんが、町田との交代でした。
確かにロングボールが多い中、町田はうまく絡めない時間も長かったですが、町田は先制点をアシストをしていただけに意外な印象もありました。
後半立ち上がりは、大分がペチュニクが投入されての空中戦に戸惑っていたようにも思います。
しかし、すぐにジェフの勢いは、落ちていってしまいました。
大分も前半飛ばしていたのか運動量が落ちていましたが、それでも大分がボールを持つ時間帯が続きます。
55分には、後藤に代えて為田が投入されます。
その直後、大分FW岡本が右サイドでキープ。
そこから中に繋いで岡本が飛び出し、兵働からのスルーパスを受け、完全に抜け出します。
中央へ合わせたボールは合わなかったものの、ジェフからすればひやっとするシーンでした。
68分には左サイドで谷澤がキープ。
中村がボールを受けてクロスを上げます。
森本がヘディングで合わせますが、ゴールならず。
これが後半、唯一となるジェフのチャンスだったのではないでしょうか。
71分、大分が岡本に代えて高松を投入。
ここからジェフは、防戦一方となっていきます。
73分には大分のクロスボールを中村がクリアミス。
安川にボールが渡りますが、シュートは枠外。
74分にも大分の攻撃。
右サイドに高松が流れてワンタッチパス。
三平がゴール前で粘ってシュートを放ちますが、金井がスライディングで何とかブロック。
75分にも大分左サイドの攻撃。
高松がニアでヘディングシュートを放ちますが、GK岡本がセーブ。
79分にジェフは谷澤に代えて田中を投入し、田中を右、井出を左へ。
ジェフはこれで守備固めということでしょうか。
その直後に、大分は三平に変えて坂井を起用します。
83分には大分、左サイドの為田からのセンタリング。
高松が打点の高いヘディングシュートを放ちますが、GK岡本がキャッチ。
後半アディショナルタイムにも西がゴール前でシュートを放ったり、兵働が中盤で拾ってミドルシュートを放つもゴールならず。
最後までセカンドボールも大分が拾う状況が続き、押し込まれる時間帯が続きますが、さすがに大分もあれだけ決定機を外し続けると決まる雰囲気はなく…。
そのまま1-0でジェフの勝利となりました。
■チームとしての戦い方がはまらず
前向きに考えるとすれば、ゴール前でよく粘って勝てた試合とも言えるでしょう。
あれだけ攻め込まれても無失点で終われたわけですから、守備陣が頑張ったと受け止めることもできるとは思います。
ただ、例え守り勝つサッカーをするにしても、形は良くなかった。
あそこまで簡単にゴール前にボールを持ち込まれれば、事故的な失点も起こりかねない。
実際フリーでシュートを打たれたシーンも目立ちましたし、今回は大分の決定力に救われた試合といえるのではないでしょうか。
攻撃にしてもチャンスらしいチャンスは、井出のゴールと、森本のヘディングシュートくらいで、試合を通じて良い攻撃が作れなかった。
試合直後の関塚監督のインタビューも暗い表情でしたし、それだけ厳しい試合だったと言えるのではないでしょうか。
前半はDFラインを高くして、相手に裏を取られることが多かった。
相手のDFラインにプレスに行けておらず、遅れて町田あたりがチェックに行くも蹴りこまれるシーンも目立っていたと思います。
それだけ"パスの出所"に行こうと思っても、行けていなかった状況だったと言えるのではないでしょうか。
そのためか、後半に入ってからはあまり無理には前には行かず、ある程度受けて守ろうという展開だったように思います。
しかし、関塚監督になってからのジェフはスライドする意識が薄いため、サイドは空いてしまう。
そのためサイドを起点にされてボールを上げられるシーンが多く、ゴール前の水際での対策ばかりになってしまった。
その結果、中盤も押し込まれることが多くなり、セカンドボールも拾われる場面が多かったように思います。
要するに後半から"パスの出所"を追うのを諦めたけれども、"パスの受所"を消しきれたわけでもなかったと言えるのではないでしょうか。
攻撃においてもロングボールが多く、前半はターゲットである森本が潰されてしまった。
後半になってペチュニクを投入してターゲットを増やしたはいいものの、今度はセカンドボールを拾う選手が少なくなってしまった。
結局、攻撃が作れるかどうかは、そこで森本やペチュニクが頑張れるかどうか。
あるいはサイドで谷澤や町田が、個人技でチャンスを作れるかといった状態になっていました。
守備においてもゴール前で頑張れるかどうかといった展開が多く、チームとして攻守に戦い方がはまっている感が薄い状況だと思います。
ジェフとしては、6試合ぶりの勝利ということで、結果に関してはひとまず良かったとは思います。
これで順位も4位に浮上したようですし、何とか上位争いから離されずに済んだことになります。
嬉しいというよりは、ほっとしたという思いの方が強いかもしれません。
ただ、浮上のきっかけとまでは、いかない試合だったように思います。
チームとしてサッカーの方向性、戦い方がはっきりしている状況であれば、1つ勝てば大きく変わる可能性もあるかもしれない。
しかし、勇人や谷澤がスタメンに復帰したとはいえ、大きく試合内容は変わっていませんし、新たな何が見つかったわけでもないと思います。
ジェフとしてはもともとは力があるとはいえ、やはり現状では最下位としての脆さも感じた大分に対して、何とか取りこぼさなかった試合ということが言えるのではないでしょうか。