2014シーズンを振り返る 佐藤健太郎編

 2012年からジェフに加入した佐藤健太郎
 移籍初年度からリーグ戦34試合に出場し、13年には40試合に出場し、14年も37試合に出場。
 3年間通じてスタメンでの起用が多く、ボランチに課題があると言われることも多いジェフの中で、ボランチの中心選手となっている印象です。


 14年シーズン序盤はオフに両SBが抜けたこともあってか、ボランチが積極的に攻撃参加するスタイルを目指していましたが、その中で健太郎は苦戦を強いられました。
 前に飛び出す動きはできていたものの、なかなか高い位置で効果的に攻撃に絡めなかった。
 当初ボランチとしてパートナーを組んでいた山口慶も、運動量豊富なアップダウンは期待できるもののボールさばきには課題があるため、ダブルボランチが高い位置でボールを触ってもチャンスを作れない状況に陥っていました。


 健太郎はボランチとしてボールを散らす仕事に関しては、十分期待の出来る選手だと思います。
 ちょうどアジア杯での遠藤を見ていても、パスセンスだけでなくパスワークに上手く絡むためのポジショニングや周りへのフォローが非常に効いている印象がありますが、健太郎もそういった動きが出来る選手だと思います。
 サイドでパスをつないでいる状況で後方から顔を出してうまくサポートし正確にボールをつないだり、ポストプレーからの落としを受けてサイドに展開したりといった動きの出来る選手。
 派手さはないため目立たないですが、ビルドアップにおいて重要な選手と言えるでしょう。


 しかし、視野も広く正確にパスを出せる選手だ思うのですが、"見えすぎている"せいか強引な縦パスは少なかったり、相手のプレッシャーがあると前にパスを出せないところがあると思います。
 そのために高い位置に攻撃参加しても、効果的にチャンスを作れない状況に陥ったのでしょう。
 ちなみに健太郎は3年間ほぼレギュラーで出場していますが、リーグ戦、カップ戦ではゴールがなくジェフでは12年の昇格プレーオフ横浜FCでの1ゴールのみとなっています。
 そこが大きな課題とも言えるでしょう。



 昨年5月に入るとチームは4×4のボックスで戦うようになり、攻撃時も中盤の関係が横に近くなります。
 それによってその時ボランチのコンビを組んでいた兵働との距離感も近くなり、マークが分散されて健太郎も兵働と前にパスを出しやすい状況になっていったように思います。
 昨年同様に左サイドとの関係性も良く、兵働と共に攻守にバランスよく動けていた印象です。


 監督が交代してシーズン後半に入ると、今度は攻撃よりも守備面で良さを見せることが出来ていたように思います。
 関塚監督は当初ボランチの形を迷っていた印象もありました。
 健太郎を右ボランチで使うも上手くいかなかったり、3ボランチやナムと勇人のダブルボランチなども試していきました。



 そんな中で一度はスタメンを外された健太郎ですが、第33節の愛媛戦で後半スタートと同時にナムと交代で出場します。
 すると、それまで中盤の底で空きがちだったスペースを、すっと健太郎が埋めていき守備を安定させていきました。
 単純なフィジカルで言えば、ナムの方が上かもしれません。
 健太郎は運動量豊富というわけでも、スピードやフィジカルがあるわけでもないのでしょう。
 そのためガツンと相手を潰すような守備が出来るわけではないですが、中盤後方で危険なスペースをしっかりと潰せる危機管理能力を持った選手であるということを証明することができた試合だったのではないでしょうか。


 その試合の翌戦から再びレギュラーの座を勝ち取ると、勇人、慶、幸野、町田などカバーリングの出来る選手たちと共に守備面でチームを支えていきました。
 町田が起用されてからのチームはショートパスをつなぐ傾向がまた強くなっていったため、健太郎のビルドアップ能力も再び目立つようになっていったように思います。
 


 攻撃においても高い位置ではあまり良い動きが出来ず後方でボールをさばくタイプの選手だと思いますし、守備においても前に奪いに行くというよりは中盤の底で待ち構えてスペースを消す動きが得意なボランチではないかと思います。
 だから、山形では1ボランチを任されていたのでしょうし、ジェフでも下がり目のボランチポジションでの起用となっているのでしょう。
 プレーに安定感がありシーズンを通して大き奈浮き沈みがないことも、健太郎の良さの1つではないでしょうか。


 来季はボランチパウリーニョが加わることになりました。
 守備能力の高い選手ということが言われていますが、個人的にはフィジカルは強いものの後方で広い範囲をカバーリングしたり、中盤の底にドンと構えるようなアンカータイプではないように思います。
 それこそ前にガツンと潰しに行ってそのまま持ち上がっていく印象が強く、実際栃木でもボランチを増やしてパウリーニョを1列前に上げて攻めに転じたり、川崎でもSHで起用されたことがあったようです。
 栃木ではボランチのパートナーに守備の出来る選手や展開力のある選手を起用していたことが多かった印象ですし、パウリーニョは前目のボランチということになるのではないでしょうか。



 そうなってくれば、今のメンバーで考えると相性が良いのは中盤の底でプレーするタイプの健太郎といことになるのではないかと思います。
 パウリーニョが前に潰しに行ってそのまま持ち上がり、健太郎はアンカーの位置でスペースを消しつつ左右に展開する。
 それが現在の中盤で考える、理想の形ではないかと考えます。


 とはいえ、昨年終盤は何度も言うとおり、カバーリングの出来る選手を多く起用して全体の守備バランスを保っていた印象があります。
 ボールを奪えるのとカバーリングでスペースを消すのはまた違う能力だと思いますし、チーム全体の守備バランスが大きく変わらなければ、パウリーニョカバーリングでどこまで計算できるのか。
 栃木では4×4のボックスで守備エリアが限定されていただけに、パウリーニョのボール奪取能力を活かせたという可能性もあり、カバーリングなどに関しては未知数な部分もあるのではないかと思います。
 それこそ昨年途中の兵働も4×4で守備エリアが限定されたことで、ボランチでも戦えていたという部分もあったわけですしね。


 もしパウリーニョが広範囲をカバーリングできるタイプではないということになれば、相方のボランチにそこを求めることになるかもしれない。
 守備で広範囲を守る、動いてバランスを取るという点で考えれば、勇人の方が期待できる可能性もあるかもしれないですし、そこは勝負ということになりますね。
 あるいは、新加入の金井が2人以上の総合的な守備能力等々を見せられるかどうか。


 とはいえ、金井の本職はSBなのだと思いますしここまでの流れを見れば、やはり健太郎がボランチ争いを一歩リードしていることには、変わりないのではないでしょうか。
 今年はリーグ戦でのゴールや積極的な縦パスなども、期待したいところですね。