昨年からのステップアップを目指して

 今年初めてとなるフクアリでのジェフ戦。
 いつもと同じスタジアムですが、公開練習試合という形もあって、いつもとは少し違った風景でした。
 会場時のテントなどもなく、スタジアムも客席を開けたのはほぼ半分でした。


 しかし、雨にもかかわらず、5000人以上の観客が集まりました。
 天気が良ければより多くの人が集まったでしょうし、シーズン開幕に向けての期待感を感じました。
 対戦相手は例年とは違い公式の試合でもありませんでしたが、その空気感はちばぎんカップに近いものがありましたね。



 さて、開幕前ですがシーズン初めの試合ということで、さまざまな見どころがあったと思います
 今回も一応レポート形式で行いますが、テレビ放送がなかったため細かいところを見返すことができませんし、寒くてメモを取る元気もなかったので、いつもよりアバウトに書いていきたいと思います。
 公式戦ではないので、まずはチーム全体像を把握するところから…ということで、ご了承ください。
■山形が優勢に進めるもゴール前では迫力不足
 ジェフは表記すれば1トップなのでしょうが、4-4-2にかなり近いフォーメーションだったのではないかと思います。
 GKは岡で試合前の練習には高木が参加しており、岡本はベンチにも入っていなかったかもしれません。
 これまでの練習試合でも主力組には高木と岡が交互に入っていましたし、やはりこの2人がポジションを争うことになるのでしょうか。
 DFラインは右から北爪、金、大岩、中村で、ボランチパウリーニョと勇人がスタメン。
 右サイドにペチュニク、左サイドに谷澤で、水野がトップ下気味で森本とコンビを組む形でした。


 山形は昨年と同様の3-4-3。
 報道の通り1トップに林で、ディエゴは山崎と2列目を形成。
 中盤は山田、アウセウ、松岡、キム・ボムヨン、3バックは當間、渡辺、石川で、GKは山岸とベストメンバーを組んできました。
 ジェフもこれまでの練習からすればベストメンバーではないかと思いますし、お互い公式戦に近い戦いになったといえるのではないでしょうか。



 立ち上がりから、山形が優勢に試合を進める展開。
 3バックが広く開いてウイングバックもサイドライン際に位置し、相手を広げさせてパスワークを展開。
 主に左サイドからボールを運んでいき、キム・ボムヨンがボールを持ったところで、相手SBの選手が食いついてくれば、相手のSBとCBのスペースに山崎が飛び出して行ってそこを使う。
 食いついて来なければ中央に向かってボールを供給する…と、昨年同様の攻撃でした。


 昨年も感じましたが、キム・ボムヨンは走れてフィジカルもしっかりしているだけでなく、周りが見えていてそこを使えるいい選手ですね。
 ジェフは対面のペチュニクが守備で貢献できないこともあって、そのサイド攻撃に対して苦労していた印象でした。
 北爪が1人で頑張っていましたね。



 また、球際の強さ、激しさという点でも、山形が上回っていた印象です。
 アウセウ、松岡という守備的なボランチ2人でスタートしたのは、J1を戦うことも見据えていたのでしょうか。
 加えていつもよりもフクアリが静かな分選手の声もよく聞こえたのですが、その点でも山形のほうが出ていた印象があり、残念に感じる部分がありました。


 アウセウは石崎監督が柏監督時代にプレー経験のある選手で、当時から球際に強かった印象があります。
 しかし、パワーはあるものの技術面はもう1つで、当時はアウセウキャノンといわれていたミドルシュートこそあったものの、攻撃面はもう1つな印象もありました。
 けれども、昨日の試合ではしっかりとつなぎの面でも貢献していましたし、ボール奪取能力も非常に高かった。
 柏で一緒だった谷澤にも競り勝つシーンがありましたし、山形にとっては良い補強になるのかもしれません。


 試合を優勢に進めてジェフのゴール前までボールを運べていた山形ですが、そこから先のゴール前の怖さという点では物足りなさもあったように思います。
 怪我で川西がいなかった影響も大きかったのかもしれませんが、ディエゴもタメや変化は作れても点取り屋という感じではなく。
 林の起用もJ1で長いボールを蹴りこむ回数が増えると想定してのことなのかもしれませんが、この試合ではあまり目立ちませんでした。
 ゴール前の迫力不足に関しては、J1でも悩みの種になるかもしれません。



 対するジェフは山形にボールを回される機会が多く、なかなかゴール前にも攻め込めませんでした。
 ボールを奪って前に運んでも連携がうまくいかず、前ですぐに潰されるシーンが目立っていました。
 水野がボールを持って裏を狙うパスを出したり、前方に走りこんだりといった動きでチャンスを作ろうとしていましたが、水野個人の動きばかりが目立っていた前半でした。


 それでも前半30分あたりからは、山形の運動量が落ちていき、守備への戻りが遅くなっていきます。
 逆にジェフの選手たちは、ようやく温まってきたのか、動きが良くなっていきました。
 ボールを回すテンポも速くなり、運動量も増していきました。


 しかし、その時間帯に良い形を作れずにいると、前半35分過ぎには岡、大岩、パウリーニョとつないだところでボールを奪われ、決定的なシーンが作られてしまいます。
 なんとか大岩がゴールマウスの前でクリアしてことなきを得るも、非常に危ないシーンでした。
 結局前半ジェフが放った枠内シュートは、パウリーニョの長い距離のミドルシュート2本だけだったのではないでしょうか。
■試合終了間際にオナイウがゴール
 後半スタートと同時に、ジェフは勇人に変えて健太郎が出場。
 北爪に代えて田中を投入しました。
 また、ペチュニクが前半30分頃に負傷交代し、オナイウが右SHに入りました。
 勇人と健太郎に関しては、テスト的な意味合いもあるのかもしれませんね。


 前半は勇人がパウリーニョとコンビを組んで、勇人の方が積極的に前に出ていきましたが、後半から健太郎が入ったことで今後はパウリーニョが前に出ていく回数が増えていったと思います。
 健太郎は昨年以上にDFラインの位置まで下がって、ビルドアップに参加することが多かった印象です。


 個人的にはやはり後半のコンビの方が、いいのではないかといった印象を受けました。
 パウリーニョは前に強く攻撃でも可能性を見せていましたし、山口智が抜けて後方のビルドアップ力が弱まったことで、余計に後方での健太郎のビルドアップ能力の重要性が増した印象もあります。
 また、後方でスペースを消す健太郎と、強さのあるパウリーニョがCB前を埋めることによって、山形は前半のように簡単にはFWにパスを入れられなくなった印象でした。



 ただ、ジェフの方もなかなか攻撃の形が作れない時間帯が続きました。
 ジェフは左サイドの谷澤・中村のコンビの状態がいまいちよくないのか、サイドチェンジを積極的に使っていた印象でした。
 また、山形は昨年同様にサイドへの守備の対応が遅れがちになることもあって、ジェフはサイドで高い位置までボールを運べる状況になっていきました。


 しかし、そこからどうやってチャンスを作るのという部分が、なかなか見えてこなかった。
 それによってサイドの高い位置までボールを運ぶものの、連携ミスなどで攻撃の芽がつぶれてしまうという回数が多かったように思います。
 これは昨年も見られた傾向があるのではないかと思います。



 それでも後半25分からは、ジェフが押し込む時間が増えていったのではないでしょうか。
 山形は昨年もそうでしたが、前からのプレスを積極的にやっていくスタイルもあって、前半・後半の30分前後に動きが落ちてしまう時間帯がありますね。
 後半30分には、右サイドのスローインからパウリーニョミドルシュート
 その直後には中村が右サイドから展開したボールに反応して、角度のないところからミドルシュートを放つもGK山岸がセーブするシーンがありました。


 しかし、その直後には、山形のディエゴがミドルシュートを放つ機会が2度続きます。
 そして、後半35分頃には中盤中央でキム・ボムヨンがボールを奪い、ショートカウンター
 パスを受けたディエゴが、PAエリア直前の位置からシュート。
 ゴールマウス右隅をギリギリそれる、危ないシーンを作られてしまいます。



 一度は流れが傾きつつあったものの、そこでチャンスをつかみきれず、またペースを手放してしまう。
 またもったいない流れになってしまったか…と思ったのですが、試合終了間際に相手の後方でのパスミスを奪ったところからオナイウがゴール。
 これが決まって、1-0での勝利となりました。
 試合終盤はこのまま終わるかと思ったのですが、昨年のように試合終了間際にゴールを決めて、勝利をものにしたことになります。
■全体的な構図は昨年の延長線上
 全体的な試合内容は、どちらのチームもそこまでキレを感じるものではなかったと思います。
 考えてみれば、山形は18日の柏戦14日の流経大柏戦もベストメンバーだったようですし、前日まで館山での長期キャンプを行っていたところだったようですので、最後の追い込み状態にあったのかもしれません。
 ジェフの方もコンディションのばらつきはあった印象ですし、ここからシーズン開幕までに状態は良くなっていく可能性もあるのでしょう。
 とはいえ、開幕までもう2週間しかないわけですから、個々のコンディションに関しては楽観視できるものではないと思います。
 昨年もちばぎんカップで調子がよくなさそうに見えた兵働、ケンペスなどは開幕してからも調子が上がりませんでしたし、今の状態を軽視していいというわけではないのでしょう。



 ジェフに関しては、メンバーが一部変わったことで、若干の変化を感じた部分がありましたね。
 まず、右SHに関してはあえて身長のある選手を入れる、というパターンも考えているのかなと感じました。
 前半途中まではペチュニク、それ以降はオナイウとFWもこなせる高さのある選手を入れています。
 そして、そこを目掛けて積極的にゴールキックを蹴っていました。


 確かに森本は空中戦のポストプレーに関しては、あまり強くありません。
 甲府のバレーなどもそうでしたが、高さのあるCBが多い中央を避ける意味も兼ねて、長身FWをウイングで起用してそこをロングボールのターゲットにする手法も狙いの1つとしては考えられます。
 その分、右SBには走力のある北爪、田中を起用して右SHをフォローしようという意図なのでしょうか。


 また、右SBが積極的にオーバーラップを仕掛け、右SHが若干下がり気味に受けることでフリーになり、そこから前にパスを出すという狙いも感じられました。
 こういった動きは昨年見られませんでしたし、小倉コーチあたりが提案したのでしょうか。
 ただ、ペチュニクの動きは悪く、全体的見るとまだまだ右サイドが機能したとは言い難いと思います。



 トップ下ではスタメンに水野、後半途中からはU-22日本代表から帰ってきた井出が入りました。
 どちらも前に仕掛けられる選手で、シンプルに森本をデコイにして2人に仕掛けさせる動きが見られました。
 それができるなら昨年から井出をトップ下で試してもよかったのでは…とは思いましたが、これも変化の1つといえるでしょう。


 守備面ではパウリーニョが入って、中央に強さが増した印象があります。
 ただ、チーム全体のプレスなど細かな部分に関しては、まだまだこれから見えてくる部分も多いのではないでしょうか。
 特に守備面は徐々に課題が出てくることが多いと思いますし、全体のバランスに関しては公式戦に入ってから問われてくるのかもしれません。



 しかし、一部のメンバーが変わって細かなところは変化が見られたとはいえ、やはり全体的な構図という点においては昨年からの延長線上にあるチームといえるのではないでしょうか。
 攻撃においてはサイドまではパスをつなげても、そこからチャンスが作れなかったり。
 守備でもペチュニクの問題があったとはいえ、スライドしないために右サイドからピンチを作られてしまったり。
 逆に良い意味でも終了間際のゴールシーンなどもあったように、良くも悪くも昨年の流れを汲んでいるところは多いように思います。


 そこから変わっていってどこまで成長できるかどうかというのは、ここからのチームにかかっているということになりますね。
 昨年もJ1昇格を逃したわけで、ここからさらなるステップアップを目指さなければ行かなければいけない。
 まずその現時点を把握するという意味で、良い試合だったと思います。



 …しかし、やはりできることならもっと盛り上がった状態で試合をやりたかったですし、来年はちばぎんカップ再開を期待したいですね。
 それとともに、この試合をなんとか開催まで持って行ってくれた関係者と対戦相手の山形に感謝したいと思います。