硬い試合展開も1-0で開幕戦勝利

 今年もJリーグがいよいよ開幕。
 開幕前はチームがうまくいくのか、良いシーズンになるのかといった点での緊張感もありますが、試合を見て何を感じられるのか、何か書けるのかといった意味での不安もあったりします。
 実際には開幕戦の方が新しい発見は多く、シーズン中の方が書くことが少なくなって、ネタに困ることは多いのですけどね。
 今年の開幕戦でも、新しい要素は複数見られたのではないかと思います。 
■長崎の猛攻を凌ぎ先制
 ジェフは2月22日の山形戦から、岡に代わって高木、北爪に代わって金井、水野に代わって井出がスタメン。
 山形戦で負傷交代したペチュニクも、スタメン出場でした。
 ペチュニクは思った以上に、動けるようになっていましたね。
 長崎は昨年同様、3-4-3のフォーメーションで開幕を迎えました。



 試合序盤に流れをつかんだのは長崎。
 ジェフはペチュニク、森本の頭を狙ったロングボールの展開が多く、ボールが落ち着かない状況に。
 そこからの拾い合いでも長崎が制して、ジェフが劣勢に立たされていました。


 前半4分には、長崎の決定的なチャンス。
 長崎のCKを防いだジェフは、中村がカウンターを狙いボールを運びますが、中盤でつぶされます。
 そこから長崎の花井がボールを受け、大外を狙った梶川にクロス。
 フリーの梶川が中央に折り返すと、イ・ヨンジェがシュートを放ちますが、GK高木がファインセーブ。
 前半早々ですが、決まってもおかしくないシーンでした。 


 前半の長崎は2シャドーに入った梶川のスピードを活かす、裏を狙った攻撃が効果的に使えていました。
 シャドーやボランチを使って中盤でパスをつなぎ、裏へのスルーパスを狙う展開がしっかりとチームとして作れていたと思います。
 また、クロスではファーを狙う展開が多く、ジェフのSBを意図的につこうしていたようにも感じました。



 長崎が決定的なチャンスを逃すと、徐々に流れが変わっていきます。
 長崎の圧力が弱くなり、中盤にスペースができ始め、ジェフがボールを持てる展開に。
 それまでの長崎は最終ラインも高くコンパクトに守れていたのですが、ラインも下がって前へのプレスもいけなくなり、特にボランチ付近で楽にパスをつなげるようになっていきました。


 しかし、ジェフはパスをつなげるもののアタッキングサードまではうまくボールを運べず、ミドルサードからのアーリークロスが増えていました。
 それでもゴールが生まれたのは16分。
 ジェフが左サイドでボールを奪うと、井出が中央寄りの谷澤にパス。
 谷澤が大きくサイドチェンジをして、右SBの金井がアーリー気味のクロス。
 中央の森本が合わせたヘディングシュートはGK植草がはじきますが、井出がつめていて先制ゴールを挙げます。


 クロスを上げた瞬間、中央の森本もフリーでしたが、ニアでは勇人もフリーな状態でした。
 ファーで詰める形となった井出にも誰も付いていきませんでしたし、谷澤のサイドチェンジによって長崎の守備が大きく乱れたシーンだったと思います。
 金井のクロスも精度が高かったですね。



 ジェフは相手が3バックということで、積極的にサイドの裏を狙おうという意図を感じました。
 森本がサイドに流れて粘るプレーも多く、特に新人の右CB武内のところでポイントを作れていた印象があります。
 しかし、そこから先の攻撃はなかなか作れなかったですね。


 20分はジェフがカウンターで、谷澤から左サイドに開いた森本に展開。
 そのまま持ち込んでシュートを放ちますが、コースがなくGK植草の正面。
 その後はジェフの攻撃も落ち着いていき、ジェフが守る時間も長くなっていきましたね。



 40分には長崎がジェフGK高木の蹴ったロングボールを中盤で拾うと、花井がそのままボールを持ち込みジェフDFライン裏へスルーパス
 佐藤洸一がワンタッチで戻して、梶川がシュートを放ちます。
 金井がブロックしますが、今年の長崎の狙いを感じさせる攻撃だったように思います。
 そこで得たCKを最後は梶川がミドルシュートと、2度長崎がチャンスを作ります。
■先制ゴールを守り抜き開幕戦勝利
 前半途中からはジェフの守備の安定感も目立っていましたが、後半に入ってからは長崎が攻め込む機会が増えていきました。
 特にボランチの黒木が積極的に前に出てきて、攻撃への切り替えが早くなったこと。
 そして、ジェフの左サイドを積極的に攻めるようになってきたことで、チャンスを作ってきた印象です。
 逆にジェフの方は後半から疲れも見え全体のラインが下がって、中盤にスペースが出来てしまう展開になっていきました。


 55分には長崎のDFラインからロングボール一本で左サイドの裏を取られ、岸田がそのままシュートを放つもGK高木がセーブ。
 57分にも梶川が低い位置から、佐藤洸一に縦パス。
 中央寄りの位置で受けた佐藤洸一が外の岸田にパスを出すと、ワンツーの形で完全にDFラインの裏を抜け出します。
 そのままクロスをあげられ、イ・ヨンジェがフリーでヘディングシュートを放ちますが枠外。
 最後の精度に助けられましたが、危険なシーンだったと思います。


 このシーンでは谷澤が岸田につくべきだったのか、中村が岸田について大岩やパウリーニョ佐藤洸一を見るべきだったのか、曖昧になってしまった印象があります。
 勇人は梶川に遅れ気味に対応にいっていましたし、結果的にパウリーニョ佐藤洸一を追う形となりましたが、間に合いませんでした。
 昨年も悩まされた3-4-3への対応の問題が出てしまった印象で、前半はパスの出所である梶川のところを抑えられていたから問題なくやれていましたが、後半に入って中盤の圧力が弱まり穴ができてしまった部分があったように思います。



 その直後にも長崎による左サイド深い位置からのスローインの際に、中央でイ・ヨンジェをフリーにしてひやっとするシーンが。
 ここでも素早くパウリーニョが寄せて事なきを得ます。
 開幕戦からパウリーニョの貢献度は、非常に高かったですね。
 59分には梶川からジェフの左サイドの裏を狙ったスルーパス
 佐藤洸一に代わって入った木村が抜け出しますが、大岩が何とかカバー。
 このあたりはジェフにとって劣勢の時間帯が続きます。


 64分には長崎が右サイドからのCKを梶川が蹴り、イ・ヨンジェがGK高木との競り合いに勝ってヘディングシュートを放ちます。
 そのままゴールマウスに吸い込まれるか…と思われましたが、勇人がゴール目前でぎりぎりクリア。
 決定的なシーンでしたが、なんとか失点を免れます。



 72分にはジェフが左サイドで得たセットプレーを、中村が蹴ります。
 GK植草とイ・ヨンジェがもつれる間に中村がボールを拾って、右足でシュートを放つもゴール外。
 74分には長崎の攻撃。
 ジェフのボランチ裏を取る形でポストプレーからボールを受けた黒木がそのまま持ち込み、ゴール前中央にスルーパス
 最後は合いませんでしたが、ジェフからすればバイタルエリアを取られたということで、怖いシーンだったと思います。


 77分、ジェフは森本に代えて田中を投入。
 ペチュニクが1トップにうつり、右サイドに田中が入りました。
 投入直後の田中が右サイドの奥で粘ると、2人に囲まれながら中央の勇人につなぎます。
 フリーとなった勇人は谷澤に折り返しのパスを出し、谷澤はシュートを放ちますが、大きく枠をそれます。
 しかし、ジェフにとっては久々のチャンスでした。



 続いて、88分には井出に代わってオナイウが投入されます。
 その直後には長崎がジェフDFラインの前で、梶川、イ・ヨンジェ、木村、梶川とつないで、スペースの空いたジェフの左サイドに展開。
 岸田がフリーでクロスを上げますが、中央であわず。


 長崎はチャンスは作るものの、最後の精度に苦しみます。
 この時間帯になると、試合終盤は良い形で攻めても決まる雰囲気がなかったですね。
 最後はペチュニクに代えて健太郎を投入して守備を固め、1-0でジェフが逃げ切りました。
■守備への切り替えとバランス型の守備組織
 非常に堅い試合展開になったと思います。
 開幕戦というのもあるとは思うのですが、それだけではなかったのではないでしょうか。
 シュート数で見ても長崎が8本、ジェフが6本 
 スカパーによると枠内シュートは長崎が4本で、ジェフが2本。
 純粋にチャンスの数、良い形で攻め込んだ数も長崎の方が多かったのではないでしょうか。



 ジェフは相変わらず攻撃において相手陣内にボールを持ちこめてもチャンスが作れず、アーリークロスやセットプレー頼りなところが多かったと思います。
 ただ、守備に関しては、変化も大きかったように思います。
 特に目立っていたのが、攻撃から守備への切り替えの早さ。
 これによって、相手の攻撃の芽を摘み取ることができていたと思います。


 印象的だったのが前半アディショナルタイム
 ジェフのCKからのボールを相手にはじかれ一度は拾われたものの、そこを中盤で奪い返しクロスまで持っていった展開。
 昨年まではなかなか見られなかった形ですし、ゴールにはならなかったものの可能性を感じたシーンだったと思います。



 ここでボールを奪いに行ったのもペチュニクでしたし、山形戦とは打って変わって守備での貢献度が高かったように思います。
 切り替えが早く、フィジカル的な強さも見せてくれました。
 パウリーニョペチュニクとしっかり守備をしてボールを奪える選手が中盤に2人も増えたことによって、攻撃から守備への切り替えもうまく機能したのではないかと思います。


 一方でキャンプから取り組んでいるらしい守備から攻撃への切り替えに関しても意図は感じる部分はあったものの、ボール運びなど連携面はうまくいっておらず、なかなかチャンスは作れませんね。
 やはり関塚監督は、基本的に攻撃面で細かい部分を作るのは得意な監督ではないでしょう。
 昨年もモチベーションコントロールやともかく前へという意識付けによって、チームの勢いは作れたものの明確な意図から点を取るという形は極めて少なかったと思います。



 その中でどうやってチームの強みを作っていくのかというのが、今シーズンのテーマではないかと思っていたのですが、今季はメンバーも変わって守備面で強さを作れるのであれば、そこを強みとして期待すべきなのかもしれません。
 長崎戦前半も切り替えのところで奪えなければ、ラインを高めに設定するも無理には取りにいかないバランスの取れたブロックができていたと思います。
 ただ、そういった守備は後半のように疲れが見え始めると途端に中途半端になりがちですし、その時にどういった対応をするのか。
 また、パウリーニョのところを外されたサイド攻撃に対しても課題が見られたので、そこを改善できるかどうか。


 昨年終盤のように、攻撃に関しては前の選手の勢いなどに期待して、相手の隙を狙い数少ないチャンスを狙っていく。
 その分、守備において強みを作っていく守備的なチームを結果的に目指すことになる…というのであれば、守備面でのさらなる成長というのが、今季の大きな目標ということになってくるのかもしれません。
 まずはその中で無失点での開幕戦勝利を遂げられたわけですから、悪くないスタートといえるのではないでしょうか。