鈴木隆行がジェフの練習に参加

水戸を退団した元日本代表FW鈴木隆行(38)が19日、千葉の練習に練習生として参加した。「まだ何も分からないので」と取材に応じなかったが、クラブ関係者によると鹿島時代にコーチとして指導を受けた関塚隆監督(54)との縁で、全体練習を開始したチームへの合流が実現した。
同監督は「今週いっぱいか、それ以降も見るかもしれない。(FWは)手薄なポジションでもあるので」と語った。(報知

 鈴木隆行が練習生として、ジェフの練習に参加しているとのこと。
 ジェフは今週末までユナパでトレーニング。
 来週から沖縄キャンプという日程になるわけですから、「それ以降も見る」ということになれば鈴木は沖縄にも帯同することになります。
 となると、鈴木を獲得する可能性は、それなりにあるということなのかなと思います。



 CFはケンペス戸島が抜けて補強はなしという状況なので、補強したいポイントの1つとなるでしょう。
 鈴木は38歳になっても体幹の強さ、空中戦においては関してはJ2でも十分に戦えるFWで、ボールの納め方も正確…というか、足元の技術などは若いころより上手くなっている印象すらあります。
 途中出場からのパワープレーのターゲットとしても計算できるでしょうし、状況次第では前線で時間を使って試合を終わらせる役割でも起用できるかもしれません。
 ベテランですからどんな試合展開でも対応できる経験がある選手ではないかと思いますし、人間的にもまじめで黙々とサッカーに集中する、尊敬できる存在ではないかと思います。
 …ピッチ上とは関係ないですが、以前は櫛野と仲が良くそれが話題になっていたこともありましたね。


 しかし、38歳の大ベテランとなって、体力面にはさすがに不安が出てきたように思います。
 2014年も33試合に出場していますが、スタメンフル出場を果たせたのは2試合のみ。
 出場時間でも前年の2810分から1179分へと半分以下となっていますし、ゴール数も前年の12ゴールから3ゴールに大きく減少しています。
 水戸が鈴木の契約満了を発表した時は驚きをもって伝えられましたが、実際に数字で見ると成績面では納得できるようにも思います。
 もちろん水戸加入初年度はチームを助けるべく無給で契約したという経緯がありその恩はあるでしょうが、だからといって永遠に契約するわけにもいかないのでしょうし…。

 
 昨年9月に行われたジェフ戦でも途中出場を果たしましたが、3バックから4バックに変更したこともあってむしろ水戸の流れは悪くなってしまった印象でした。
 高さ、強さはあるものの運動量に関しては減ってきていて、スピードやキレなども以前ほどではない印象です。
 もしジェフで獲得となれば森本さえ万全ながらスーパーサブとして期待されるでしょうが、2番手のFWには森本が何かあった時にはスタメンとして考えたいところ。
 その点で考えるとスタミナ面、スピード面などにおいて、不安があるといえるのではないでしょうか。



 もちろんそれでもCFとして計算できる選手の補強は、何としても重要だという考えもあるでしょう。
 しかし、それは世代交代を目指す方向性に逆行するのではないか。
 世代交代を目指すということは、どうしても苦しく不安な部分も出てくる。
 ベテランの方が戦力として計算しやすいのは当たり前でしょうし、チームにいるだけで安心感も出てくるでしょう。
 経験不足な選手構成ではミスも増えるかもしれないし、大崩れする恐れもあるでしょう。
 それでも覚悟を持って「世代交代を敢行する」という強い意志と勇気が必要だと思うわけですが、今回の件を聞いているとそこまで踏ん切りがきれていないということなんでしょうか。


 それならばいっそ、山口智を残したほうが良かったような気がするのですが…。
 FWよりもDFラインの方が経験が必要なポジションと言えるでしょうし、FWはチーム作りにおいても"後付け"でもなんとかなりやすいところだと思います。
 前線は若い選手でも勢いに乗ればやりきれると思いますが、CBはそうはいかないでしょう。
 だからこそFWの方が影響力が少ないという発想もあるのかもしれませんし、予算面など様々な条件があるため完全には同列で語れないでしょうが、昨年の主軸だった36歳の山口智をあえて放出して38歳の鈴木を獲得するというのは、どうしてもぐはぐに見えてしまう部分があります。



 若い選手のお手本に…という考えも出来なくはないかもしれませんが、実際にはそういった形で成長する若手選手の例と言うのはあまり思いつかないと思います。
 山口智の一番弟子のような立場だった大岩は、3年間共にプレーしたものの結局智の一番の武器であった「読み」や「安定感」の部分を習得しきれず、その大きな課題を克服できないまま昨年もCBとしてのポジションを失ってしまったことになります。
 藤田俊哉を獲得した際も同様の話が出ていましたが、実際に藤田から何かを学んで大きく成長した若手というのは記憶にありません。
 巻がチェ・ヨンスから色々なものを学んだという話もありますが、当時のチェ・ヨンスはまだ30歳で全盛期ともいえる状況でした。
 そして、実際には翌年マルキーニョスが怪我がちで、結果的にポジションが空いて大きく成績を伸ばしたことになります。
 もちろんベテランを手本にして若手が勉強になる部分が全くないとはいえませんが、若手育成だけを考えればむしろベテランを放出して出場機会を与えることの方が重要ではないかと思います。


 巻を放出した翌年、「リーダーシップを期待して」ということで藤田俊哉を補強。
 そして、その翌年にも経験豊富な山口智を獲得。
 確かにリーダーシップを持つ選手やチームを引っ張る存在は必要だとは思いますが、そういった選手をいつまでも外部から獲得していていいのかどうか。
 それこそ既存の選手にそこを期待して成長を促さなければ、いつまでも若手・中堅が自覚を持てず、成長しきれないチーム状況が続く可能性もあるのではないか…。


 若手・中堅が多くベテランが少ない状況というのならわかります。
 東京Vでの巻はユース出身の若い選手たちにかなり慕われていたようですし、プロとしての手本を示すことができ影響力も高かったようです。
 しかしジェフは智、慶などが退団したとはいえ勇人、岡本、谷澤、健太郎と30歳以上の選手がいて、水野や田中、ペチュニクなどもベテランの域に入っていきます。
 FWで考えても森本が来年には27歳となり経験も豊富であり、チームを引っ張る存在の1人として期待されるのではないでしょうか。



 無論獲得するとなれば応援はしたいところ。
 それこそ巻のように全線で体を張れて戦える鈴木は、個人的にも好きな選手の1人です、水戸でのプレーを見ても周りとは存在感の違う印象でした。
 ただ、個人的に好きな選手と、ジェフが獲得すべきと思う選手は全く別問題なわけで。
 チーム状況、選手構成、方向性と様々なことを考えて上で補強に進むべきだと思います。


 そもそもとして、現在のクラブの方向性はどちらを向いているのか。
 ともかく結果なのか、未来を見据えてのチーム作りを重視するのか。
 そして、その方向性を一貫して遂行する強い意思はあるのかどうか。
 結局、問われるのはそこということになってくるのではないでしょうか。