バスケの統合問題と精神障害者バスケ

 現在、日本のバスケットボール界は大きな岐路に立たされています。
 長らく対立してきた企業チームとプロチームの混合でなるNBLリーグと、プロチームのみで形成するbjリーグ…。
 複数のトップリーグが存在することに対して国際バスケットボール連盟FIBA)が「待った」をかけ、統合できなければ資格停止処分などを科すという警告を与えました。


 一度目の期限は14年10月で、それまでに両者は話し合いを行ったものの統合とはいかず、現在は資格停止状態に。
 現状のままでは男子だけでなく女子やユースチームも国際試合に出場できず、五輪出場も不可能な状況となっています。
 リオデジャネイロ五輪予選に出場するためには、今年6月までに統合計画をまとめなければ間に合わない事態となってしまいました。



 そこで白羽の矢が立ったのが、Jリーグ創設者の1人である川淵三郎氏。
 川淵氏はFIBAが設立した、日本のリーグ統合問題をまとめるタスクフォースのチェアマンに就任することになりました。
 川淵氏率いるタスクフォースは、5000人規模のアリーナ所有、新リーグの3部化、地域密着の必要性…など多くの条件を提示。
 現在は3000人規模のアリーナが多いようで、様々な面での反発も起こっているようです。


 ただ、限られた時間であること。
 そして、これまで何度も話し合いを行ってきたにもかかわらず、統合は実現されなかったことなどを考えると適任なのかもしれません。
 多少強引なやり方でなければ間に合わない可能性もあるだろうし、これまで内部で多くの対立があったことを考えるとあえて外部の人間が取りまとめる方が話は進むのかもしれません。
 もちろんその強引なやり方でジェフが被害を被ったことは、今でも忘れがたい苦い記憶ではありますが、それはひとまず置いておくとして…。



 これまでのタスクフォースの会議内容を読んでも、少なくともJリーグファンの目線としては納得できる部分があります。
 しかし、一方で細かな数字の目安などにおいては理論的に説明されていない部分もあるように感じますし、川淵氏の強引な姿勢でまとめようとしているような印象も受けます。
 ただ、どこかで線引きはしなければいけないだろうし、Jリーグの成功が内外への説得力となっている部分もあるのかもしれません。


 もちろんバスケットとサッカーではJリーグ開幕当時の人気を考えても大きく異なるところがあると思いますし、果たしてそのまま持ち込んで成功するのかという疑問は大きいように思います。
 ただ、バスケに携わる人々としてもこれが統合の大きなチャンスと考えているのではないかと思いますし、少なくともリーグ統合の方向に関してはこのまま進んでいくように感じなくもありません。
 問題は新リーグ発足後にうまくリーグが運営されていくか、新リーグによってバスケが今以上に盛り上がっていくのか…といったところなのでしょうか。
 2部、3部でスタートすることになるチームとしては文字通り死活問題になりかねないですし、いかにリーグ全体が活性化していくのかが重要になってくるのかもしれません。
 様々な不安もあるでしょうが、それらも含めて今回の統合問題は大きな話題となっているということになると思います。



 私も精神障害者バスケに携わっていることもあって、リーグ統合は気になるニュースとなっています。
 先日も精神障害者バスケの大会を開いたのですが、アリーナの確保は毎回悩ましい問題となっています。
 過去数回は千葉ポートアリーナを借りてきましたが、土日は千葉市関係の団体が使用するため予約が難しい状況です。
 当団体がNPO法人に認可になって千葉市に大会の後援となっていただいて、ようやく今年の年末に日曜開催することになりましたが、それも1年前に予約して何とか可能になったもので、開催日は年の瀬の12月27日の開催ということに…。


 そういった状況からも分かるように基本的にはアリーナといっても興行で大きな利益を得るというよりも、市民団体が積極的に使用することを前提として考える自治体は多いのではないでしょうか。
 市税での建設を考えれば、それは妥当なところと言えるでしょう。
 そして、興行面を考えないのであれば、そこまで大きなアリーナ建設の必要性も薄れる…と。
 しかし、それではいつまでたっても、多くの集客が見込めない…というのが、タスクフォース側の考えということになるのでしょう。


 だからこそ、地域密着を掲げ自治体はもちろんのこと、そこに住む住民も巻き込んでチームを盛り上げることが重要だという発想なのではないかと思います。
 ただ、実際問題として、それだけの需要や"バスケ熱"が見込めるのかどうか。
 川淵氏はマスコミへのアピールの重要性を何度も口にしていますし、今回の統合問題と新リーグスタートを大きな話題とすることによって一気に盛り上げていこうということなのかもしれませんが、どこまでその狙いが成功するのか…といったところが問題となるのでしょう。



 精神障害者バスケの話に移すと、本格的に活動がスタートして2年。
 こちらの活動を知ったことによって、岩手、埼玉、神奈川、京都、熊本など、各地から「精神障害者バスケをやりたい」という声が上がってきています。
 それだけ需要があることに関して手応えを感じつつも、一方で遠征費やメンバーがそろわないといった問題もあって、先日の大会も参加できないチームが出てしまいました。
 その結果、なかなか参加チームが増えない実情があります。
 大会では参加費をいただきNPO法人化も果たしたからには、それなりの成果というのも求められてくると思うわけで、焦りがないかと言えば嘘になります。


 そんな中で出てきたバスケのリーグ統合に関する話題ですから、これをキッカケにバスケ界全体が盛り上がってくればという思いもなくはありません。
 また東京オリンピックパラリンピック開催も、追い風になる可能性があります。
 実際、国・自治体を上げて障害者スポーツ活性化を目指す動きは増えていますし、各種助成金もスポーツ関係のものが増えている状況です。


 ただし、そういった追い風がこちらまで届くのかどうかはわかりませんし、恩恵を受けるとしても時間はかかることでしょう。
 パラリンピックに関しても精神障害者は参加できない状況ですし、そういった状況でどれだけ社会的に理解を得られるのかといった問題も出てくるかもしれません。
 次回大会までに各地で交流大会を開く計画もありますし、予算の確保や人脈作りなども含めて、焦らず地道にコツコツとやっていくことが大事ということに変わりはないのでしょう。



 それでも「バスケをやりたい」と精神障害者の方が声をかけてくれていることは大きな励みになりますし、当協会がそういった方たちの受け皿になれれば…と思います。
 日本サッカー協会は 複数ある障害者サッカー協会を取りまとめる「障がい者サッカー協議会」を設立することが決定していますし、バスケでも将来的にはそういった動きが出てくれればという期待もあります。
 そのためには、それまでに十分な実績と成果を出さなければいけないと思いますし、少しずつでも努力していかなければと思います。


 ロンドンパラリンピックはテレビ放送も含めて成功したものの、日本での障害者スポーツは注目度が低いとも言われています。
 障害者スポーツが盛り上がれば単純にそのスポーツの市場が広がることにもつながると思いますし、スポーツによる社会貢献という面にも結び付いていくはずです。
 東京パラリンピックに向けて、どれだけ国内での障害者スポーツが盛り上がっていくのか。
 そして、バスケのリーグ統合はどのような結末を迎えるのか。
 そういった動きをチェックしながらも、しっかりと自分たちのやるべきことを進めていきたいと思います。