ジェフの爆発力と金沢の安定感

 先日お話してはいましたが、この時間の更新となってしまいました。
 更新の頻度や時間などが大きな売りとなってしまっている当ブログとしては申し訳ないところがあるのですが、最近少々忙しくなっており特に試合直後の更新は難しいところがあります。
 時間さえ取れれば文章は書けるのですが、そこがわからない状況ですので、今後も試合後は不定期と言うことでよろしくお願いします。
 出来るだけ月曜朝より前に更新することを目標としていきますが、遅くても月曜中にはアップしていく方向で行こうかなと思っております。
■序盤はジェフが攻め込むも徐々に金沢ペースに
 連戦明けでメンバーを固定化する方向に行くかとも思われたジェフですが、スタメンをまた変更してきました。
 関塚監督はタイプ的にセレクター型の監督という印象があるためそれも理由としてあるのでしょうが、チームのどこかに悩みがあるとどんどんメンバーを変えてきますね。
 チームとして総合的に明確な形を決めてそこを目指すためにメンバーを変えていくというよりは、メンバーを変えて結果的に良い形が見つればそこに収めるといった印象。
 もちろん1つ1つの選手起用にはそれなりの意図があるのでしょうが、チームとして良い形が見つかるまでは毎回その意図が変わっていく印象です。



 この日は森本をベンチスタートとして、オナイウとペチュニクの2トップ
 そして、右SBに田代、右SHには金井を起用していきました。
 田代は今季初スタメンで、普段のポジションではないSB起用となりました。


 開始早々にチャンスを作ります。
 GKからのロングキックをペチュニクが粘って落として、右サイドの金井が裏を取る形で受けます。
 そのままクロスを上げると、相手DFがクリアミス。
 これを健太郎が拾ってシュートを放ちますが、バー直撃でゴールならず。


 続く3分には、中村からのアーリークロスに金井とペチュニクが飛び込みます。
 シュートまではいけませんでしたが、このあたりが金井SH起用の意図と言うことになるのではないでしょうか。
 金井は前に持ち上がってのクロスもあるし、ゴール前でのヘディングシュートもうまい。
 このシーンでもペチュニクと被ってはしまいましたが、タイミングよくゴール前に飛び出しクロスを呼び込んでいました。


 また、結果的に井出、町田あたりが外れて田代が入ったわけで、攻守にセットプレーの人数がさらに増すことにもなりますね。
 金沢は堅守のチームということで、金井を1つ前に上げても守備は問題がないとみたのかもしれません。
 田代に関してはここ数試合途中出場のプレーを見ても、調子がいいと判断されたのかもしれませんね。



 11分にはジェフが右サイドからのCK。
 ペチュニクがヘディングでシュートを放ちますが、GK正面でゴールならず。
 この日のペチュニクはかなり調子がよさそうで、これまで以上にうまくボールを引き出す動きをしていましたね。


 14分には金沢のカウンター。
 ジェフのFKをGK原田がキャッチしたところから素早く攻撃に転ずると、金子が左サイドで受けて仕掛けきる前に素早くクロス。
 中央でFWが触れば1点といったボールが出されましたが、ギリギリのところで届かず得点ならず。
 しかし、金沢らしい鋭いカウンターとなりました。



 キックオフから数分はジェフがハイテンションで猛攻を仕掛け金沢が戸惑っている印象もありましたが、徐々に金沢の動きが落ち着いていきます。 
 改めて金沢の守備は、4-4-2でポジショニングが非常に安定していました。
 まずスタートのポジションに戻って、パスコースやシュートコース、ドリブルのコースなどを組織的に消した状況を作ってから、ボールサイドに出ていって潰しに行く。
 これによって相手にボールを持たれる時間は長くなるものの、単純なパスワークだけでは揺さぶられない、簡単にはギャップを作られない丁寧な守備が構築できている印象です。


 そのためジェフは立ち上がり以降、単独での仕掛けや大外からのクロスが目立つ展開になり、相手の守備ブロックの中を取れずにいました。
 ただ、金沢も序盤は後方からのビルドアップでパスミスが目立ち、なんでもないところでジェフの守備陣に引っかけるシーンも目立った印象です。
 ジェフとしてはそこからハーフカウンターを作りたいところでしたが、そこでの連携がうまく作れずチャンスを作れない時間が長くなっていきました。



 前半途中からは、金沢の方が攻め込む時間が増えていきました。
 40分には金沢が右サイド後方でパスをつなぎ、ジェフの守備陣を引き寄せたタイミングで、左SBチャ・ヨンファンが前に走り出していって、そこをめがけた大きなサイドチェンジ。
 チャ・ヨンハンが大外で受け、ジェフのDFラインを広げたところで、後方から佐藤が走りこんでいってフリーで受けて素早くクロス。
 クロスは中央であいませんでしたが、こういった攻撃の流れからもチームとしての明確な意図を感じました。
■金沢の攻撃を凌ぎ切れず1-1の引き分け
 キックオフの流れから、金沢がジェフDF中村のところを狙って選手を走らせて、ロングフィード
 中村のクリアを秋葉が拾って、ミドルシュート
 これもチームとして狙ってきた印象ですね。
 48分にも秋葉がミドルシュートを放っており、秋葉が積極的にシュートを打っていく姿勢を見せていました。


 51分には大岩からの浮き球のボールをオナイウが受けて、ペチュニクと1-2で抜け出そうとするも失敗。
 53分には金沢は山口が左サイドで粘って、佐藤がバイタルエリアへ斜めの縦パス。
 水永がジェフCB前で受け、右サイドの清原へ。
 右SB阿渡も走りこんできましたが、そのままシュート。
 シュートはGK正面でしたが、素早い展開でした。


 ジェフは前半からペチュニクへの長いボールを起点に攻撃を狙っていましたが、そこに絡んでいく選手が少なく強引な展開が増えていました。
 金沢は守備をベースとしたカウンターながらもパスをつなぐ意識が強く、サイドを使いながらもバイタルエリアも狙いつつチャンスを作る展開。
 ただ、後半から金沢の選手は徐々に動きが重くなっていき、守備の戻りが遅くなり、全体のラインが低くなりがちになっていました。
 そのため、ボランチから前にボールが出る回数が前半より増えていましたね。
 


 すると、59分。
 金沢CKからのジェフのカウンター。
 高木のスローインから大岩がボールを受けると、途中投入したばかりの井出が右サイドに開いてボールを持ちます。
 まだ元気な井出が、そのまま斜めに持ち込んでいってシュート。
 これが決まって1-0とします。


 しかし、金沢は失点直後も極めて冷静にプレーをしていました。
 戦い方は大きく変えず、守備でも無理には奪いに行かない。
 ボールを持っても焦らずパスをつないで、チャンスを狙っていく。 



 68分には金沢のパスワーク。
 左サイドでつないでパウリーニョを引き出したところから、その裏に一度あててボランチへ。
 ボランチから再び縦につないで、今度は右サイドに展開し、阿渡から裏を狙った佐藤へ縦パス。
 今度はジェフの守備が右サイド前に釣り出されたことで、佐藤に完全に裏を取られて、そこからマイナスのクロス。
 中央にはつながりませんでしたが、ジェフの守備陣が振り回された展開でした。


 その後も、金沢が攻撃を仕掛ける展開が長くなっていました。
 ジェフとしてはボールを持たせている…と言いたいところですが、金沢がじっくりとサイドで繋いで釣り出された裏を取られるシーンが珍しくなく、苦しい状況が続いていた印象です。
 76分には金沢が中央でパスを回し、右サイドの裏へ展開。
 阿渡が中央へつないで、最後はゴール前でフリーの太田がシュートを放ちますが、ゴールは枠をそれます。


 78分には金沢が後方から右サイドに展開し、阿渡がボールを持ち込むと、中央の清原に縦パス。
 清原が粘って、途中投入の田中がミドルシュート
 ジェフはこの頃から動きが重くなっていき、サイドや中盤にスペースができていきました。
 逆に金沢は後半開始時に動きが落ちていた印象でしたが、失点後は安定した動きを見せていたように思います。



 80分にも金沢の決定機。
 金沢が中央から左サイドにつないていき、逆サイドへ展開。
 すると、ボランチがつられて、秋葉の前が完全に空きます。
 ペチュニクのプレスバックも間に合わず、そのままミドルシュートを放たれますが、ゴール左隅をそれます。
 その直後に金沢が得たヘディングシュートはバー直撃。
 金沢が猛攻を仕掛ける展開となってきました。


 87分にも右サイドから田中がカットインしていき、左足でミドルシュート
 その直後には大岩の高木へのバックパスが短く、相手選手に奪われるかと思われるヒヤッとした展開がありました。


 そして、90分ついに失点。
 金沢が左サイドからのクロスが流れたところを、後方の太田が受けてミドルシュート
 これを辻がゴール前で受ける形となり、シュートを放って同点ゴールとなりました。
 その後はジェフが猛攻を仕掛けますが、得点は奪えず1-1で終了となりました。
■金沢の団結力の高さ
 金沢の強さは守備力やカウンターなどもありますが、総じていうと組織力の高さというか、団結力の高さが際立つチームと言えるのではないでしょうか。
 守備でも組織的にブロックを作れており、どこにボールが入ったら、どうやってチームとして動くのかが、明確に作れている。
 例えばとして1人の選手がボールホルダーに行くと、近くの選手が細かくポジション修正をして、前に出ていった穴を埋める動きを見せ、アタック&カバーの形が作れている。
 ピッチ全体を広く守っているにもかかわらず、細かな修正をサボらずにやり続けることによって、穴がない守備ができていた印象です。


 また、攻撃においても緻密な形が作れている。
 サイドや後方でつないでいる時も、決してパスの出所を探しているだけではなく、2手先、3手先が考えられている。
 例えばとしてジェフはボールホルダーに寄りすぎる傾向があるから、サイドでパスをつないでボランチを引き出しておいて、バイタルエリアを狙う。
 あるいは、後方でつなぐ際もあえて中央でつなぐことによって、ジェフのFWとSHを中央に寄せておいてサイドに穴を作る。
 中盤中央でパスをつなぐ際も、必ずSBは開いて高い位置を突くことによって前へのパスコースを増やし相手DFラインを広げるなど、意図的なパスサッカーができていた印象です。


 ジェフのバイタルエリアでワンタッチのパスなどが何本もつなげていたのも、それだけ選手の連携が明確に作れており攻撃に多くの選手が絡めているからこそと言えるのではないでしょうか。
 ジェフの失点シーンも綺麗に崩されたわけではないですが、左サイドからクロスを上げられる前に、ワンタッチで何本もバイタルエリア付近でパスをつながれてしまった。
 そのため全体のラインが下がり、セカンドボールを拾われてしまった。
 遅れてラインを上げるも対応しきれなかったところから、ラインがバラバラになり辻にフリーな状況でシュートを放たれ失点。
 それまでにも何度もバイタルエリアを取られていたわけで、やられるべくしてやられた展開だったのではないかと思います。



 また、一番の驚きは、金沢が失点などをしても全く動じなかったこと。
 ここまで結果を残しているという自信もあるのかもしれませんが、それ以上に明確に組織が気づきあげられていること。
 チームとして自分たちのスタイルを確立しているからこそ、何があっても動じずに戦えているのではないでしょうか。


 一方のジェフは立ち上がりや失点直後など、時間帯によっては非常に大きな爆発力がある。
 けれども、戦い方が明確ではないため、それ以外のシーンではうまくいかない時間帯も目立った印象です。
 前半途中からは攻撃の形も作れていなかったし、得点後の守り方も安定しているようには見えなかった。
 まるで金沢の方が経験豊富なチームかのように、安定して賢く戦えていたように感じました。


 基本的に関塚監督の守備はゴール前を固める形であるため、相手のミス待ちで何とか凌げればいいのですが、金沢レベルの攻撃力があるチームではそうはいかなかったということではないでしょうか。
 金沢はJ2のチームによくあるようなリスクを恐れてサイドでつなぐような形ではなく、サイドでつなぐ際も相手を引き付けておいて中央をうかがっていたし、中央の厳しい位置でも怖がらずにパスをつないでいった。
 非常に勇気のあるチームだったと思います。
 逆に失点後のジェフは金沢のパスワークに揺さぶられ、後手後手に回されてしまいました。
 ゴール前を人数で固めるチームに対して、どのように崩すのかを金沢に見せつけられた印象です。



 チームとしては金沢のように攻守に明確な意図を持ったチームの方が、シーズンを通して安定して戦えるのではないかと思います。
 ただ、個人での打開力や選手層といった意味では、やはり金沢は決して豊富ではないのでしょうから、そこが今後の不安材料と言えるのかもしれません。
 対するジェフももちろん負けてはいないのだから、悪いところばかりではなかったと思います。
 前半開始直後や失点後の勢いは見るものがあったと思います。
 しかし、この試合では金沢の方が、やりたいことができていた試合だったのではないでしょうか。