井出「つなぐというよりも押し込むイメージ」

 水戸戦後の井出のコメントですが、まさに今季のジェフはそういったチームになっている印象です。
 守備でも組織的に穴なく守るというよりパワーで奪い取り、攻撃でも外からクロスを放り込んでゴール前に飛び込むといったイメージ。
 井出の「セカンドボールを拾えている時間帯は機能している」という話も、先日試合後にお話した通り同様の感想です。


 なんとなく松本山雅を思い出すような、パワーサッカーになりつつある印象がありますね。
 松本山雅がクロスとセットプレーで昇格したこともあって、心なしか他チームも含めてセットプレーに力を入れているところが多いような気もします。
 ジェフもこのままいけば今季はクロスとセットプレーからの攻撃が、重要な得点源になっていくのかもしれません。



 ただ、チームとしての本質的な部分は、昨年からそこまで大きく変わっていないようにも思えます。
 切り替え直後のボール奪取以外は、昨年と同じようなサッカーなのではないでしょうか。
 守備では切り替え直後のプレスが利かない状況だと、中盤の低い位置(特に相手ボランチ付近)が空いて、そこから簡単に展開されてしまったり。
 右と左は変わりましたが、中央を固める分サイドの守備が弱かったり。


 攻撃においても、関塚監督就任直後は早いタイミングでのクロスと、中距離のラストパスというのが多く現状に近いサッカーだったと思います。
 成績が伸びなかったため9月末以降は町田が入ってパスをつなぐようになっていきましたが、それ以降も町田が抜けるとパスが繋げなくなる傾向は昨年から感じられました。
 今季はパウリーニョペチュニクといったサイズのある選手が入り、右SBの金井もクロスで期待できそうなので、再び関塚監督就任直後のサッカーに戻してみたということなのではないでしょうか。


 こちらの方が背伸びしている感が少なく、より自然な戦い方ができているのではないかと思います。
 開幕前の山形戦で昨年とほとんどチームが変わらなかったように感じたのもペチュニクなどのコンディションが悪く、切り替えからのプレスが効いていなかったからかもしれません。
 関塚監督がやりたいサッカーというのは、本来こういったサッカーだったのではないでしょうか。



 井出に関しては水戸戦での解説の下村ももっとボールに触れれば良かったというようなコメントをしており、井出本人も「間で受けたい」、「つなぎの精度を上げたい」という話をしています。
 サイズの決して大きくない井出のことを考えればよりパスをつなげるようになったほうが活きるでしょうし、そのためにも間で受けるプレーがもっとできれば中盤の高い位置でボールを引き出すことができる…。
 イメージとしては間で受ける形が得意な町田が、お手本となっている部分もあるのかもしれません。


 しかし、現在のチームにおける井出への要求は守備で懸命に走って、攻撃ではフリーマン的に浮遊しながら仕掛ける役割ということになるのではないかなと私は思います。
 つなぎの面よりもカウンター時に仕掛ける、あるいはクロスからのこぼれ球を拾う、または開幕戦のゴールのようにクロスへ飛び込んでいく。
 そういった形が今のトップ下には、求められているのではないでしょうか。
 井出としてはもっとボールに触って、パスワークを作りながら仕掛けていったほうがリズムは作りやすいのだろうと思うのですが、チームとしてはそこは二の次なのではないかなと。
 むしろ現行のチームだとパスをつなぎ過ぎてしまうと、相手を崩しきれない状況に陥り、攻撃に停滞感を生む可能性もあるような気がします。



 そういったチームの状況を考えると、肩の手術からリハビリ明けで練習に合流した町田の立場は、厳しい部分があるのかもしれません。
 昨年似たようなサッカーをしていた関塚監督就任以降から9月末までは、なかなか町田に出番はなかったですし。
 ベンチ入りメンバーを見ても井出同様に最後の仕掛けが期待できる水野と、前に強くゴール前に飛び込めるオナイウ、田中が選ばれています。
 基本的にチャンスはSBを中心に外で作って中で決めるといった状況なのでしょうし、そうなってくると中央で動き回ってパスをつないで行くタイプの町田の立ち位置は難しい状況ということになるのではないでしょうか。


 守備に関しては懸命に走って相手を追い回すことができ、昨日もチームの課題としてあげたパスコースなどを消すことができる選手といえるでしょう。
 昨年終盤は町田や幸野など賢く運動量豊富に走れる選手たちを起用したことによって、中盤でフリーになった相手に対応していた面があったと思います。
 今はそういった選手たちが起用されていないからこそ、リトリート時のバランスが悪く中盤などにスペースができてしまう部分があるのでしょう。



 けれども、町田は今季のチームの強みである切り替えから奪いきる守備に関しては、期待しづらい面があると思います。
 素早い切り替えの面は期待できたとしても、そこからボールを奪いきるためにはどうしてもフィジカル面が重要になってくる。
 そこが期待できるようになったのが今季の選手構成において昨年までと大きな違いだと思いますし、町田はそのフィジカル面、パワー面においてはどうしても足りない面がある選手だと思います。


 町田の今後を考えるとすれば、まずは途中出場からチャンスをうかがって、守備固めでも懸命に自分の仕事をこなすことで評価を高めていくことではないでしょうか。
 リトリート時の守備バランスに課題があるのは変わらないですし、今後そこを埋める役割が必要になってくる可能性はあるだろうと思います。
 そして、そのチャンスで最後の精度に関しても、結果が出せればいいのですが…。
 結局最後の精度の課題に関しては、町田においてどうしても乗り越えなければならない大きな壁ということになってくるのかもしれません。