2014シーズンを振り返る 中村太亮編

 2014年のリーグ戦、ジェフで全試合フル出場を果たしたのは中村太亮のみ。
 ジェフ加入1年目でチームに欠かせない存在となりました。
 前年山形では2ゴール7アシストで、ジェフでは4ゴール10アシストを記録していますから、中村本人にとっても成長の1年だったと言えるのかもしれません。


 なお、10アシストは湘南の永木に並んでリーグ2位の成績で、1位は湘南の三竿の11アシストだったそうです。
 湘南の総得点が86で2番目に総得点の多かった磐田の67と比べても抜きに出ていることから考えても、中村の10アシストは立派だったと思います。
 しかし、アシスト王がDFというのも異例ですね。
 湘南のサッカーを象徴した結果ということになるのでしょうが。


 サッカーライターの中にはアギーレ監督体制となった日本代表に中村を推す声もあり(こちらこちらなど)、サッカー雑誌にはJ1の番記者が補強したい選手として中村の名前を良く目にしました。
 J2だから獲得しやすいだろうという考えなのかもしれませんが、ジェフはそれなりの年俸を払っているでしょうし、移籍1年目ということを考えれば現実的ではない話でしょう。
 しかし、それだけ中村が評価されたということに関しては、嬉しいことではないでしょうか。



 シーズンを通して左SBでプレーした中村ですが、開幕当初は他選手との連携が整わず機能していなかった印象です。
 当初は左SHで山中を起用して居ていたわけですが、山中は猪突猛進タイプで味方を活かすプレーや、タメを作ってSBを走らせるといった動きはできず、中村との距離も開きがちでした。
 その分チームとして山中の前への強さ、推進力の高さが武器になっていたわけですが、攻撃の厚みという点においては物足りなさもあったように思います。


 チームとして中村の活かし方が明確になったのは、谷澤が左SHとして出場し始めた3月30日の第5節熊本戦あたりからだと思います。
 中村はスピードを活かして積極的に前に飛び出していく、あるいはドリブルでぐいぐいと抜いていくというようなタイプではないだけに、前の選手とうまく連携して攻撃に絡んでいかない。
 左SHにボールを持って変化を作れ、中村の上がる時間を作れる谷澤が入ったことにより、左SB中村が機能するようになっていきました。


 中村のクロスは非常に精度が高く、アバウトに放り込むのではなく、しっかりと前線の動きを見た上でボールを使い分けられる印象です。
 ターゲット付近でグッと曲って落ちるボールが蹴ることが出来るため、相手DFにとっては対処しにくいボールになのではないでしょうか。
 クロスレンジも広くアーリークロスでも良いボールを上げられる上に、シーズン前半は右足でのクロスも効果的に出せていた印象です。
 プレースキックのキッカーとしても貢献しており、チームのチャンスメーカーとして重要な役割を担っていました。
 しかし、軽い怪我もあった上に疲労も影響したのか、夏場に入ってからは調子を落としていた時期もあった印象です。
 クロスの精度も落ちていき、全体的に動きのキレが落ちていたように思います。
 


 関塚監督就任後も不動の左SBとしてプレー。
 しかし、監督交代直後はチーム全体が速い攻撃を狙っていったためか、サイドの深い位置まで入って行けず兵働と共にアーリークロスを前線に蹴り込むプレーが多くなっていた印象です。
 8月10日の第26節横浜FC戦では試合途中から3バックの左CBでプレーしましたが、これも後方から長いボールを蹴るタスクを期待されたものでしょう。
 しかし、中村から早いタイミングで前線にボールを蹴るという展開は相手に読まれていましたし、身長はあってもCBほどの守備力もない選手ですから、この奇策は失敗だったといえるのではないでしょうか。
 実際、練習から試していたようですが、それ以降は一度も実施されず終わりました。



 9月下旬から町田がトップ下に入って、パスをつなげるようになっていき、中村も高位置でプレーできる回数が増えていきました。
 シーズン終盤は谷澤も好調で、谷澤・中村による左サイドからの攻撃を相手チームの監督に名指しで警戒されることも目立つようになっていきます。
 しかし、その分相手チームからのマークも厳しくなって、左サイドを封じられてしまう試合も多くなってしまいます。


 前の谷澤がマンマークで消されてしまうと中村も機能しなくなったり、相手が5バック気味に守ってサイドのスペースを消すと中村が中に入って行けず、大外からのクロスしか上げられなくなったり。
 シーズン前半は左サイドでパスワークを作っている流れで、外から斜め前方に飛び出していく動きなども見られましたが、そういったパターンも見られなくなってしまいました。
 また、守備においても通常時のポジショニングなどは悪くなかったのですが、フィジカルや高さの面では課題が見られ、終盤はそこを相手に狙われてしまいました。
 CKで連続失点の原因になってしまったり、天皇杯山形戦では逆サイドのクロスに対して競り負けたりと、空中戦での競り合いでやられてしまう試合が目立ちました。 


 攻撃においては、バリエーションを増やすこと。
 谷澤とのコンビネーションは良いと思うのですが、谷澤が封じられると中村も機能しなくなるということは谷澤に頼る部分が大きくなっているとも言えるわけで、中村本人だけでは打開しきれていないということにもなります。
 状況に応じた仕掛けやボールを引き出すような動きも、もっと増やしていってほしいところではないかと思います。


 また、守備においては空中戦での身体の使い方を覚えること。
 身長はあるわけで、完全に競り勝たなくてもしっかりと身体をぶつけることが大事ではないでしょうか。
 また昨年終盤のジェフは走れてサイズの小さな選手が増えていったので、中村が大きな選手を見なければいけなくなったために、そこで負けてしまったという点も大きいのでしょう。
 今年は中盤にサイズの選手が増えるかもしれませんので、セットプレーでの守備の負担は減るかもしれません。
 しかし、それでも中村が取り組んでいかなければならない課題の1つには、変わりないのではないかと思います。



 1年を通じて活躍した中村ですが、シーズン終盤は課題も見つかってしまったところがあるともいます。
 それだけ相手チームに警戒され研究されたということで、他チームにも認められた結果とも言えるのかもしれません。
 しかし、警戒された状況でもそれを跳ね除け活躍してこそリーグを代表する選手と言えるのでしょうし、高いレベルを目指して頑張ってほしいですね。