UAEとのPK戦の末、ベスト8敗退

 もう少し見たいと感じられるチームだっただけに、日本代表のベスト8敗退は残念な結果でした。
 試合内容も結果も含めて、消化不良感が否めない最後だったかなと思います。


 UAE代表戦は前半の戦い方が良くなかったですね。
 まず先にチャンスがあったものの得点を奪いきれず、逆に失点を許してしまったこと。
 失点シーンを振り返ると、相手が日本の左サイドに中盤に人数を固めてショートパスをつなぎ、プレスを掻い潜られたところからロングボールを蹴られ、裏を取られてやられてしまいました。
 個人的にはリスクがあっても積極的にプレスをかけていく姿勢は、アジアでの日本の立場を考えれば潔いやり方だと思っていたのですが、そのプレスのかけ方とDFラインの裏への対応に甘さを感じたシーンでした。


 そして、失点後の動きも非常に悪かったですね。
 連戦による疲労もあったのかと思いましたが、、後半には動きが良くなっていきましたし、失点による焦りがあって選手たちの動きが委縮し、攻撃が単発になりがちだったのではないでしょうか。
 延長前半に長友が負傷した後も、長友が走れない状況になってやりにくくなっただけでなく、チームに動揺が見られた印象がありました。
 経験豊富な選手が多いこのチームでも、思わぬアクシデントがあると精神的な問題が起こってしまうものなんですね…。
 前回優勝チームのプレッシャーもあったということでしょうか。


 また攻撃面では特に前半、日本の左サイドを警戒され酒井のところにボールを回すものの、なかなかチャンスが作れない…という昨年終盤のジェフでも見られた状況に陥っていたように思います。
 試合の立ち上りに流れが悪くなったのも、酒井のところでボールを失われてDFラインの裏を取られたところからでした。
 小柄な選手の多い日本代表で酒井はセットプレー含めた守備面での高さなどを期待されている部分もあったのかもしれませんが、攻撃面では個人の部分も連携の部分も乗り切れないまま終わってしまいました。 



 ハーフタイムを挟んでからは落ち着きを取り戻し、運動量も増え攻撃陣の流動性も増していった印象でした。
 しかし、後半からは本当に決定力に悩まされましたね。
 結局シュート数は35本対3本だったにもかかわらず、スコアは1対1のままPK戦に進み敗れてしまいました。
 決定力の問題はこの試合だけでなく、大会を通じて感じた課題でした。


 あそこまで決定的なチャンスを作れれば後は選手個々の問題…といっていいレベルだと思うのですが、以前鈴木監督と関塚監督を比較した時にも話した通り、パスサッカーだと相手を押し込める分どうしても相手がスペースを消す傾向にあるので、シュートが決まりにくくなるという部分はあるのかもしれません。
 それでも良い時のバルセロナやスペイン代表、バイエルン・ミュンヘンなどはそれで成立しているわけで。
 そのレベルに達するのは当然簡単ではないにしても、その分アジア杯などでは相手のレベルも低いわけですから、そこは乗り越えるべき壁ということになるのではないでしょうか。


 本田、香川がPK戦でシュートを外したことからも象徴されるように、2人のエースがコンディションを上げきれなかったことも、決定力不足に大きく影響を及ぼしたのではないかと思います。
 実際本田は大会を通じて多くの決定機を決めきれませんでしたし、波に乗り切れなかった印象があります。
 もちろん2人に責任を押し付けるわけではないのですが、敗因を考えるとするとそこは見逃せない1つの課題だったのではないでしょうか。
 香川はクラブでもうまく行っていない印象で、今後が心配なところがありますね。



 チームとしてはやることははっきりしていたと思いますし、アギーレ監督は限られた時間の中でやれることはやったのではないでしょうか。
 そこまでW杯直後の開催という難しい時期に行われるアジア杯の優勝が大事なものだとも思いませんし、前回大会ザッケローニ監督はW杯で結果を残した岡田監督のサッカーをそのまま流用して成功した印象でした。
 しかし、今回はブラジルW杯での"失敗"直後のチームですから、当然作り直しを求められることになるわけで、ベースとなる部分が大きく異なります。
 チームにベテランが多い状況は気になった部分もありましたが、最後に柴崎や武藤が見せてくれましたし、酒井も将来性を考えて我慢して起用している部分があるのかもしれません。
 若手が伸び伸びとやれる環境になっているのではないかと思いますし、あとはそこにうまく若い選手が出てくるかどうかではないでしょうか。


 アギーレ監督に関して続投か解任かという話も出ていますが、そもそもアジア杯で契約が切れるわけでもないのでしょうし、それを語る段階なのかという疑問があります。
 八百長問題で日本のマスコミが騒いだ結果そういった話になっているのでしょうが、八百長に関しては"黒"という結果が出ない以上JFAやファン・サポーターは監督を守るべき立場ではないかと。
 無論サッカーの内容に関しては賛否両論あるべきだとは思いますが、八百長問題に関してはまずは「仲間となった人を信じる」というのがベースにあるべきではないかと思うのですが。
 また、現実的な話として年俸も安くないでしょうし4年契約という報道も出ていますから、JFAから解雇となれば違約金は相当のものになるとも思いますしね。



 アジア杯ベスト8という成績は残念ではありますが、現代サッカーにおいて相手に引かれるとどのチームでも苦しむというのはブラジルW杯でも十分見てきたこと。
 現在ではどのチームも様々な情報を簡単に収集できる状況になったため、引いて守ってカウンターというやり方は世界中のどこでも楽にモノに出来てしまう部分があるのかもしれません。
 特に今回のようなトーナメントの大会だと、そういったチームが有利になる傾向が強い…というのは、プレーオフで3度も涙したジェフを思い返しても痛いほどわかるところで…(笑)
 "トーナメントにおける追われる者の難しさ"というものを、ここでもまた感じてしましまいた。
 現在のサッカー界の状況を考えると、本当の強さを計るためにはリーグ戦の方がいいのかもしれませんね。


 当初の想像していたイメージとは異なりますが、アギーレ監督の攻撃的なスタイルは岡田監督後の「守ってカウンターならある程度世界でも戦える…では、前に出ていった場合にどこまでやれるのか?」というテーマにあったサッカーとも言えるのかもしれません。
 ザッケローニ監督はそれ以前の状況で、良く言えばオーソドックスというか自由、悪く言えば中途半端なサッカーといった印象でしたし、もう少しアギーレ監督のサッカーを見守りたいというのが素直な感想です。