"ミスマッチ"な戦いは4-4の打ち合いで引き分け
前半は拮抗した試合展開でしたが、後半からは打って変わっての打ち合いに。
何ともすごい試合でしたね…。
相手を考えれば引き分けでも悪くないといえるかもしれませんが、ジェフが先に2点リードしていたことやホームだったことを考えれば、欲を言えば勝ちたい試合だったとも言えるかもしれません。
■攻め込むもののチャンスを作れないジェフ
C大阪は日本代表から復帰した山口蛍がスタメン。
蛍はチュニジア代表戦でスタメン出場したものの、ウズベキスタン代表戦では試合に出場していなかったので、出場の可能性もあるかなとは思っていました。
チームにおける蛍の重要性は極めて高いでしょうし、今季もキャプテンを務めています。
一方でパブロがスタメンから外れ、長谷川が起用となりました。
パブロは第2節こそ開幕戦での退場で出場停止となりましたが、それ以外の試合ではスタメン出場を果たしているだけに、こちらの方が意外だったようにも思います。
また、キム・ジンヒョンも韓国代表に選出されており、欠場となっています。
ジェフは不動のスタメン。
ベンチには伊藤槙人に代わって、北爪が入りました。
北爪はベンチ入り復帰ということになりますね。
ジェフは井出を右サイド、ペチュニクを中央において2トップ気味の布陣。
前節も後半からポジションを変え井出は途中交代となりましたし、このあたりは悩んでいるところがあるのかもしれません。
C大阪はここまでの公式戦ではダブルボランチが多かったと思うのですが、蛍をアンカーにした1ボランチ気味のフォーメーションだったように思います。
ジェフの攻撃で警戒すべきは中央寄りもサイド攻撃ということで、1ボランチにしてきたのかもしれません。
C大阪は積極的にSBから長いボールを蹴っていきました。
特に試合序盤はサイドの裏を狙うボールが多く、そこにジェフの選手たちが戸惑っていた印象もありました。
C大阪としてはキム、大岩、パウリーニョのところを避けて、サイドを狙いたいという意図もあったのでしょうか。
しかし、徐々にジェフの方が押し込む時間が増えていきました。
C大阪はやはり前線の3人が、あまり中盤に絡んでこない。
蛍、扇原、長谷川の3人は攻守に計算できる能力の高い選手たちだと思いますが、それでも人数的には中盤に3人。
ジェフはペチュニクが2トップ気味の位置にいることも多かったとはいえ、それでも中盤は4人。
中盤での数的優位によって、ジェフが試合をリードしていきました。
攻撃では左サイドを中心に攻め込んで行く形に。
C大阪はインサイドの長谷部が中から外に出ていくものの、どうしても遅れがちで。
谷澤、中村のコンビはしっかりと2人で対応されると弱いものの、スペースがあれば攻撃を作れる能力がある。
ただ、今季のC大阪は中盤の構成や運動量などで苦しむことも覚悟したチーム作りとも言えるでしょうし、押し込まれることも織り込み済みなのかもしれません。
中盤から後ろはともかく我慢をして、強力な3トップでチャンスを作っていくという狙いではないかと思います。
押し込む時間帯の多かったジェフですが、この試合でもチャンスはなかなか作れない時間帯が続きます。
ジェフは30分、ゴール前右寄りのエリアでFKを獲得。
パウリーニョが壁の隙間を狙ってシュートを放つも、GKがセーブ。
34分にはC大阪が左SBから中央へ斜めのパス。
カカウが前を向いてジェフDFをひきつけ、玉田がその裏を取るように斜め前に走りこみます。
ボールをの玉田に大岩が何とかついていきますが、後方から走りこんできた山口蛍が受けてミドルシュート。
シュートは枠外でしたが、C大阪もようやく攻撃の形を作っていきます。
43分にはC大阪が中盤右サイドでパスをつなぎ、フォルランから扇原へ。
パウリーニョが一歩遅れて扇原に対応しますが、扇原はワンステップでパウリーニョをかわしてゴール右隅をかすめるシュートを放ちます。
この日のジェフは、ボランチの前が空くシーンが目立つ部分がありました。
前半アディショナルタイム。
右サイドにいたパウリーニョが大きなサイドチェンジを通すと、ボールを受けた中村がそのままアーリークロス。
これをファーのペチュニクがヘディングで合わせるも、クロスバー直撃。
森本が拾ってシュートを放つも、GKがセーブで得点ならず。
これが前半一番のチャンスでした。
■後半だけで4ゴールずつの打ち合い
後半からC大阪がギアを上げて言った印象でした。
前線の選手たちの運動量が上がり、守備に戻る回数も増えていきました。
フォルランも守備に戻ることで、ジェフの左サイドを止めに来ていたように思います。
しかし、先にゴールを奪ったのはジェフ。
53分、ジェフ左サイド深い位置でのFK。
中央で扇原の体に当たりGK丹野が弾くも、そのこぼれ球にペチュニクが合わせて先制ゴール。
続く59分、ペチュニクがゴール前左寄りのペナルティエリアライン上から、相手選手が目の前にいる状況で狙い澄ましたシュートを放つと、これが決まって2-0に。
相手選手のマークが若干緩かったところを見逃さず、ペチュニクがきれいなシュートを決めました。
いきなりのシュートで、GK丹野の反応も遅れた印象があります。
62分には金井に代えて田中を投入。
足を負傷したのでしょうか、心配ですね。
2点をジェフが先制して、C大阪の勢いが落ちた印象がありました。
しかし、70分にフォルランが見せます。
中盤後方の長谷川からの長いボールを走りながら受けると、大岩が寄せきる前にトラップせずそのままシュートを放ち1点返します。
まさにスペシャルなゴールでした。
大岩としてはフォルランがボールを持つと思ったのでしょうが、ワンランク上の選手を目指すためには、あそこで寄せられないといけないのでしょうね。
また、ここでも中盤の寄せが遅れていた印象でした。
その直後にはフォルランの右サイドからのクロスを中央でつながれ、最後は逆サイドでフリーになったカカウがシュート。
これはGK高木がセーブしますが、決定的なシーン。
ジェフは運動量が落ち、C大阪が攻勢になっていきます。
そこでジェフは、74分に井出に代えて健太郎を投入。
しかし、その直後。
井出のいた右サイドから寄せが甘い状況でクロスを上げられると、ゴール前中央で長谷川にキープされ、逆サイドのフォルランへ。
フォルランがシュート性のボールをけると、最後はカカウがつめてゴール。
これで2-2の同点になってしまいます。
同点にされてジェフは勢いが落ちた印象でした。
そして、80分。
ジェフの右サイドでパスをつながれると縦にパスを出され、玉田がうまく潰れて蛍がフリーで裏を取る形に。
そのままセンタリングを上げられて、逆サイドのフォルランが逆転ゴール。
このシーンでは蛍についていかなかった田中、逆サイドの中村の対応もよくなかったと思うのですが、縦パスを簡単に出してしまった勇人もまずかったと思います。
交代で右SHに移った勇人ですが、慣れないポジションのためかどこかぎこちなく感じました。
そして、82分にはその勇人に代えてオナイウが投入されます。
2-0から逆転されるという嫌な流れでしたが、逆転ゴールの直後となる82分。
ジェフが左サイドでつないで流れたボールを、ペナルティエリア前でパウリーニョが受けるとそのままシュート。
これがゴールネット右隅に決まって、同点ゴール。
直後の83分には森本がゴール右寄りでタメて、ペチュニクにつなぎ、後方から走りこんできたオナイウへ。
オナイウが放ったシュートが決まり、今度はジェフが逆転します。
これで終わりかと思われた打ち合いですが、後半アディショナルタイム。
C大阪による右サイドからのCKのフォルランが逆サイドに流れて、丸橋がセンタリング。
これを山下が合わせると、GK高木がファンブルしてゴール。
これで4-4となり、引き分けで試合終了となりました。
■フォルランとパウリーニョの本当の強さ
中盤の圧力で試合をリードするジェフと、前線のタレントで勝負するC大阪。
両チーム違うところに強みを持った"ミスマッチ"な戦いとなりました。
それが打ち合いになった原因の1つかもしれませんね。
C大阪としては中盤以降に負担が多い分、前線で攻撃を作ってほしいところだったと思うのですが、前半はキム、大岩、パウリーニョの守備陣に潰される時間帯が多かった印象です。
ただ、後半のC大阪の動きを見ると、初めから前半は我慢するというゲームプランだったのかもしれません。
ジェフは前半から飛ばして後半失速する試合も多かったですし、連戦でアウェイということもあった上、フォルランなどの体力を考えてあえて温存したという可能性もあるのではないでしょうか。
また、1ボランチにして、インサイドハーフにサイドのケアをさせる守備もしてきました。
後半からフォルランが右サイドでプレーするようになって、ジェフの左サイドを攻めようという意図などからしても、しっかりジェフを研究してきたのではないでしょうか。
3トップに自由を与えるものの、スカウティングなどやることはしっかりとやるチームなのかもしれません。
ただ、やはり課題としては、守備ということになるのではないでしょうか。
後方にも良い選手はいると思うのですが、ペチュニクの2ゴール目など寄せが甘いシーンも感じました。
前線が守りに戻らないことによる戦術的な問題も大きいとは思いますが、そういった割り切ったサッカーの中で中盤以降の選手たちが気持ちを切らさずにやり続けられるかどうか。
割り切った戦い方に納得できるかどうかという面も、非常に重要ではないかと思います。
4点目のオナイウの得点も3失点目がきまったことによって、ガクッと足が止まっていた印象もありました。
一方のジェフは中盤で相手を上回れただけに、そこから先のアタッキングサードの質がやはり気になりました。
アタッキングサードまでは持ちこめても、そこから先の細かな連携やコンビネーションに課題があり、大味な印象があります。
大味な攻撃でも最後にガツンと勝てるFWでもいればいいのですけど、森本はそういったタイプではないですしね。
それでも谷澤が調子を上げてきている印象なのは、好材料だと思います。
またペチュニクもゴールを決めてからは動きが良くなっていった印象ですし、ここからさらに勢いに乗れるかどうかといったところでしょうか。
FWで起用されたことによって、持ち味が出せた印象もあります。
しかし、一方で4-4-2気味のフォーメーションになったことで、相手ボランチが空くことが多くなり、全体的なラインも下がりがちになっていたように思います。
それが大量失点の1つの原因と言えるのではないでしょうか。
相手の中盤が3枚であることも考えて4-4-2にしたのかもしれませんが、一方でC大阪の中盤3枚は共に展開力があって一発の長いボールで攻撃を作ることができる。
それはこれまでの試合でも狙っていたように感じる部分でしたし、射程距離も長い。
フォルランの1点目などはその形でしたし、今後4-4-2で戦っていくのであれば、不安要素の1つとなる可能性もあります。
また、後半からフォルランが右サイドでプレーする回数が増えて、中村のマッチアップが増えたことも大量失点の原因でしょう。
中村は逆サイドからのクロス対応に課題がありますし、2失点目、3失点目もそこが大きかったように思います。
勇人、田中の右サイドコンビもうまくいっていなかったですね。
4失点に関しては、相手が攻撃的なチームであることを考えれば、その分課題である守備をついて4点取ったのだから、それでイーブンとも言えるかもしれません。
さすがに今後ああいったチームとは戦うことは少ないでしょうから、そういった意味ではそこまで大きなダメージではないとも考えられます。
しかし、打ち合いとなった展開はどちらかといえば相手の望む試合だったとも言えなくはないでしょうし、そういった意味では残念な大量失点でした。
特に今年のジェフは守備面の強さで、ここまで勝ってきただけに。
"ミスマッチ"な試合での引き分けだったので、何とも評価も難しい部分はあります。
ただ、そんな中でもC大阪はフォルランが2ゴール、カカウが1ゴール。
ジェフはペチュニクが2ゴール、パウリーニョがゴールと、外国籍選手たちが魅せてくれた試合だったといえるのではないでしょうか。
もう少し日本人選手のゴール前での頑張りにも期待したいところではありますが、今季ここまでこの2チームが上位にいるのもやはり外国人選手の能力は大きいのだろうなとも思います。
C大阪の場合は弊害も多そうではありますが。
特に2-0とビハインドになった状況でのフォルランのゴール、3-2と逆転された直後のパウリーニョのゴールは大きかったと思います。
技術的なものはもちろんですが、チームの流れが悪い状況でその流れに飲み込まれずむしろ一発を決めてみせるといったところは、プロの選手としての本当の強さを見せたといえるのではないでしょうか。