昨年の変化から見る今季のスタイル

 今年のJリーグ開幕も目前に控え、今季のジェフのスタイルというものを考えてみたいと思います。
 最終的には、柔軟に戦えるチームが理想的ではあるのでしょう。
 遅攻で細かいパスで崩せてカウンターも狙えたり、前でボールを奪えて状況によってはリトリートもできたり。
 ただ、現実問題として考えると複数の戦い方を使い分けられるチームというのは、世界でもほんの一握りではないかと思います。


 むしろ複数の戦い方を目指して、結果的に中途半端になり失敗してしまうチームの方が多いのではないかと個人的には思います。
 あくまでもまずは明確な軸・強みといったものを作ってから、柔軟性を持つチームを目指すべきではないでしょうか。
 そうでないと、別のスタイルを意識するたびにその前のスタイルが消えてなくなってしまい、せっかく1つのスタイルが出来てもまた作り直しとなってしまう。
 その結果、良い継続性というものが持続できずに、チームとして成長しきれず終わってしまうケースが多いのではないか私は思います。



 それを前提としてお話しするとして。
 今オフにブログで選手個々を振り返るシリーズをやってきて改めて感じたのが、関塚監督が就任してから9月末で大きく選手起用が変わったということ。
 関塚監督就任した7月から9月まではケンペス、兵働、大塚、大岩、井出などが主軸としてプレーしていましたが、9月末からは森本、町田、幸野、山口慶、勇人などがスタメンで長時間起用され、その後固定化されていきました。
 そして、成績も10月がもっとも良かったことになります。


 それに合わせてサッカーのスタイルに関しても、カウンターサッカーからパスサッカーに移行していったように思います。
 これに関しては様々な理由が考えられるでしょうが、1つには当初掲げていた縦に速い攻撃からのカウンターサッカーが相手チームに読まれていき、成績も伸び悩んでいたことがあったのではないでしょうか。
 関塚監督が就任してからの成績を見ると、7月こそ2勝1分でしたが、8月は1勝1敗3分と苦戦していました。
 当初は前への姿勢が強いカウンターサッカーに変わって相手チームも戸惑ったところがあったと思いますが、相手もそれに対して準備をしてきたことにより成績も内容も厳しくなっていったように感じます。
 相手に警戒され全体を引かれたことによって、結局パスで崩すサッカーが必要になっていったということではないかと思います。


 また、守備においてはプレスが成立せず全体のバランスに課題があったため、どうしても相手ボランチや右サイドが空く課題がありました。
 そのために町田、幸野、慶など走れる選手を数多くおいて走力でカバーし、ボランチも守備的な選手2人を起用するしかなかったということだと思います。
 これは以前にも紹介しましたが、サッカーキングのコラムによるとロンドン五輪チームもプレスの約束事が成立せず、永井などの走力に頼っていたところがあったとのこと。
 これは昨年のジェフも同様のことが言えるでしょう。
 それだけに、幸野、慶などが抜けたことが不安があるわけですが…。



 それらを踏まえて2月22日に行われた山形戦を改めて振り返ると、まず守備に関してはかなりリトリート重視で、前へ追いかける回数は少なかったと言えるでしょう。
 右サイドにペチュニク、トップ下に水野といった布陣で、プレスが得意ではない2列目の選手が多かったということも大きいかとは思いますが、森本も引き気味でしたしチームとして引いて守ろうという意図のある守り方だったのではないかと感じました。


 幸野などが退団しプレス要員が少なくなったことを考えれば、現実的な判断とも考えられると思います。
 また森本などが引くことによって、全体的に低い状態でコンパクトに守ろうという意図だった可能性もあるのではないでしょうか。
 しかし、その分昨年の関塚監督が就任した直後のように、後方でパスをつながれてそこを起点に押し込まれてしまった。
 特に相手の3バックに楽にボールを持たせすぎてしまって、左CBの石川からビルドアップを作られてしまった印象があります。



 また攻撃においては、前半は全体的に引いて守ってカウンターという狙いだったのかなと感じました。
 それで水野を起用したのかなとも思ったのですが、連携にも課題があった印象で相手のプレスの中で攻撃の形が作れなかった印象です。
 そして、後半は相手のプレスが多少おさまったこともあって、今度はパスサッカーによる遅攻の時間が長くなっていきました。
 しかし、昨年後半以上にサイドチェンジの意識とSBの位置が高くなっていたこともあって、鈴木監督の頃のボール回しに近くなっていた印象ですね。
 結局そこに行きつくのか…といった印象も受けました。
 そこからの崩しのノウハウはともかくとしても。



 山形戦をまとめると、パウリーニョや北爪などは十分戦力面でプラスと考えられるでしょうし、水野なども予想以上にキレはあったのではないかと思います。
 ただ、前へのプレスや右サイドに関する守備、攻撃におけるビルドアップ、チャンスメイクなどにおいては、まだまだ不安要素も感じる試合だったといえるでしょう。
 ペチュニクの起用法やトップ下の選択など、細部が定まってくればより見えてくる部分もあるでしょう。


 しかし、現時点ではまだ、チームとしてどういった戦い方を目指し、どこに強みを作るのかまでは見えてきていない状況ではないかと思います。
 山形戦前半の引いて守ってカウンターは昨年一度は放棄した戦い方だったよ思うだけに、今季改めてどのような戦い方を目指すつもりなのか、そのサッカーを目指すとするのなら昨年からどういった変化を作り出すつもりなのか気になるところです。
 あるいは1つのスタイルにこだわらず、臨機応変に戦っていくつもりなのか、それでどこまでチームを成長させることができるのか。
 このあたりのスタイルの形成に関してが、チーム作りにおける注目ポイントの1つになるのではないかと思います。