2014シーズンを振り返る 佐藤勇人編

 2014年の佐藤勇人はリーグ戦24試合に出場と、前年の30試合出場から6試合少なくなっていることになります。
 しかし、14年は途中出場が多かったため、出場時間ではより大きく減少。
 13年の1803分から1081分まで減っていています。


 シーズン序盤から途中出場が多く、クローザー的な役割を任されていたように思います。
 大敗した湘南戦直後に行われた4月20日の第8節富山戦、第9節讃岐戦でスタメン出場を果たすものの、それ以降は4×4のボックスで兵働、健太郎のボランチコンビが安定していったため、その後はまたクローザーに。
 しかし、5月末に負傷し、戦線を離脱。
 2014シーズンのジェフはは長期離脱する選手こそあまりいなかったものの、小さな怪我で少しずつ戦線を離脱する選手が多かったですね。



 勇人は7月から戦線に復帰。
 関塚監督が就任してからも、当初は途中出場での出番が多い状況でした。
 しかし、9月20日の第32節岐阜戦で途中出場を果たすと、そのままレギュラーポジションを獲得。
 2試合勝ちなしで迎えた11月15日の第41節富山戦こそ兵働にスタメンを譲り欠場となりましたが、それ以外の試合では第32節から不動のスタメンとなりました。


 勇人本人は攻撃参加の面を目指していくコメントをしていましたが、実際には守備面での貢献が大きかったと思います。
 関塚監督になって深く守ることが増えると、どうしても中盤やサイドにスペースが出来る傾向が見られました。
 そこで勇人、健太郎、山口慶、幸野、町田といった走れて広範囲をカバーリングできる選手を起用し、そのスペースを埋める方向でバランスを取って言ったのだと思います。


 一方で攻撃面に関しては、兵働、ナムといった縦にボールを出せる選手に比べると物足りなさを感じました。
 勇人も技術がないわけではないですが、パス回しに関しては昔から無難といった印象で、広い視野でボールを展開したり決定的なラストパスが何度も出来るタイプの選手ではないと言えるでしょう。
 タイプの異なる兵働、ナムと比較するのは無理があるのかもしれませんが、健太郎は長くレギュラーポジションを守り続けていただけに、健太郎の相方となる勇人の方に違いを感じてしまいました。



 最終ラインが深く守りすぎて中盤から前にスペースが出来てしまう問題に関しては、ちょうどサッカーキングで現在連載しているロンドン五輪チームに関してのコラムを読んでも同様の問題が発生していたことがわかります。

「全体が間延びしているから、1人の選手がカバーするべきスペースが広すぎる。FWがプレスをかけたとき、FWについていってラインを上げるのか、うしろに残るのかどうするのか、混乱しているように思えた」
(中略)
吉田が「全体が」と言ったのは、先頭のFWと最後尾のDFの距離のことで、FWとDFの距離が広がり過ぎているので、「全体が間延びしている」ということなのだ。また、一人ひとりの距離が広がってしまうので、「1人の選手がカバーするべきスペースが広すぎる」という状況が作られてしまう。(サッカーキング

 かなり偏った印象も受けるコラムですし、現在も連載中ですから最終的なまとめがどうなるかはわかりませんが、確かに当時の五輪チームは間延びしていたことが大きな課題とされていた記憶があります。
 ジェフでもその傾向は、かなり似通ったものがあるように感じるところです。
 実際、関塚監督就任直後はFWが相手ボランチから守備をスタートさせる試合もありましたし、意図的に深く守っていた部分も大きいのでしょう。
 深く守れば裏を取られにくいし、リスクは少なくなるという考えなのかもしれません。


 その分、空きがちなスペースに対してカバーリングをできる選手を数多く置いて、走力で穴を埋めるというのは1つの解決策とも言えると思います。
 しかし、勇人、幸野、町田、山口慶などを起用して、兵働、井出、大塚、大岩といった選手が外れた分、どうしても攻撃には課題が残った印象です。
 それがボランチの展開力であり、トップ下の最後の精度の問題であり、プレーオフ決勝でも浮き彫りになった右サイドの攻撃力不足といえるのではないでしょうか。
 また単純に守備に関してもバランスが良い状況には見えず、走力でカバーしてもどうしても相手中盤の低い位置でフリーな選手ができてしまったり、右サイドの守備で後手に回ってしまうことが多かったように思います。



 それでも関塚監督のサッカーに合わせて、2015年は改めて堅守速攻をやりきるという考えもありだと思います。
 言い訳の利かない状況を作って1つのことをやりきれば、例えそこでうまくいかなくともそこから何かを学べる、何かを得られることは多いと思いますし、五輪チームはOA枠で吉田、徳長を使って跳ね返し、大津や永井を走らせて最終的には成功した印象があります
 しかし、ジェフでもそれに近い形でやるのであれば、やはり永井や大津、ジュニーニョといった1人で打開できる点取り屋が必要だと思っていたのですが、そういったタイプの補強は今のところなし。
 期待のペチュニクも単純なスコアラーといったタイプの選手ではないのでしょうし、守備陣に関しても現時点では跳ね返せるメンバーを揃えられたようにはまだ感じられません。


 考えてみれば2014年も関塚監督就任当初はカウンターの色合いが強かったですが、そのカウンターも相手に警戒されて機能しなくなるとショートパスをつなぐ展開が増えていきました。
 やはり相手に警戒され引いて守られることも多いJ2でのジェフの立ち位置を考えると、カウンターだけでは厳しい部分があったということなのでしょうか。
 もちろんどのチームにおいても、カウンターサッカーかパスサッカーかといった1か0かの明確な棲み分けは出来ないものだとは思いますが、どちらをチームのベースとし強みとしていくかに関してははっきりしなければ、中途半端なチームになりかねないと思います。
 まずはチームの軸をしっかりと作って、そこから広がりを作っていく形が理想なのではないでしょうか。


 その中で勇人のようなベテラン選手はどのようなサッカーにも対応して、チームの足りない部分を埋めるような仕事を期待したいところなのではないかと思います。
 智、竹内、兵働などベテラン選手が多く抜ける中で、勇人の存在は当然より重要になってくるでしょう。
 智が加入してから智に遠慮してどこか控えめになってしまっていた印象がありますし、もう一度チーム引っ張る存在として頑張ってほしいところではないかと思います。